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終身雇用に代わる個人と企業の新しい関係「アライアンス」を学ぶ
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かつて機能していた終身雇用モデルは、社員が会社に忠誠を誓う代わりに企業は彼らに対して安定した雇用を保証するという、主従の関係でした。しかし、個人の仕事観が多様になってきているいまの時代、個人がキャリアップを求めて転職や起業に挑戦することは珍しくありません。一方で企業も、古い体質のままでは時代の変化に対応することができないため変革が求められています。

このように個人と企業のパワーバランスがゆらぎつつある中で、企業はどのようにして社員との間に信頼関係を醸成し、時代の変化の時代に適応していけばよいのでしょうか。そして個人は、どのように仕事や企業と向かい、キャリアを形成していけばよいのでしょうか。

そこで今回は、リンクトイン創始者のリード・ホフマンらが記した書籍『アライアンス』が提唱し、シリコンバレーで成功する企業が実践する「個人と企業の新しい雇用関係」をご紹介します。

また後半では、本著の監訳を務めた、東京糸井重里事務所CFOの篠田真貴子さんに、ご自身と在籍する企業の関係、そして個人が企業とよりよい関係を築くためのノウハウについて、経験談を交えながら解説していただきました。

株式会社東京糸井重里事務所 取締役CFO 篠田真貴子

PROFILE

株式会社東京糸井重里事務所 取締役CFO 篠田真貴子
篠田真貴子
株式会社東京糸井重里事務所 取締役CFO
慶應義塾大学経済学部卒業後、日本長期信用銀行(現:新生銀行)に入社。約4年で退職し、アメリカでMBAと国際関係論の学位を取得する。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーで経営コンサルタントに従事した後、スイスの製薬会社ノバルティスファーマに転職。所属事業部の部門売却によりネスレ日本へ移籍する。2008年、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」や「ほぼ日手帳」などを手がける株式会社東京糸井重里事務所に入社し、現在はCFOとして人事を含む管理部門を統括している。

従来、人材や情報は社内に囲い込まれ、個人のキャリアや目標よりも企業の論理が優先されてきました。しかし、個人の転職や起業が珍しくないいま、企業が社員を完全に囲い込むことはできず、いかに優秀なひとを会社に留めておくかが課題となっています。

一方個人に求められるのは、自分が成長できる機会を積極的につかみとり、キャリアの可能性を広げるための人脈や企業との信頼関係を築いていくことでしょう。

こうした中で注目されているのが、個人と企業がともに成長することのできる「アライアンス」という新しい雇用関係です。個人と企業がそれぞれの希望を話し合い、仕事を通して信頼関係を築くというもの。そうして培われたパートナーシップは、たとえ個人が退職した後も続くことから「終身信頼関係」とも呼ばれます。

このアライアンスは、アマゾン、ピクサー、リンクトインなど、主にシリコンバレーで成功する多くの企業で実践されているそう。たしかにこれらの企業と退職した元社員との間には終身信頼関係という言葉に置き換えられる「卒業生ネットワーク」があり、この人脈こそが栄枯盛衰を繰り返すシリコンバレーで成功する企業を支えていると言われます。

このトレンドを見抜き、それに関する考察をまとめたのが、いわゆる「ペイパル・マフィア」の一員でリンクトイン創始者のリード・ホフマンらが記した書籍『アライアンス』。このほど日本でも出版され、話題を呼んでいます。

アライアンスの特徴と関係作りのポイント

アライアンスのコンセプトは、個人と企業が信頼をベースにフラットな関係を築くこと。企業の目標を達成することはもちろんですが、個人の価値観やなりたい姿も重視されます。

アライアンスを結ぶには、まず個人と企業がそれぞれの目標や希望を話し合い、双方が相手に対して貢献できることと、求める期待値を明示します。アライアンスは、個人の適性や職位、最終目標によって【ローテーション型・変革型・基盤型】の3つの型に分けられます。

読者のみなさんはどれに当てはまりますか?

アライアンスの「3つの型」

それぞれの型や目的に合わせて、契約する企業の仕事にコミットする内容を定めます。それに沿ってミッションを成し遂げることで信頼関係を築かれていき、ミッション完遂後、お互いの次のステップを話し合い見つけるというサイクルです。

ポイントは、個人と企業がお互いに真摯な姿勢で率直な対話を心がけること。もしも今後、自分の将来や働き方を見直したい、あるいは優秀なひとをチームに迎え入れたいというときに参考にしてみてはいかがでしょうか。

信頼関係に基づくネットワークは退職後も残り続ける

篠田さんはこう言います。

こうしたアライアンスのような柔軟な雇用関係は、日本でも成長フェーズにあるベンチャー企業や、異分野への早期参入を図ろうとする大手企業を中心に実践され始めています。

つまり、働き方の変化はシリコンバレーだけでなく、日本でも起こり始めているのです。篠田さんご自身がCFOを務める東京糸井重里事務所でも、社員と企業との間に、アライアンスのベースとなるフラットな信頼感関係が築かれているといいます。

糸井事務所は、人事にあたり2つのことを重視しています。第一にひととして誠実であること。そして仕事である以上、会社や仲間に対して貢献できること。当社では社員一人ひとりのやりたいという動機を何よりも大切にしているのですが、同時にそれが社会に提供できる価値を伴っていなければなりません。

個人と企業がともにプラスの価値をもたらし合う仕事にコミットするからこそ、両者の間に信頼関係が生まれるそう。そうして培われた関係は退職しても途切れることはなく、「卒業生」として情報交換や仕事の受発注をするなど、有機的な関係として残り続けるケースもあるのだそうです。

違和感から逃げず、自分のものさしを持つこと

それでは、どのようにアライアンスを実践すればよいのでしょうか。篠田さんは、個人が企業とアライアンスを結ぶためには、まず個人が「自分のものさしを持つこと」が重要だと話します。

自分は何を求め、企業に何を約束したいのかという視点を持つこと。そしてどのような環境なら自分は力を発揮できるのか。本当にやりたいことは何なのか。自分の価値観やなりたい姿を自問自答しながら見つけていくことが大切です。

そのものさしがあると、世間に左右されることなく自分の強みや価値観に沿った機会を見つけやすくなるそう。そして、それは短期間で考えて簡単に見つかるようなものではなく、仕事を突き詰めて行く中で葛藤や自己肯定を繰り返すうちに形作られていくのだそうです。

篠田さんは自身の過去を振り返り、自分のものさしを持てるようになるまでには、いくつかのターニングポイントと紆余曲折があったと話します。

若いとき、自分の判断基準は世間のよしあしでしかなく、大手外資系企業でキャリアを積み、管理職に昇進していくことを”よし”と考え、実際世間のいう“よし”をたくさん手に入れました。けれど30代後半にさしかかったあるとき、その状況にまったく満足していない自分に気づいたのです。そしてこの違和感は何なんだろうって。管理職として仕事を全うしながらも、これは本当に自分がやりたいことではないのかもしれないと、数年間悩み続けました。

自問自答と葛藤を繰り返し、仕事をする中で抱いた違和感と向き合い続けた篠田さん。ちょうどその頃に出産と育児が重なり、仕事との両立が難しくなったことも、自分のキャリアを見つめ直すことにつながりました。

そうした中で見えてきたのは、自分のものさしは、育児と仕事を両立することができ、イニシアチブを持って力を発揮できる仕事であるか否か。そのものさしに照らし合わせ、自分の価値観に合い、なりたい姿を叶えることができるのは、大手外資系企業で昇進することではなく、東京糸井重里事務所のような職場だと気づいたそうです。

世の中の判断軸からすると、糸井事務所はヘンピな所に映るかもしれません。けれど自分の動機を持って、自分の強みを生かして、ゼロから仕事を生み出すことができるのが最高に楽しいのです。

日本長期信用銀行(現:新生銀行)からマッキンゼー、大手外資系2社という華々しいキャリアから、全く異なる業界に転身した篠田さんですが、結果的に、東京糸井重里事務所はご自身のキャリアの中で在籍期間の一番長い職場となっているそうです。

そして、その転身から8年目となったいま、さらなる挑戦が始まろうとしています。

会社の株式公開に向けて準備を進めています。東京糸井重里事務所の価値や個性を生かした形での上場を目指しており試行錯誤していますが、私のキャリアにおいても会社にとっても大きな転機となるでしょう。

これが、篠田さんと糸井重里事務所が結んだアライアンスの形です。

最後に篠田さんは、自分のものさしを持つためのヒントを教えてくれました。

自分のものさしを持つことは、自分に似合う服を見つけることに似ています。似合う服が見つかると、流行に左右されることなく、自分らしくのびのびと楽しむことができる。特に30代からは、自分の好き嫌いを見つけ、キャリアをつかんでいく時期。大切なのは、世間のよしあしに対して感じている違和感や現状に対するもやもやから逃げないことです。何も疑問を持たずにやり過ごしてしまうのは、もったいないですし、考えることから逃げても答えは出ません。

「ひとに相談したり、自分がしたくないこと・なりたくない姿から消去法で探していくのもいい」とも。仕事を突き詰めながら葛藤や自己肯定を繰り返すうちに、ものさしは作られていく。 そして、その判断軸が明確になるほど、それに合った機会を手に入れやすくなるのです。

『ALLIANCE アライアンスーー人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』リード・ホフマン、ベン・カスノーカ、クリス・イェ 著、倉田幸信 訳、篠田真貴子 監訳(ダイヤモンド社)
『ALLIANCE アライアンスーー人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』リード・ホフマン、ベン・カスノーカ、クリス・イェ 著、倉田幸信 訳、篠田真貴子 監訳(ダイヤモンド社)※無断コピー禁止

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[取材・文] 早川すみれ

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