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INTERVIEW
部下の管理オタクだった私が「上司なし、評価なし」の管理ゼロ組織づくりに成功したわけ
INTERVIEW

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人びとのニーズ、働き方が目まぐるしく変化する中、これまでのヒエラルキー型組織、トップダウンなやり方では、新たな価値をつくりだすことが難しくなってきた――。そうした課題意識から昨今、メンバーの自主性を重んじ、極限まで「管理ゼロ」を目指す新たな組織づくりのアプローチに着目し、実践する経営者が増えています。

そんな管理ゼロの組織づくりに2009年の創業当時から先駆的に取り組み、体現してきた、システムの受託開発会社がソニックガーデンです。「上司なし・決裁なし」「休暇は取り放題」「給与は一律・賞与は山分け」「働く時間も場所も縛りなし」・・・ それでいて創業以来、毎年増収という右肩上がりの成長を続けてきました。

同社はいかにして、管理ゼロかつ成果を挙げられる組織を築いてきたのか。そうした組織をイチからつくるにはどうすれば――。ソニックガーデン代表の倉貫義人さんとの対話を通じて、そのヒントを探ります。インタビューの終盤では、管理ゼロを続けてきたからこそ見えてきた、ティール組織の「次の組織像」のお話も飛び出しました。

株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫義人

PROFILE

株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫義人
倉貫義人
株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長
1974年京都生まれ。1999年立命館大学大学院を卒業し、TIS(旧 東洋情報システム)に入社。2003年に同社の基盤技術センターの立ち上げに参画。2005年に社内SNS「SKIP」の開発と社内展開、その後のオープンソース化を担当。2009年にSKIP事業を専門で行う社内ベンチャー「SonicGarden」を立ち上げる。2011年にTIS株式会社からのMBOを実施し、株式会社ソニックガーデンを創業。

聞き手には、非管理型でメンバーの自主性を重んじる組織づくりに今まさに取り組んでいる、ガイアックス社の管大輔さんをお迎えしました。

管理し、管理されていた。まったく成果の挙がらない新規事業

―ソニックガーデンの「管理ゼロ」とは、実際にはどのような状況なのでしょうか。

ソニックガーデンは「納品のない受託開発」という少し変わったスタイルで、システムやアプリの受託開発を行っています。

会社に出社義務はなく、ほとんどのメンバーが常時リモートワークです。部署や管理職も置いていないので、上司からの指示や命令、評価制度もありません休暇は承認なく取得できて、複業だってもちろん自由。管理はいっさいありませんが、2011年に5人で始めた会社は7年で35人規模になり、創業以来ずっと増収を続けてきました。

株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫義人

―倉貫さんが管理ゼロの組織づくりを行うようになったきっかけや背景を聞かせてください。

ソニックガーデンは実は、大手SIerの新規事業を担う社内ベンチャーとして始まったんです。当時は社内SNSを開発していました。

今でこそ管理ゼロの組織ですが、2009年の創業時、私は毎日、スーツを着て、満員電車に揺られて出社し、サラリーマンのまち、浜松町で、会社のデスクに向かっていました。社内ベンチャーを取り仕切るカンパニー長として、人事評価にモチベーション管理、勤怠管理にプロジェクト管理と、想像しうるありとあらゆる「管理」をやっていたんですよ・・・(苦笑)。

管理をなくし始めたのは、創業から一年が経ったころでした。理由はシンプルで、それまでのガチガチに管理するやり方では成果がまったく挙がらなかったから。実際、赤字垂れ流し状態だったんです。どうにかしたい――。事業を軌道に乗せようと焦れば焦るほど、管理に管理を重ねていました。しかし、管理をきつくするほどなぜか業績は悪化するという悪循環・・・。

それを一年続けたある時、それまでは「どうしたら成果が出せるか?」ばかりだった思考を、「これまでどんな時に自分は仕事を頑張ったのか?」に転換してみました。振り返ると、自分が頑張ったのは、計画が示されたからでも、誰かに指示されたからでもなかった。その時はじめて、「もしかしたら、管理も上司もいらないのかもしれない――」という考えが頭に浮かんだんです。

株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫義人

それで実験的に、チームから少しずつ管理をなくしてみることにしました。いきなりすべてをなくすのは無謀ですから、まずは作業に関する細かい指示を止めてみる、それでうまくいったら、次は作業工程には介入しない、だとか。すると徐々に、メンバーが自らお客さんのためを思って動くようになり、チームの生産性が上がり、それに伴って数字もついてくるようになりました。

よくよく考えてみれば、新規事業というのは計画を立てて管理したからといってうまくいくものではないですよね・・・(苦笑)。自分たちのつくったサービスがお客さんに受け入れられるか、顧客を獲得して売り上げにつながるかどうかなんて、やってみないと分からないし、計画通りになんていくわけがない。そもそも新規事業のような創造的な仕事と管理とでは、相性が悪かったんです。

―確かに。一方で、社内ベンチャーであれば、事業計画の提出は必須でしょうし、数字の見通しに沿った「管理」を要求されると思います。会社から求められる管理と、管理しない現場マネジメントはどのように両立されていたのでしょうか?

もちろん会社からは求められます。だから「大人な」計画書を作って、提出もして、だけど実際の現場では計画書とは異なる運営をしていました(苦笑)。本音では「計画とかそんなの知らんがな」って思いながら。

でも、「計画を立てること」自体は決して悪いことではないんです。むしろ、重要です。必要ないのは「一度立てた計画を固辞し、その通りに愚直に実行すること」。あくまでも計画は計画であって、計画に管理されてはいけません。

その後2011年、社内ベンチャーはMBO(経営陣買収)をして親会社から独立しました。株式会社ソニックガーデンが誕生し、そのときから本格的に「管理ゼロ」組織へと向かうことになったんです。

ソニックガーデン創業時
ソニックガーデン創業時

生産性が低いまま、管理ゼロを目指してはいけない

―管理アリ組織から管理ゼロ組織に移行するためには、どのようなステップを踏めばいいでしょうか?

いきなり、「今日から管理しません」というのは無謀です。第一のステップは、チームメンバーが「生産的に働ける」ようになること。生産性が低いにも関わらず、管理ゼロで働きたいというのはどこまでいっても成立しません。まずは、日々の仕事の中で生産性を低下させる要因をできるかぎり排除し、成果を出しやすい状態にしていきます。

私たち自身、MBOをして独立したタイミングで、それまであった親会社のルールにとらわれず、ソニックガーデンにとって本当に必要なものと必要じゃないものを仕分けし、前者だけを残していきました。必要じゃないものとはなにか・・・ それを見極めるうえで大切なのは「管理はコストである」という大前提です。

例えば、会社にあって当たり前と感じられる部長や課長といった「役職」はそんなコストになり得る最たる例。大組織では必要だったとしても、私たちのような小規模な組織では役職があることで業務フローや意思決定フローが複雑になるばかり。

ですから、メンバーは全員フラット、できるだけ各々の職能だけで一つひとつの仕事が完結するようにし、私の決済も必要ない、事後報告でOKとすることで、組織をできるだけシンプルにし、生産性を向上させました。

役職以外にも、書類・・・ 例えば、注文請書もそうです。親会社の傘下にいたころは「注文請書って商法かなにかで必要と定められているのかな」くらいに思っていたのですが、独立して調べてみたらそんなことはなくて(笑)、ただの習慣だったんだなあと。それでなくしました。

株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫義人

このようにして生産的に働ける状態ができたら、第二のステップに進みます。次はチームメンバーが「自律的に働ける」ようになることです。つまりは、メンバーのセルフマネジメントの強化ですね。メンバーがセルフマネジメントをできるようになれば「管理ゼロ」が可能になります。

そのセルフマネジメントのレベルは、大きく4段階に分けられます。

  • レベル1:上司に指示されたことを指示通りに実行して報告できる状態
  • レベル2:上司の管理の元で与えられたタスクを自らで進捗管理して進められる状態
  • レベル3:与えられた状況下で自分は何をすべきか考えて行動できる状態
  • レベル4:最上級。もはや自分の仕事は自分で作り出して勝手に仕事をする状態

管理ゼロにするためには、メンバーがレベル4でなくてはなりません。しかし、レベル1の新入社員にいきなりレベル4を求めるのは無理があります。きちんとその人のレベルを把握し、育成して、徐々にセルフマネジメントレベルを引き上げていく必要があるのです。ソニックガーデンでは、「師匠役」を配置することで若手社員を鍛えています。

この2つのステップを経て、組織に管理は不要なものとなり、メンバーが生産的かつ自律的に働く状態が実現できます。そうなれば、あとはメンバーが各々のクリエイティビティーを発揮することを求められる、「独創的に働ける」状態を目指すのみです。

独創的に働いた成果として、ソニックガーデンでは「部活」から、病院や医師を的確かつ迅速に選べる「イシュラン」という自社サービスが生まれました。

イシュラン

うちでは、収益を生み出さないプロジェクトのことを部活と呼んでいて、平日の日中であっても、自分の時間と会社のお金を使って自由に創作活動や新規事業を行えるようにしています。イシュランは、私の友人の「乳がん患者である友人がいい医師を探せなくて困っているから、それを解決できる仕組みを作りたい」という想いから始まりました。

部活として、通常業務をこなしながらも、粛々と病院や医師のデータベースをつくっていくうち、いつの間にか47都道府県を網羅し、Webサイトの価値がどんどんと高まっていきました。すると、医療系企業から「コラボしましょう」と声がかかったり、今では多くの患者さんに使ってもらえるようになったりして、ついには収益を生みだす事業に成長しました。

―なるほど。まずは生産性を上げて成果を出せる状態にすることが重要なんですね。一方で、成果を出してもらうために、たとえ生産性が低いメンバーに対しても管理をなくしてみる、という考え方もできませんか?

それはやめたほうがいいですね。最近、「管理する必要がないティール組織がいい」と、生産性が低いメンバーがいるにも関わらずいきなりティールを目指したり、管理を手放そうとしたりする経営者の方もいますが、「セルフマネジメントだ」と言って、メンバーを解放して自由にしたところで、生産性が低い人はそもそも成果を挙げられません。順序を間違うと、会社が崩壊してしまうことになりかねない。

管理ゼロにできるのは、メンバー各々がきちんと仕事として成果を出せるからこそ。管理ゼロは、成果が出ていることの証、裏返しなんです。ですからまずは、生産性を上げてきちんと成果を出す。これが、管理ゼロ組織への第一歩です。

株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫義人

「管理ゼロ」の組織カルチャーは、意外と脆い

―先ほど「師匠役」のお話も出ましたが、この管理ゼロ組織での働き方やそれを支えるカルチャーを、新しいメンバーにはどのように浸透させているでしょうか?

これまで、まずは私から創業メンバーへ、そして創業メンバーから新しいメンバーへと徐々に浸透させてきました。

振り返って、大切なポイントだと感じるのは「会社を急拡大させないこと」です。もし一斉に10人採用してしまったら、彼らにカルチャーがきちんと伝わっているのか分からない。カルチャーを守りたいから、メンバーに手厚いサポートができるよう一人ずつしか採用しません。

たとえ、どうしても採用したい人が現れても、そこはグッとこらえて、すぐには採用しないようにしているんです(苦笑)。ものすごく慎重です。どのくらい慎重かというと、社員として採用するまでに一年くらいかけて、その人と関係構築をするようにしているんです。

そんなに時間をかけるのは、組織を管理ゼロに保つためには、すでにいるメンバーと新入社員とが「心理的安全性」が保たれた信頼関係を築き、そんな関係の中で働けるかを確認しなければならないからです。そうでなければ、いつか、どちらかが相手を管理したくなってしまいます

株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫義人

ですから、よく人手が足りていないからとSNSで人材を「急募」している人を見かけますが、信じられないんですよね。急募をしたところで、生産的かつ自律的にも働ける、しかも心理的安全性が保たれた信頼関係が築けるような優秀な人が、そのときたまたま暇で、応募してくれるとは思えない。

これは、お客さんに対しても同じです。私たちはシステム開発会社ですが、「納品のない受託開発」を行っていますから、なにかを作って終わり、ではなく、作ったあとも長くお付き合いをしていくことになります。ですから、受注するまでに少なくとも3カ月はお客さんとコミュニケーションをとるようにしているんです。お互いが気持ちよく仕事できる状態になってからがスタートです。

それでも、先ほど言ったように、うちは採用には慎重ですから、お客さんには心苦しいですが、新しいメンバーを採用できるまで案件のスタートを待ってもらうこともあります。それくらい慎重にならないと、管理ゼロの働き方やカルチャーは小さなほころびがきっかけで簡単に崩れてしまうくらい、脆いということでもあるんです。

株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫義人

「組織」概念の排除へ。「管理ゼロ」のその先にあるもの

―管理ゼロ組織の先駆者として、この先になにか「次の新しい組織像」のようなものは見えていますか?

最近思うのが、ソニックガーデンはもはや「組織」や「会社」の概念を超えているのではないか、ということです。組織というよりも、「ビジネスモデルを持ったコミュニティ」と表現するほうが正しいような気がしています。

なぜなら、いまソニックガーデンで管理ゼロのもと一緒に働いているメンバーは、一般的な「社員」の概念を超えてしまっているんですよ。正社員ではなく「論理」社員として、フリーランスの人がフリーランスのまま社員と同じ待遇で働いていたり、他のベンチャーの社長でありながらソニックガーデンの社員でもあったり。

うちのメンバーに共通するのは、ソニックガーデンの価値観やカルチャーに共感し、いろんな形で関わっているということだけなんですよ。個人と組織の関係が変わってきていることをひしひしと感じますし、今後は「組織」という概念自体、なくなっていくのかもしれないと思っていますね。

株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫義人

もし、そうなったとして、社会において重要なことは、大きなコミュニティが少数しかないのではなく、それぞれに違った価値観やカルチャーを持つ小さなコミュニティが多数あること。そうすれば、個人は自由に自分に合う居場所を見つけられるからです。

あくまで「コミュニティ」なのだとすれば、今後、組織は目標や会社としての形態すら持たなくてもいいのかもしれませんね。多くのコミュニティはゴールなんて設けていないし、リーダーがゴールを定めることで、コミュニティやそこにいるメンバーの可能性を狭めてしまうことだってあり得ますから。

ソニックガーデンは、組織形態やゴールにとらわれず、価値観やカルチャーに共感して、生産的かつ自律的に働ける人であれば、いつでもジョインしてもらえる、そうやって変化と進化を続けながら、前進し続ける存在でありたいですね。

株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫義人

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[取材・文] 管大輔、鶴見美保、岡徳之 [撮影] 伊藤圭

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