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INTERVIEW
NPO・二枚目の名刺代表に聞いた、「本気の副業」で人生をデザインする方法
INTERVIEW

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BOOK MARK

副業への関心が高まる中、今いる会社で自分のやりたい仕事に取り組めず、思うように成果を挙げられない現状を打破する糸口として、副業を考え始めている人もいるのではないでしょうか。

副業というと、「会社に隠れて」「片手間で小遣い稼ぎのためにやる」といったイメージを持つ人が多いと思います。しかし、もしキャリアを意識するのであれば、そうした従来の副業とは別の「社外での活動」を選択することをお勧めします。

こう語るのは、NPO法人「二枚目の名刺」の代表を務める廣優樹さん。会社員として働く傍ら、2009年にNPOを立ち上げ、これまで400名を超える社会人の社外活動を支援してきました。

本業の1枚目の名刺とは別に、2枚目の名刺を持って社外での活動に取り組む社会人に接し、また自らも2枚目の名刺を実践してきた廣さんに、なぜ今、単なる副業ではない社外での活動が注目されているのか、そしてその取り組みをキャリアにつなげるカギを伺いました。

NPO法人二枚目の名刺 代表 廣優樹

PROFILE

NPO法人二枚目の名刺 代表 廣優樹
廣優樹
NPO法人二枚目の名刺 代表
1979年生まれ。慶應義塾大学卒業、オックスフォード大学でMBA取得。日本銀行、経産省勤務を経て、2014年より商社勤務。会社員としての業務の傍ら、2009年にNPO法人二枚目の名刺を立ち上げ、代表を務める。本業で持つ1枚目の名刺のほかに、“社会のこれから” を創ることに取り組む個人名刺を「2枚目の名刺」と位置づけ、NPOと社会人をつなぎ、社会人の変化・成長を促すことで、ソーシャルセクター、企業の発展を同時に後押しするモデルを提唱している

お金のためではない、変わりつつある「副業観」

—副業への注目が高まっています。率直に、現在の世の中の空気感をどのように捉えていらっしゃいますか。

まず、最初に「副業」という言葉。やはり多くの人が、「小遣い稼ぎ」「隠れてやる」というイメージを持っていると思うんです。確かに、「副業」についてアンケートを取ると、副業の目的は「お金を得ること」と答える人がダントツに多いのは事実。

それから、会社がメイン(主)、それ以外の活動はサブ(副)という発想を持つ人はまだまだ多く、「メインとサブの活動ならメイン(会社)を優先せよ」という発想が根底にあるから、「隠れてやる」、あるいは他言する必要がないのであれば言わない、ということになる。これがいわゆる従来の「副業」です。

具体的な数字で見てみると、NPO「二枚目の名刺」で従業員が1000名以上の大企業勤務者に対して副業に関する意識調査を行ったのですが、現状副業を行っているのは16.7%。やっている副業の多くは、金融・不動産投資、ネットでの物品販売が大半のようです。

また副業意向についても、現在副業をしていない人でも「1年以内には副業を始めたい」と意欲を示したのが41.7%。つまり、実践者と意向者を合わせると、「約6割」が副業をしたいと考えていることが分かっています。個人レベルで、副業に対する期待感は高まっているのは事実です。

ただ、最近は自分の人生を豊かにするために、会社という閉ざされた世界の外に出て取り組みを行いたいという副業意向を持つ人が増えてきているのが特徴です。必ずしもお金を得ることを目的としない、あるいは自分が楽しむだけの趣味でもない、「社外での活動」への関心が高まっています。

1つの会社にとどまると会社の外で通用しなくなるのではないかという将来への不安を払拭したいという人もいれば、組織での役割に徹しすぎたあまりに見失ってしまった自分探しをしたい人もいる。もちろん、純粋に会社の外でいろいろな世界を見てみたいという人もいます。

やりたいことが先にあるというよりも、現状打破のために会社外で何かに取り組んでみたいと考える方が多いですね。

NPO法人二枚目の名刺 代表 廣優樹

私たちは、2枚目の名刺を、「組織や立場を超えて社会のこれからを創ることに取り組む人が持つ名刺」と定義しています。従来の副業のベクトルはすべてが自分に向き、できるだけ閉じた世界で活動しようとする。一方、2枚目の名刺は、ベクトルは社会に向いています。

今の会社の名前やポジションとは関係なく、会社外で自分の経験やスキルを活かしてNPOの取り組みを後押しすることも、社会にイノベーティブな価値を創ることに会社外で挑戦することも、地域の活動にこれまでとは違う視点を持ち込み盛り上げることも・・・とにかく、「こんな社会になったらいいな」を当事者として創りにいく、自分と社会がこれまでとは違う関わり方になるのが、2枚目の名刺です。

2009年にNPOを立ち上げたとき、2枚目の名刺というコンセプトに一番最初に反応したのは、仕事を一通り覚えて、より自分の幅を広げたい、新しいことに挑戦したいという20、30代の若手ビジネスパーソンでした。彼らの特徴は、「1.社会課題にネイティブであること」「2. 会社内で閉塞感を感じていること」「3.社会を創ることへの自由度を実感していること」です。

1. 社会課題にネイティブである

今20、30代の世代は、学生時代に社会のことを学び始めたときには公的システムが制度疲労を起こしており、また高齢化も常に意識せざるを得ない問題として認識しています。そして東日本大震災により、さまざまな課題が他人ゴトではないことを知り、社会の課題を自分ゴト化している世代です。

2. 会社内で閉塞感を感じている

日系企業の多くは成長力が鈍化しています。そして過去の成功モデルから抜け出せず、過去の成功を再生産するための組織や業務プロセスは、新しいコトを生み出すことに必ずしもフィットしない。組織の上のほうは詰まってしまい、”素振り” ばかりでなかなか出番も回ってこない・・・そんな閉塞感を感じています。

3. 社会を創ることへの自由度を実感している

この世代は、会社の外に一歩飛び出せば、会社の制約は外れ、SNSを使えば仲間集めも情報発信もいくらでもできるという時代感、またそれを活かしてアクションしている同世代を見て、個人でも社会に変化を創りだすことができることを実感しています。

ここ数年は、こうした若手に加え、40、50代のミドル層からも社会を創る2枚目の名刺を持ちたいという問い合わせが増えてきました。彼らが意識しているのは、定年退職後のキャリアです。「人生100年時代」に働く期間が延びると言われる中、40、50代はまだキャリアの半ば。これまで培ってきたスキルを次の世代にも還元したい、勤め上げた会社以外でのキャリアの可能性を模索したいと考える人も多いようです。

こうした新しい「社外での活動」は、従来の「副業」とは明らかに異なるワークスタイルであり、ライフスタイルです。自分の価値観を軸に、会社での取り組みと社外での取り組みを並走させる。「会社の仕事も大事だし、そして社外での活動も大事」という感覚です。

ところが、経営者側はまだ、メイン(主)である会社の仕事外でやることは、サブ(副)の取り組みであり、従来の副業の枠を超えた社外での活動も全部「副業」ととらえ、ネガティブなイメージを持っている人が多い。実際、2016年12月に日本経済新聞社が発表した「社長100人アンケート」では、79.5%が「副業を認めない」と答え、その理由として85.3%の人が「本業がおろそかになるから」と答えました。

一方、僕らの意識調査では、副業実施者と1年以内に副業意向がある人の約70%が「副業を認めない会社に魅力を感じない」と答えたのです。それに加えて副業意向の「ない」人でさえ、約37%が「副業を認めない会社に魅力を感じない」と答えた。特に後者の数字は、経営者としては無視できない数字ですね。

やりがい・成長・キャリアを意識しながら社外での活動への自由度を求める社員と、従来の隠れてやる・小遣い稼ぎのための副業にネガティブなイメージを持ち、メイン(主)の持ち場に張りついてほしいという経営者の間で、議論がかみ合っていないような印象も受けます。

働き方改革が進み、社員が会社のために過ごす時間が減少する。すなわち、会社外での時間が増えるわけです。その会社外での時間をどのようにデザインしてあげられるか、デザインすることを後押ししてあげられるか・・・魅力ある人材を確保する上で、経営者には従来の「副業」の概念を超えた思考が求められています。

NPO法人二枚目の名刺 代表 廣優樹

「会社外での時間」をデザインする実践的ノウハウ

—「会社外での時間」はどのようにデザインすればよいでしょうか。本業への不満が副業のきっかけとなる人がいるのも事実です。

人生がうまくいかないときは誰にでもあります。そのとき、会社に寄りかかるのか、それとも自分のキャリアは自分が「オーナーシップ」を持っているんだと思えるかで、大きな違いがあると思います。軸を持たないまま「逃げ」の状態が続くと、また誰かに依存することが起きがちです。

組織の名前を外し、自分の名前で勝負する社外での活動は、より「お前は何者か?」が問われる世界です。自分は片手間のつもりかもしれないけれど、そこがメインフィールドの人たちと交わることになる。本気でない片手間の取り組み、逃げの取り組みは見透かされます。結果、思い描いていたイメージは実現されず、新しいネットワークの構築や、成長・キャリアアップにつながる経験も得られないわけです。

これは働くこと全般に言えると思いますが、「お金を稼ぐこと」「やりがいがあること」「成長を実感できること」、この3つとも重要です。この3つのバランスを自分が主体的に選択して取れるようになると、より豊かな人生を設計できるようになる。すなわち、自分の人生にオーナーシップを持てるかが重要なのですが、社外での活動という選択肢はその幅を広げるものだと思っています。

「自分が何をしたいのか分からない」というビジネスパーソンには、何か活動を始める前でも、とにかく個人の名刺を持つことをお勧めしています。自分のやりたいこと、価値観が明確になっていくからです。

なぜなら、個人の名刺を持つと、「自分はこんな人なんです」と自己紹介しないといけなくなる。本業の名刺に書かれた「〇〇株式会社〇〇部〇〇課〇〇」という肩書きに頼らず、ただシンプルに自分の名前と、強みや好きなこと、やりたいことを表現しないといけない。この「持って」「渡して」「説明して」の繰り返しが、自分を変えるきっかけになるんですね。

そして動きだすことにより、自分が予想しないような次なる展開が待っています。動いた人にだけ訪れる、「セレンティピティ(偶然の出会い)」が起きるんですね。

社外での活動として「二枚目の名刺」主催のイベントに参加する社会人のみなさん
社外での活動として「二枚目の名刺」主催のイベントに参加する社会人のみなさん

—廣さんご自身は、やりたいことをどのように表現してこられたのですか。

僕の場合、大きな軸としては「社会に変化を起こしたい」というものがありました。今までのやり方や既存のビジネスモデルを回していくだけでは、日に日に社会や市場環境が変化する中で制度もモデルも劣化してフィットしなくなってくる。新たな仕組みを生み出すことで、「変化を起こす側」になりたいと思っています。

本業では商社で食料事業、つまり世界規模で考えると「飢餓」と「飽食」という2つの背反する課題が併存する分野に関わっており、いかに事業を通じて解決できるかを考えています。

しかし、自分一人、一つの組織だけでできることはかぎられている・・・社内外で多くの人と関われば関わるほど、もっと面白いことができて、社外で大きなインパクトを出し、それを社内にも還元できる。そうやって、活動を続けてきました。

自分のやりたいことを貫くには、まずは本業でパフォーマンスを出し、会社での持ち場でしっかり役割を果たすことが大事だと思います。上司や同僚の信頼を勝ち得ているからこそ、社外での活動を受け入れてもらえる。

僕自身のことを言えば、例えば平日、NPOの代表としてカンファレンスなどの講演に呼ばれることもありますが、ありがたいことに「じゃあ、行ってこいよ」「応援する」と、温かく見守ってもらえています。

そして、社外での活動を通して得られたナレッジやネットワークが上司や人事、広報に認められてくると、「社外でやってることを何か面白い形で持ち込もうとしている」とポジティブに受け止めてもらえるわけです。

そのうち、「お前、忙しいのによくやるよな」「仕事に影響しないの?」から、「面白そうだな。どんどんやってこいよ」とまわりの姿勢も変わってくる。そうやって送り出してもらえるからこそ、自分としても会社に対するロイヤルティが高まります。

NPO法人二枚目の名刺 代表 廣優樹

もしこれが、「本業のガス抜き程度」だったり、会社に隠れてコソコソやっていたりするような「逃げの副業」だと、社内の賛同を得らず、社内に持ち帰って、事業につなげていくというダイナミズムを起こすことができない。

大企業に勤めている人なら、そのリソースをうまく活かして、会社を巻き込んで、さらなる成果につなげることもできるはず。実際、そうやって社内を巻き込んでいる人は増えています。

会社でモヤモヤしているくらいなら、外へ飛び出してみる。本気で取り組んで、社内を巻き込む。僕も、そんなチャレンジを後押ししていけたらいいなと思っています。

NPO法人二枚目の名刺 代表 廣優樹

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[取材・文] 大矢幸世、岡徳之

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