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世界のIT市場を席巻するインド人経営者に見るグローバル時代のリーダー像
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工業社会においては、日本は世界的企業を数多く生み出してきました。一方で、情報化社会に移行してからは、アメリカをはじめ欧米企業が世界を席巻し、日本の存在感が薄くなりつつあることは否めません。

そんな時代においてGoogle CEOのスンダー・ピチャイ氏、ソフトバンク代表取締役副社長のニケシュ・アローラ氏、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏など、世界の名だたるIT企業の経営者を次々と輩出しているのが「インド」です。

このような状況はわずか数年といった短期間で作り出せるものではありません。それでは、インドはどのようにしてIT業界に強い人材を育成してきたのかーー。

同国で優秀なIT人材が育ってきた背景と彼らの特性について、日本のIT企業としては数少ない、アジア事業において今年(2015年)黒字化を達成したネット広告企業 マイクロアドのインド支社長を務める佐々木誠さんにお話を伺いました。

すると、このグローバル時代にこそ求められる「リーダー像」が見えてきました。その内容を、前編と後編(10月28日に公開予定)の2回に渡ってお届けします。

マイクロアド・インディア 代表 佐々木誠

PROFILE

マイクロアド・インディア 代表 佐々木誠
佐々木誠
マイクロアド・インディア 代表
インド・デリー在住。大学卒業後、商社に勤務。その後、2000年にサイバーエージェントに入社。ネット広告事業に営業担当として長年携わりながら、同社のブログサービス「Ameba」の立ち上げなど新規事業にも携わる。2012年にグループ会社 マイクロアドにインド事業の責任者として参画。マイクロアド・インディアの代表として、ディスプレイ広告の配信プラットフォーム「MicroAd BLADE」を主力サービスとしてインド市場を開拓中。

エンジニアリング・MBA・世界中の人脈の三拍子

先述のGoogle、ソフトバンク、マイクロソフトのほかにも、アドビ・システムズCEOのシャンタヌ・ナラヤン氏や、世界有数のソフトウェア開発企業として知られるインフォシスの創業者ナラヤナ・ムルティ氏など、世界のIT市場を牽引する中心人物らを輩出した国として存在感を高めるインド。「ITに強い」という同国のカントリーブランドはいまや世界に浸透しつつあります。

こうした世界でのインド人の躍進が際立つ反面、インド国内のIT業界の歴史は浅く、まだまだ新しい業界だからこそ、個人が大きなチャンスをつかむことができる。だからこそインドではIT人材が増えているのでしょう。

しかし、IT業界に従事するひとが増加しているのは、日本も含め世界の多くの国で共通していることのはず。ましてや人材の層が決して厚いとはいえないインドが、世界のIT業界のリーダーを続々と輩出できているのはなぜなのでしょうか。

佐々木さんいわく、それを可能にしてきた背景は3つあります。それは、

  1. 理系教育に力を入れてきた国策
  2. 世界に広がる印僑ネットワークの存在
  3. 対米のソフトウェア開発を担ってきたこと
インドは50年以上も前から貧困問題を解消するために工学・理系人材の育成に力を入れてきました。インド工科大学の開校がそうです。インドの大学は3年制で、向上心の強いひとは国内に留まらず、MBAを取得するのが主流。つまり優秀な人材は、エンジニアリングとマネジメントの両方の能力を備えているのです。

Google CEOのピチャイ氏も同大学の出身。卒業後に米スタンフォード大学で工学修士、ペンシルベニア大学ウォートン・スクールでMBAを取得した、まさにインド製ITエリートなのです。

印僑と呼ばれるインド移民の存在も大きい。そもそもインドは貧しく、国内のマーケットが小さいために海外に渡るひとが多い。印僑は世界110カ国以上に2,000万人以上いると言われます。この世界中をカバーする巨大な人脈はビジネスにおいて有効です。

シリコンバレーで働くエンジニアやマネジメント層にもインド人の割合が多いそう。また、インドは長年、豊富な英語人材とアメリカとの時差を生かして、アメリカ市場向けのソフトウェアの開発などを担ってきました。

こうして欧米のIT業界には欠かせない存在としての地位を徐々に確立し、現在のような状況を作り出していったのです。

Google、ヤフー、Amazon、インフォシスなど世界的なIT企業が集積する都市 バンガロール。「インドのシリコンバレー」とも呼ばれています
Google、ヤフー、Amazon、インフォシスなど世界的なIT企業が集積する都市 バンガロール。「インドのシリコンバレー」とも呼ばれています

インド人リーダーに日本人が学ぶべきことは?

このようにして、エンジニアリング・MBA・世界的な人脈という、この時代のビジネスにおいて強力な要素をインド人たちは手にしてきました。佐々木さんは、そうしたひとたちの中でも、グローバル企業のトップに就くひとには共通した素質があると言います。

彼らがなぜ世界のIT市場でトップに上りつめることができたのか。私は、インドの「多様性」が大きく関係していると考えています。12億人の国民を擁するインドには、貧富の差、宗教の違い、言葉の違いが当然あります。多様であることが当たり前なので、人々の違いを見極め、その上でともに出来ることを模索する。そうしたクリエイティビティと忍耐強さが、企業の経営者としての強みになっているのではないでしょうか。

インド人リーダーのこの資質については、ウォール・ストリート・ジャーナル紙など海外メディアも伝えています。例えば、Google CEOのピチャイ氏は、目立つタイプではなく控え目。「Google Chrome」などの製品を生み出した実績があるだけでなく、競争圧力を見極めてマネジメントをすることができ、社内や取引先との間で生まれた意見の相違を調整する能力が高い。熱く好戦的な経営者が多い欧米社会では「例外な存在」なのだそうです。

単一民族の日本人には理解が難しい感覚ですが、インドは公用語だけでも20言語以上あるため、そもそも社員を均質化してマネジメントするのは不可能なのです。こうした環境が、他者を受け入れ、異なる考えを持つひとたちをまとめる力を養ってきたと考えられます。

日本でも、こうしたリーダーシップは今後求められてくるでしょう。佐々木さんは、私たち日本人が多様なバックグラウンドを持つひとたちと円滑に仕事を進めていくのに必要なことについて、次のように分析します。

日本人のリーダーは、部下たちを平均化しようとしがち。強い組織を作る上で大切なのは、個々人の違いを埋めようとするのではなく、違いを見極めて対応することです。

組織やそこにいる人びとが多様であることを理解し、理性的に対応できる。些細なことでも曖昧にせず、誠意を持って対話を重ねる。そうして信頼を築いていくことのできるリーダーが、このグローバル時代に求められているのです。

後編では、「インド式イノベーション」の特徴と、それをヒントに日本人ビジネスパーソンがグローバルビジネスに挑戦するために取るべきアクションを探ります。

後編:始めから世界をねらう、インド式イノベーションの力を日本人はどう盗むべきか?

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[取材・文] 早川すみれ、河野優人

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