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人はより自律的にーー複雑性が高まる時代の組織のあり方を考える、読者推薦の5冊
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スマートフォン、ソーシャルメディア、クラウドなどテクノロジーの進化・普及は個人の暮らし、消費スタイルを大きく変えています。価値観・ニーズの多様化、消費サイクルの高速化、要求の高度化、などが挙げられるでしょう。

消費者が急速に変化し、社会も大きく変わるなかで、企業はこうした変化についていけていないという問題が指摘されるようになっています。その理由の1つには、企業組織の硬直化があるようです。

しかし、旧型組織では生き残れないと気づき始めた人も増えてきており、徐々に「新しい企業組織」が生まれつつあります。目まぐるしく変化する時代に合った組織とはどのような組織なのでしょうかーー。

今回は、新しい時代の組織のあり方について、重要なヒントを示してくれる読者推薦の5冊を紹介します。

『ティール組織ーーマネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』

『ティール組織ーーマネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』フレデリック・ラルー 著、鈴木立哉 訳(英治出版)
『ティール組織ーーマネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』フレデリック・ラルー 著、鈴木立哉 訳(英治出版)

本書は、テクノロジーの発展と高度化した個人の自律を前提とした新しい組織のあり方を「ティール組織」として提唱しています。

ティールとは、鴨の羽色で青緑色の一種。本書では人類の歴史における組織の発展段階を色のスペクトルに例えています。赤色から青緑に向かって進化していきます。

赤色は原始的な組織で、トップが力で群れをコントロールするオオカミの群れに例えられます。次に出現したのが、琥珀色で厳格な上意下達の命令系統で動く軍隊のような組織です。次いで、オレンジが登場します。これはピラミッド型組織で、多国籍企業によく見られる組織形態です。さらに進化すると緑色となり、エンパワーや価値観重視のピラミッド組織となります。そして、最も新しい形態としてティール(青緑)が登場しました。

ティール型組織は、ピラミッド型ではない「生命体」のような組織であるといいます。組織内の個人は存在目的を共有し、セルフマネジメントを通じて、階層やコンセンサスに頼ることなく、他のメンバーと連携しながらモノごとを進めていきます。組織は硬直したものではなく、環境の変化に迅速かつ柔軟に対応する、まさに生命体のような存在となります。

従来の組織、特に日本企業の多くはこれまで、経営者が従業員を、上司が部下を管理する形で存在してきました。しかし、人びとの価値観や働き方が多様化する中でそれはだんだんと難しくなり、企業はこれから個人の自律を支援し、自分たちを自律した個人の集まりとして捉え直す必要が生じてくるのかもしれません。

本書ではティール組織の代表例として、オランダの訪問医療組織「Buurtzzorg」や米国のトマト加工会社「Morning Star」などが紹介されています。

『小さなチーム、大きな仕事ー働き方の新スタンダード』

『小さなチーム、大きな仕事ー働き方の新スタンダード』ジェイソン・フリード、デイヴィッド・ハイネマイヤー ハンソン 著、黒沢健二、祐佳ヤング、松永肇一、美谷広海 訳(早川書房)
『小さなチーム、大きな仕事ー働き方の新スタンダード』ジェイソン・フリード、デイヴィッド・ハイネマイヤー ハンソン 著、黒沢健二、祐佳ヤング、松永肇一、美谷広海 訳(早川書房)

本書では、米国のソフトウェア開発会社37signals(現Basecamp)の事例をもとに、小規模な組織がいかに変化の激しい時代を生き残っていくのかを説いています。

37signalsは1999年にシカゴで設立され、主にWebデザインを手がけていました。2004年に、Webアプリケーション開発に重点を移し、2006年にはアマゾンのジェフ・ベゾス氏の投資会社に買収されています。

37signalsは企業を拡大することだけが選択肢ではないとし、小規模ながら持続的に利益の出るビジネスを続けることも重要であると説きます。拡大することで不必要なコストが発生し、リスクを高めるからです。事業拡大が宿命であると考える企業組織は多いですが、37signalsの考えはそうではない別の視点を与えてくれます。

組織としてのベクトルが拡大ではなく持続的利益の確保に向いているので、組織は真剣に制約のなかでの効率的なアウトプットを考えなければいけません。これを達成するために、本書はさまざまな施策を紹介しています。

例えば、会議は有害であるとみなし、会議をする場合は極力少人数で具体的な課題を取り上げ、解決策を出すことに集中します。また、ワーカホリックは生産性を下げるものとみなし、メンバーには効率的な仕事の方法を見つけさせ、定時には帰宅するように促しています。

このほかにも小さな組織が、メンバーのワークライフバランスを保ちながら、変化の速い市場で生き残っていくためのさまざまなヒントを提示しています。

『風に吹かれて』

『風に吹かれて』鈴木敏夫 著(中央公論新社)
『風に吹かれて』鈴木敏夫 著(中央公論新社)

スタジオジブリの代表取締役プロデューサーを務める鈴木敏夫さんへのインタビュー集。

本書は『紅の豚』『千と千尋の神隠し』『おもひでぽろぽろ』などスタジオジブリ作品のプロデューサーとして奔走した鈴木さんの生い立ちや映画製作に関わる本音をあぶり出しています。

数々の大ヒット作に携わった鈴木さんが、宮崎駿さんや高畑勲さんという巨匠と仕事をする上で、どのように考え、どう行動したのか、その詳細を知ることができます。

当初、宮崎さんにも、高畑さんにも相手されなかった鈴木さんですが、粘り強くコミュニケーションを続けたことで、2人の信頼を得て多くの作品を生み出していくことになります。

プロデューサーとして巨匠の思いを汲み取り、作品を創り上げていくために、どう巨匠と接し、彼らを導いてきたのか。

映画プロデューサーという特殊な立場ですが、鈴木さんの視点は何かを創り出すことに関わるすべての人に示唆を与えるものになるのではないでしょうか。

『「ほぼ日」の常識は、資本市場の非常識か』

糸井重里さんが代表取締役社長を務める株式会社ほぼ日(旧東京糸井重里事務所)の上場をめぐるインタビュー集。

「愉快で楽しそう」と言われている企業が、投資家の厳しい評価にさらされる株式市場に上場するのはなぜなのか。上場する以前は「子どもの自由」を謳歌する企業だったいいますが、それだけでは人として魅力がなくなってしまうと考え、上場することで自分たちを「子どもの自由」から開放し、「大人の自由」も享受できるようにしたのだといいます。

糸井さんは、人や社会に働きかけ返ってくるものがなければ企業の存在意義はないと述べています。人が喜び、生きていてよかったと思えることを提供することが重要となりますが、そのためにはお金も必要で、上場は避けて通れないと考えているようです。

ほぼ日が上場を目指すことを明らかにしたとき、市場関係者の間からは懐疑的な声が聞かれたといいます。これは、ほぼ日が目指すところと株式市場のロジックが噛み合わないだろうと思われたからでしょう。しかし、ほぼ日の株価は現在のところ順調に伸びており、既存の基準では懐疑的に思われる企業を市場が受け入れつつあることを示しています。

既存の制度や枠組みのなかで、ユニークで新しい組織がどう振る舞っていくのか、その先進的事例を考えるきっかけを与えてくれる1冊となるでしょう。

『TEAM OF TEAMS』

『TEAM OF TEAMS』スタンリー・マクリスタル、タントゥム・コリンズ、デビッド・シルバーマン、クリス・ファッセル 著、吉川南、尼丁千津子、高取 芳彦 訳(日経BP社)
『TEAM OF TEAMS』スタンリー・マクリスタル、タントゥム・コリンズ、デビッド・シルバーマン、クリス・ファッセル 著、吉川南、尼丁千津子、高取 芳彦 訳(日経BP社)

2003年イラク、最新装備の米軍精鋭特任部隊が、アルカイダの寄せ集め部隊に苦戦したのはなぜかーー。当時米特任部隊を率いイラク・アフガニスタンでアルカイダと戦ったスタンリー・マクリスタル司令官が著した本書は、自身の経験から導き出した新しい時代の効果的な組織について説明しています。

最新装備の米特任部隊がアルカイダに苦戦した理由。それは、情報通信テクノロジーがもたらした戦場の劇的な環境変化にあるといいます。人のつながるスピードや規模はそれまでの比ではなくなり、戦況はより複雑で不確実性の高いものとなりました。

そんな現代において、もともと厳格な命令系統を持ち、綿密な計画のもと実行に移す従来型の組織だった軍隊では対応が難しくなっていたのです。

スタンリー氏は軍だけでなく、企業や日常の暮らしでも関連していることも説明し、「計画・実行型」組織から「適応型」組織への転換を促しています。適応型にシフトすることで、メンバー同士が情報を適宜やり取りし、主体的に意思決定を行う組織ができます。これにより、現場で起こる想定外の状況に直面しても、迅速に行動・対処できるようになります。

事例として軍隊だけでなく、企業、医療現場、航空機事故などを取り上げ、効果的なアプローチを示しているので、幅広く組織のあり方を考えるヒントとなるでしょう。

複雑性が高まる時代の新しい組織のあり方について多くの示唆を与えてくれる5冊を紹介してきました。気になったものから、ぜひお手に取ってみてください。

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【 本記事の読者にはこちらもお薦めです 】
「ムーブ型組織 VS ステイ型組織」長時間労働が改革される会社のメカニズム
あなたの組織に合った、働き方改革のためのアプローチは?

[文] 細谷元

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