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会社やチームで先端テクノロジーを導入する前に考えたいこと、示唆を与えてくれる読者推薦の5冊
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人工知能、ブロックチェーン、仮想通貨など、先端テクノロジーが社会に浸透し始めています。これらの技術を活用することで、生産性向上やコスト削減を実現している企業も増えてきているようです。

そうした事例を見聞きし、自分が所属する会社や部署でも活用してみたいと考えている人は少なくないはず。しかし同時に、自分に使いこなせるのか、上司を説得できるのか、といった懸念も多いのではないでしょうか。

本記事では、「個人と組織の新しいテクノロジーの受容」を考える上で役立つ、示唆や洞察を与えてくれる読者推薦の5冊を紹介します。先端テクノロジーを活かし、イノベーションを起こし続ける組織づくりを志す人にとって、必読の書です。

『知ってるつもりーー無知の科学』

『知ってるつもりーー無知の科学』 スティーブン・スローマン、フィリップ・ファーンバック 著、土方奈美 訳(早川書房)
『知ってるつもりーー無知の科学』 スティーブン・スローマン、フィリップ・ファーンバック 著、土方奈美 訳(早川書房)

本書は認知科学者である、スティーブン・スローマン氏とフィリップ・ファーンバック氏が「人はなぜ知ったつもりで、意思決定を行ってしまうのか」という問いを探求しています。

本書の前半では「説明深度の錯覚」に関する実験などを通じて、そもそも知識や知的活動とは何なのかを説明しています。

「説明深度の錯覚」とは、自転車やトイレなど普段目にするものについて、知っているつもりでも実はその詳細な仕組みをそれほど分かっていない状態のことです。著者らはこれを「知識の錯覚」と呼んでいます。

知識の錯覚がなぜ起こるのか。1つは、個人が複雑な世界のすべての情報を詳細に知ることは不可能であり、意思決定に必要な情報を取捨選択する必要があるからです。また、必要な情報を得ることができる「知識のコミュニティ」が発展していることも重要な理由であるといいます。

人間は知識のコミュニティにアクセスすることで知識をつなぎ合わせ、これまでにさまざまなイノベーションを起こしてきました。また、今後もクラウドなどを活用することで、知識の相乗効果が期待できるといいます。

一方、政治・経済・社会分野では、知識のコミュニティへの過剰依存により、多くの人々は根拠のない意見を持ってしまう傾向が強いと指摘しています。本書の後半では、知識のコミュニティの弊害を説明しつつ、その処方箋も提示しています。

本書が示唆するように、自分が無知であることを受け入れることが、テクノロジーを受容し、活用していくための第一歩となるのかもしれません。

『イノベーションのジレンマー技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』

『イノベーションのジレンマー技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』 クレイトン・クリステンセン 著、玉田俊平太 監修、伊豆原弓 訳(翔泳社)
『イノベーションのジレンマー技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』 クレイトン・クリステンセン 著、玉田俊平太 監修、伊豆原弓 訳(翔泳社)

なぜ、優良企業が突然、新興企業に市場を奪われてしまうのかーー。ハーバード経営大学院のクレイトン・クリステンセン教授が著した本書では、この問いに迫り、明快に理由を説明しています。

イノベーションには「持続的イノベーション」「破壊的イノベーション」があります。優良企業が注力するのは、持続的イノベーション。

新しい市場をつくりだす破壊的イノベーションですが、市場が立ち上がった初期段階はその規模は小さく、優良企業にとって参入する魅力はありません。短期利益を求める株主の意向などもあり、結果としてリソースは持続的イノベーションに向けられることになります。

持続的イノベーションは既存の優れた商品を改良していくプロセスで、顧客のニーズに応えるものですが、ある段階を超えると顧客が求める以上のものになってしまい、商品の価値が低減していくといいます。

その状況で、新興企業による破壊的イノベーションがもたらされると、市場ではその商品への関心が高まり、優良企業が提供してきた既存商品の価値はさらに損なわれ、優良企業の地位が揺らぐことになってしまいます。

こうしたジレンマに陥らないためには、優良企業は破壊的イノベーションにも取り組むべきで、それは新しい顧客基盤を基にしたり、破壊的イノベーションに注力できる組織や部署に委任したりすることで取り組むことができるといいます。

持続的と破壊的という対比は、テクノロジー受容の文脈でも重要な示唆を与えてくれるでしょう。

『パラダイムの魔力』

『パラダイムの魔力』 ジョエル・バーカー 著、仁平和夫 訳(日経BP社)
『パラダイムの魔力』 ジョエル・バーカー 著、仁平和夫 訳(日経BP社)

先端テクノロジーが身近になっている背景には、もしかすると「パラダイム・シフト」の発生があるのかもしれません。

米ミネソタ科学博物館の未来学研究部長を務めながら、コンサルタントとして活躍したジョエル・パーカー氏が著した本書は、出版された1993年以来多くのイノベーターやビジネスパーソンに愛読されてきた古典的名著といわれています。

本書によると、パラダイムとは、ルールと規範であり、境界を明確にし、成功するためにどう行動すればよいのかを示してくれるものと説明しています。パラダイムと個人の役割の関係についても言及しており、たとえば管理者はパラダイムを強化するのが役目で、リーダーはパラダイム間を導くことが役目といいます。

パラダイム・シフトが起こるということは、既存のルールや規範が変わってしまうこと、つまりゲームのルールがすっかり変わってしまうことであるといいます。

パラダイム・シフトを予見するには、どうすればよいのか。著者は、トレンドが目に見えて現れるのを待つのではなく、ゲームのルールを変えようとし始めた人に注意を払うべきだと指摘します。

20年以上も前に出版された本書ですが、人工知能や仮想通貨などに関するルールづくりが進められている現在にぴったりの内容といえるでしょう。次のパラダイム・シフトを考え、洞察する力を与えてくれるはずです。

大きな変化に対してどのように向き合っていくかーー。もう一度読み直そうと思いました(30代・男性・シンクタンク/コンサルティング業界)

『エンジニアリング組織論への招待〜不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング』

『エンジニアリング組織論への招待〜不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング』 広木大地 著(技術評論社)
『エンジニアリング組織論への招待〜不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング』 広木大地 著(技術評論社)

テクノロジーに関わる問題は、実は人々の思考や組織のあり方にあるーー。エンジニアの視点から、思考や組織の構造をリファクタリングし、解決方法を体系的に捉えようとするのが本書です。

本書を貫くたった1つのテーマは「不確実性に向き合う」こと。未来の不確実性と他人とのコミュニケーションにおける不確実性をどのように捉え、減らしていくのか。

筆者は不確実性を減らすためには、まず人間の認知の不完全さを知ることが重要であると説いています。同じ企業やチームで働く人間であっても、それぞれが持つ偏見や先入観は多種多様。こうしたバイアスをあぶり出すことが不確実性を解消するための前提となります。

不確実性を減らす具体的な方法として、アジャイルなチームをつくること、そのためにはメンタリングが有効であると説明します。

筆者のいうアジャイルとは、不確実性に向き合うための考え方そのもので、アジャイルなチームとは目的を達成するために、周囲の不確実性を吸収しながら、その内部で独自の秩序を作り上げていくようなチームのことを指しています。

本書の内容はエンジニアや経営者を対象にしたものですが、不確実性に対する考え方やマネジメントの手法は、テクノロジー受容の文脈でも活用できるはずです。

『自由を子どもに』

これまで存在しなかった先端テクノロジーを受容し、活用するためには、先入観、固定観念、既存のルール、認知バイアスなどから離れ、自由に発想することが求められるかもしれません。

しかし、「自由」とはそもそも何か。そんな自由の側面の1つを考えるきっかけを与えてくれるのが本書です。本書が問うのは、子どもの「自由空間」がなくなったこととその影響です。

自由空間とは、子どもが大人に管理されることなく、自分の好きなことをして遊べる空間。ここで初めて、子どもたちは自分自身が主体となって生きる体験や考え方を身につけるのだといいます。

しかし、現代では子どもの自由空間はなくなってしまい、大学生になって初めて持てるものになってしまったというのです。

自由空間が喪失したことで問われる問題は、それが子どもたちの生活を貧しくするだけでなく、個性の発達を抑えてしまうことです。小さなころから管理された空間で育つことが、個性のない大人を生み出してしまうリスクがあることを示唆しています。

自由で個性的な発想というのは、未知のテクノロジーを活用する上で重要な要素になるかもしれません。

昔の日本ではいかに子どもが遊びながら学んだかという話。学習の原型について刺激される(40代・男性・医療業界)

「テクノロジー受容」についてさまざま示唆を与えてくれる5冊を紹介してきました。気になったものから、ぜひお手に取ってみてください。

【 本記事の読者にはこちらもお薦めです 】
49%の職業が消えゆく人工知能時代に知っておきたい「天職」3つの観点
人工知能の浸透という大きな変化に、ビジネスパーソンはどう挑めばよいのか。

[文] 細谷元

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