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INTERVIEW
ホームレスサッカー日本代表に学ぶ、メンバーの違いを活かすチーム作りの仕掛け
INTERVIEW

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BOOK MARK

世界中のホームレスの人たちがチームを作り、サッカーで自立を目指す「ホームレス・ワールドカップ」。

その日本代表チーム「野武士ジャパン」のコーチ・監督をボランティアで務めるのが、本職では日本政策投資銀行に勤務する蛭間芳樹さんです。

ホームレス・ワールドカップ日本代表「野武士ジャパン」コーチ・監督 蛭間芳樹

蛭間さんは、ダボス会議のヤング・グローバル・リーダーに日本人最年少(2015年当時)で選ばれるなど、いわゆる「エリートビジネスパーソン」。

自身とバックグラウンドがまったく異なるホームレス状態にある選手たちと一つのチームを作り、信頼関係を築き、2011年にはパリで開催されたホームレス・ワールドカップ出場も果たしました。

多様性に富んだメンバーの能力を引き出し、自律的な活動を促すためのチームビルディングや対話術とはーー。じっくりとお話を伺いました。

「野武士ジャパン2016」のみなさん(出典「野武士ジャパン」)
「野武士ジャパン2016」のみなさん(出典「野武士ジャパン」)

PROFILE

ホームレス・ワールドカップ日本代表「野武士ジャパン」コーチ・監督 蛭間芳樹
蛭間芳樹
ホームレス・ワールドカップ日本代表「野武士ジャパン」コーチ・監督
1983年埼玉県宮代町生まれ。野武士ジャパンのほか、2017年からはホームレス状態の当事者・生活困窮者・障がい者・うつ病・性的マイノリティ(LGBT)などが参加する「ダイバーシティサッカーアソシエーション準備委員会」の実行委員長をボランティアで務める。東京大学大学院(工学、都市防災)、日本元気塾(米倉誠一郎塾)を卒業。現在、㈱日本政策投資銀行 サステナビリティ企画部調査役兼BCM格付主幹。世界経済フォーラム(ダボス会議)ヤング・グローバル・リーダー2015選出、防災、危機管理、災害レジリエンスに関する内外専門委員会への参画など活動は公私ともに多岐に渡る。著書に『ホームレス・ワールドカップ日本代表のあきらめない力』(PHP研究所)など

ニート・不登校・うつ病・依存症・LGBT・難民の人たちとともに

ー蛭間さんがホームレス・ワールドカップ日本代表チーム「野武士ジャパン」のコーチ・監督を務めることになったきっかけは?

ホームレス・ワールドカップは2003年から行われているストリート・サッカーの世界大会で、サッカーを通じてホームレス状態にある方々の自立を支援することを主な目的としています。

私自身、幼少期からずっとサッカーを続けていました。日本元気塾という社会人塾のプログラムで、ホームレスの人たちが路上で売る雑誌『ビッグイシュー』の販売体験をしていたところ、「今度の土曜日、サッカーやるから来ない?」と誘われて行ったのが、「野武士ジャパン」の練習でした。長いサッカーのキャリアでしたが、ホームレスの人たちのワールドカップがあることは知りませんでした。

練習に加わって、一緒にボールを蹴っているうちに、それまで自分の視野にはほとんど入っていなかった「ホームレスや貧困」という社会課題と、自分が取り組んできた「サッカー」がつながって、私もボランティアでチームに関わることになりました。「知らない」ということが、この問題を問題のままにさせているという強烈な原体験でした。

ー野武士ジャパンは2011年にホームレス・ワールドカップのパリ大会に出場されたんですよね。

当時は「世界の試合で勝つ」ための練習メニューを組み立て、チームの戦略を立て、選手選抜と代表合宿を経て大会に臨んだわけですが、結果は「全敗」。前後半7分ずつの13試合で喫した失点は138点という大敗戦。非常に厳しいものとなりました。

ホームレス・ワールドカップパリ大会の様子(出典「野武士ジャパン」)
ホームレス・ワールドカップパリ大会の様子(出典「野武士ジャパン」)

そもそも、日本と海外とでは選手構成もサポート体制もまったく違うんです。野武士ジャパンの平均年齢は、2011年当時で約50歳。それに対して大会に集まる70カ国の平均年齢は22歳で、ベトナムチームにいたっては平均17歳でした。

また、海外ではホームレス・ワールドカップに対する支援体制が確立されています。最近では、韓国チームに現代自動車(ヒュンダイ)がチームのスポンサーになりましたし、今年のUEFAチャンピオンズリーグ決勝の前哨戦としてホームレスサッカーの試合が行われ、それをBBC(英国放送協会)が中継しています。

ワールドカップでの大敗を経て、私自身もそうですし、選手やスタッフにもさまざまな気づきや反省がありました。このまま「世界を目指す」「勝つことにこだわる」方向性だけでは、このチームは難しいと感じるようになったのです。それでどうしようかと、メンバーで考えながら試行錯誤してきました。

ホームレス・ワールドカップ日本代表「野武士ジャパン」コーチ・監督 蛭間芳樹

そんな中、月2回の野武士ジャパンの練習には、ホームレス状態にある人たちにかぎらず、さまざまな人が参加するようになってきたんです。あるときは40代半ばの近所の関西弁のおじさん、あるときは少年3、4人・・・そういうのが続いていくと、サッカー自体の求心力というものをあらためて実感するようになって。

そこで、2年ほど前から「ダイバーシティ」や「インクルージョン」というコンセプトを掲げて、障がい者や引きこもりの方々、就労支援を行うNPOをはじめ現場支援をしている団体と積極的に連携するようになりました。

2015年からは外部の団体と連携した「ダイバーシティ・カップ」をコンセプトに、ニートや不登校、うつ病、依存症、LGBT、難民支援などさまざまな背景を持つチームが参加するフットサル大会を年に1回開催しています。

「マネジメント」という名のコントロールは要らない

ーチームの方針が変わったことで、メンバー構成やトレーニング内容にも変化がありましたか。

一緒に練習する仲間には、選手はもちろん、コーチやスタッフにも、ホームレスの人だけでなく、LGBT、障がい者、アルコール依存症など、いわゆる「社会的弱者」や「マイノリティ」と呼ばれる人がいます。すると、今までのように競技性を追求したサッカーをやっていると、ゲームに参加できず排除されてしまう人がいることに気づいたんです。

ですから、準備体操、声出し、技術練習、戦術練習、ゲーム・・・というそれまでの「部活」のような、競技性を追求したやり方を抜本的に変えました。コーチ陣やスタッフとの対話、何より選手たちが何をこのチームに望んでいるかの対話を積み重ねて、見えてきた方向性でした。

ボールを頭で支えて移動するアイスブレイクの様子(出典「野武士ジャパン」)
ボールを頭で支えて移動するアイスブレイクの様子(出典「野武士ジャパン」)

練習時間は約2時間ですが、まず最初の30分はボールを「使わず」、チェックインの時間・・・アイスブレイクに使います。近況報告や、自分は何者で何をしに来たのかを自己紹介できる人もいれば、何も語らない人もいます。それでいいんです。

そこには、サッカーをしたことのない人、「運動が苦手」という人もいれば、「外に出るのは3年ぶり」という人もいます。そこで全体の様子を見て、その日のエチケットというか、マナーや気をつけることを共有します。

アイスブレイクのメニューを通じて、今日はどんなことに取り組みたいのか、お互いに話せるような場とチームを作っていきます。

ー自己紹介する際、自分のことを話すのが苦手な人、依存症や精神疾患など打ち明けにくいことがある人もいるのでは?

初対面の人も多いですし、最初はやはりぎこちないです。けれどもこれはサッカーという競技の魅力だと思いますが、何も言わずにボールを蹴っていると、自然とみんな集まりだすんです。

休憩時間を見ていると、チームの状態がよく分かります。リフティングをしている人に、パス練習しようと声がかかり、それが連鎖して勝手にゲームが始まる。はじめは拒絶していた人も、どんどん雰囲気もほぐれていく。そして笑い声が生まれるんです。

アイスブレイクでは、例えば、「同じ靴の色同士の人でコンビ組んで」「同じ出身地でチームを作って」など、いろんなくくりでチームを作ってみます。そうすると、いつもと違うコミュニティが生まれるんですよ。「え、長野県出身なの! どこ中学?」と会話が始まります。

みんな、普段から「ホームレス」「ひきこもり」というカテゴリーにくくられていると、「そういうふうに振る舞う」ことを暗黙のうちに意識させられているというか、世の中もそうさせているような空気があります。

それが、先ほどのアイスブレイクで違う軸を提示してみると、違うところに仲間がいることに気がつきます。ただそれだけのことなのですが、でもそこでいつもとは違うカテゴリーに所属し、いつもとは違う関係性のコミュニティの存在に気づくこと自体が、彼らの振る舞いにも影響してくるんです。

毎回、何が起こるか分からないけど、とにかく楽しいんですよ。初めはおそるおそる参加していた人たちが、どんどん変わっていくんです。練習の最後にはハイタッチなんかしたりして(笑)

仲間を応援する選手のみなさん(出典「野武士ジャパン」)
仲間を応援する選手のみなさん(出典「野武士ジャパン」)

ー蛭間さんご自身はダボス会議のヤング・グローバル・リーダーに選ばれるほどのエリートビジネスパーソン。参加者のほうから距離を置かれることはないのですか?

練習に来ていただければ分かると思いますけど、こんなスーツじゃなくてジャージ姿ですし、「エリート」みたいな感じはまったくないですよ。うちの選手やスタッフは、私のことを誰もそんな風に思っていないんじゃないかと思います。そもそも、日本で使われているエリートって言葉が何か違う気がしています。

彼らは彼らなりに、良い意味で私たちを「仲間」と思ってくれているように思いますし、私も一緒になってボール蹴りますからね。この前はそれで肉離れをしてしまいました、選手でもないのに(笑)

練習中、ジャージ姿の蛭間さん(出典「野武士ジャパン」)
練習中、ジャージ姿の蛭間さん(出典「野武士ジャパン」)

また、「支援」という言葉の使い方そのものが時代遅れというか、「支援する側」「される側」という構造自体が馴染まないと思うんですね、このチームには。会社だと「指導する」とかになるんでしょうけど、私から伝えられることなんてほとんどなくて、むしろ彼らから教わることばかり。

監督も上司も、「その場での役割分担」に過ぎないと思うんですよね。そんなところで威張っていても、虚像でしかない。それよりも、その人の人となりとか、内面性とか、本当にやりたいこととか、こだわりとか、弱さとかを自然に見せればいいんです。

では、うちのコーチや私は何をしているかというと、例えば、練習ではアイスブレイクのあと、それぞれ個人とチームの目標を設定してもらうようにしているのですが、そこにはまったく口を出しません。

「全勝します」というチームもあれば、「良いプレーがあれば必ずハイタッチする」「いちばん元気に声出ししてプレーし続ける」とか、その目標はさまざまです。個人だと「最低10回はボールを触ります」「たくさん笑う」「おそれずに誰よりもチャレンジと失敗をする」とかね。また、プレーヤーを支えるサポーターやスタッフの目標もあわせて共有します。

中期的な経営計画を組織目標に落とし込み、業績評価のインセンティブとKPIを同定して、「それ行け!」という世界とはまったくの対極です。また、会社組織でありがちなのが、フロントとミドル・バックが完全に分断されていて、外形的には機能統合されていても、人としてつながっていない、チームになっていないということ。特に、大きな組織になればなるほど、その傾向はあるのではないでしょうか。

試合の後にその目標を達成できたかどうか、コーチたちが入って振り返りを行うのですが、彼らはあくまで「何やってんだよ」みたいなネガティブワードが出ないように見守る役割。ときに衝突も起こりますが、それも見守ります。私はその様子を俯瞰で見ているだけ・・・では楽しくないので、一緒にプレーしています。もはや監督でもコーチでもなく、ただの「一緒にボールを蹴るチームメイト」です(笑)

だって初対面だとか、自分といろんな面で違う人に対して、言葉でいろいろ指示しても、仕方ないじゃないですか。ですから、どうやってゴールを決めに行くかを一緒に考えながら、楽しみながらプレーしているんです。「ゴールを決めろ!」ではなくて、「一緒にゴールを決めに行こう!」という感じですかね。

ー監督やコーチというより、「キャプテン」に近いのかもしれませんね。

確かに、うちのチームに「マネジメント」という名のコントロールは要らないんです。ただ、フィードバックは丁寧に、時間をかけて行っています。練習や大会の後には、かならず振り返りや対話の時間を設けるようにしています。

(出典「野武士ジャパン」)
(出典「野武士ジャパン」)

旧来型の組織って、「マネジメント」と言いながら、実際は「コントロール」しているじゃないですか。しかも先ほども言いましたが、「KPI」とかいう訳の分からない管理目標や成果目標を掲げて・・・。その意味でのマネジメントが通用する前提は、社会やビジネスの将来が、過去や現在の連続性の延長にあって、自分たちの組織資源がコントロール可能な状態のときです。

コントロールって、イレギュラーな事態が起こらないように、事前の予防線を張っているようなものですよね。でも本来、特に現代においては不測の事態が起こるのが当然ですし、そのほころびから未来が見えてくると思うのです。行きづまっている企業の多くは過去の栄光やマネジメントの慣性力に引っ張られているので、アプローチそのものを意識して変えていなかければなりません。

野武士ジャパンがパリ大会を目指していたころは「もっと走れよ」「なんでやらないんだ」と私も怒ってばかりでしたけど、言うほうも言われるほうも、まぁ楽しくない。勝てない。

ダイバーシティという名の下、背景が異なるさまざまな人が集まる中では、自分自身も隠すものも何もないし、何かをコントロールするなんてこともおこがましい。その場に集まった仲間と、誰も排除されることなく、自分の目標に向かって、仲間とサッカーを楽しめるようにする、というやり方に変わっていったんです。

ダイバーシティを活かすのに必要なのは「ルールを作る力」

ー野武士ジャパンでのマネジメント手法が変わったことによって、本職でのマネジメントにも変化はありましたか。

部署内にはおよそ20名のメンバーがいますが、だいたい「〇〇選手」って呼んじゃうんですよ(笑)

「〇〇選手、あの件ってどうなってる?」みたいな。さすがに自分の上司は「部長」と呼びますけど。そうするとね、やっぱりフラットに話しかけてくれるんですよ。「『〇〇選手』とか呼ばれたの、中学の部活以来ですよ」とか、恥ずかしそうに言いながらもね。

ホームレス・ワールドカップ日本代表「野武士ジャパン」コーチ・監督 蛭間芳樹

うちみたいな金融系の会社って、人事はどこも「鉄の年功序列」だと思いますけど、私が所属する部署ではサステナビリティ(持続可能性)やESG(環境、社会、ガバナンス)といった非財務情報に焦点を当てて、企業の取り組みを評価させていただいています。

そういう新しいトレンドについていく、あるいは自ら仮説を持って仕事をするのは、若い人のほうが得意な気がしますね。

もはや、「部長」「課長」って肩書きだけでは仕事ができない時代ですよね、もちろん部署にもよりますが。基本的なスキルを身につけてもらうまでは相当鍛える部分はありますけど、実務面ではどんどん若い人にまかせるようにしています。

蛭間さんと日本政策投資銀行サステナビリティ企画部のみなさん
蛭間さんと日本政策投資銀行サステナビリティ企画部のみなさん

一般的な企業では、若いうちはなかなかお客さまと直接話ができなかったり、上長の後をついていくだけだったりするけど、「〇〇選手、あのお客さまのことお願いね」と、なるべく直接やり取りしてもらっています。

組織をすぐに変えることは難しいけど、今の組織の根源的な価値や機能を活かしながら、彼らの新しいスキルや志を組み込む。すると、メンバーも自律的に「こういうことをやってみたいんです」と提案してくれるし、モノごとがスムーズにまわり始めるような気がします。

ーとはいえ、上司として「若手のほうが時代をつかんでいる」「仕事ができる」と認めることに抵抗感はないのでしょうか。

おそらく、日本の至るところでそういったジレンマはあると思いますよ。今、日本で起こっているのが、「バトル・オブ・ジェネレーション(世代間闘争)」・・・世代によって認識が違いすぎること。

先輩方が培ってきた経験やスキルは、人口もGDPも右肩上がりで、個人、家族、会社も成長していた線形の時代にこそ発揮できたもの。そういう時代だからこそ通用したマネジメントであり、アウトプットだったわけです。われわれ現役世代はその恩恵を受けているわけですが・・・。

ホームレス・ワールドカップ日本代表「野武士ジャパン」コーチ・監督 蛭間芳樹

けれども今は、多様な価値観や生活習慣、幸福観があり、求められるスキルやマネジメントが変わってきた。働き方という次元ではなく、生き方がもう違うんですね。それをプライドが許さず、認められない、というのはある種仕方ないのかもしれない。それを認めたら、自分の居場所がなくなりますからね。

そういう意味では、今の野武士ジャパンはまさに「トランスフォーム(Transform)」したチーム。多様なメンバーが集まったことで、サッカーが上手い人だけではなく、みんなが楽しめるように「ルールやチームの定義を変えた」んです。

例えば、運動神経の良い選手がたまたまチームに集まり、そのチームばかりが試合に勝ってしまうような場合は、「ウォーキングサッカーにルール変更」とか「二人で手をつないで」とか「体育館のライン上しか通ってはいけません」とか。ゲームの設計や前提条件を変えると、活躍できる人やチームがガラッと変わるんですよ。

会社にも今、これと同じことが起きているんです。どの業界でも、今の業界のルールに適した編成のチームが、ハイパフォーマンスを発揮できているだけのこと。もしその前提となるルールが変わったとき、果たしてそれに対応できるかどうか。

仮にチームがパフォーマンスを発揮できていないと感じたなら、メンバー個人の能力ではなく、ルールや組織デザインのほうが間違っているんじゃないかと疑ってみること。組織に個人を焚きつけるのではなく、個人を起点にチームをデザインにすればいい。

これが、ダイバーシティを活かせるチーム作りの秘訣ではないでしょうか。

ホームレス・ワールドカップ日本代表「野武士ジャパン」コーチ・監督 蛭間芳樹

日本企業の多くがプレイヤー目線ですが、これからは世界を俯瞰して、いかにローカルなルールを作っていくか、社会をどうデザインしていくか、という視点が重要だと思います。私の場合、ダボス会議でそういう視点を持った人とたくさん出会いました。過去も現在も、ゲームチェンジャーやルールメイカーになれるかが、競争力の源泉ですよね。

ーこれから組織のマネジャーに必要なのは、ダイバーシティを受け入れ、それを活かせるようなルールを自ら作っていける力ということですね。

そうですね。組織を「長旅をする船」として捉えたとき、一番重要な役割は「船長」だと思われがちだけど、私としては船長すらも「一つの機能や役割」に過ぎないと考えています。

それより重要なことは、その船がどのような設計思想でハード、ソフト、ヒューマンウェアを考えているかです。司司(つかさつかさ)にリーダーがいて、多様な背景のスタッフがいてもいい。船員をどこに配備して、乗客はどこで食事して、どこで休むか、何を創発させる場なのかなど、そんなことを設計する視点を持ち続けていたいと思うんです。なんてったって、長旅ですからね。

野武士ジャパンに関わっている私からすると、民間企業でチームを変えるのは簡単ですよ。だって、野武士ジャパンやダイバーシティサッカーで活動している個の多様性と比べて、圧倒的に背景が同質的な人たちが集まっていて、そう違わない文化や価値観を共有しているはずだからです。ですから、その中でのマネジメントやコミュニケーションは、もっとシンプルに考えて、ルールだってどんどん作り変えていけばいいと思うんです。

新しい情報技術が次々に台頭する時代だからこそ、人と人の対話やつながりが価値を持つ。この人と仕事をしているという内面的な幸福感に基づいた仕事を、トップから現場までできる企業がこれから活躍し、生き残るんでしょうね。

多様な背景や状況にある個人が、サッカーを通じて、それぞれの目的に向かって、仲間を見つけ、自分たちのペースで一歩一歩進んでいる、そんなチームが野武士ジャパンやダイバーシティサッカーです。

ホームレス・ワールドカップ日本代表「野武士ジャパン」コーチ・監督 蛭間芳樹

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[取材・文] 大矢幸世、岡徳之

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