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人心掌握に優れたリーダーのリスク。愛されるだけのリーダーはもういらない?
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最近「叱れない上司」が増えているとよく耳にします。ある教育団体の管理職を対象に実施した調査によると、「部下に対して十分にできていないことで、今後改善したいこと」として、最も多かったのが「効果的に叱る」であり、200人の回答者のうち約半数が回答したそうです。

その理由として「厳しく叱るとすぐに落ち込んでしまう」や「叱ることにより人間関係がこじれるのが嫌」などがあるようですが、この「タフなコミュニケーション」を避けてしまうのは、日本人だけではないようです。

ある調査では、アメリカの幹部社員も半数以上が部下を厳しく指導することに二の足を踏んでいるというのです。さらに人心掌握力が高く、人望の厚い幹部社員ほど、部下とのタフなコミュニケーションを避ける傾向が強いと示されていたのです。

リーダーシップ開発を手がけるアメリカのロバート・カイザーとロバート・カプランはコラムの中で、人心掌握力の高い一見理想的なリーダーが部下とのコミュニケーションをとる際に留意しないといけない二点を指摘しています。

「Can You Overdo People Skills?」   >> 人心掌握 記事元

一つ目の人心掌握に関する留意点は、問題ある行動をする社員に対して、十分に効果的な指導ができているか、です。彼らは直接的に部下に厳しく指摘をすることを苦手とし、とりわけ争いごとがある時に、その傾向が顕著になります。場合によっては話をすること自体を避けたり、メッセージがあいまいになるあまり、話し合いを 終える時には部下は問題の深刻さに気付かないことさえあるのです。こうしたリーダーは、自分では相手に配慮しているつもりになっていますが、実際は自分のことを守っているに過ぎません。相手に強く反論されたり、これまで構築した信頼関係が壊れるのが恐ろしいのです。

そして二つ目の人心掌握に関する留意点は、効果的な指導ができないまま放置し、問題を大きくしてしまっていないか、ということです。問題を発生させている部下に対し て断固とした措置を敬遠しているうちに、周囲にもその悪い影響が伝播し、徐々に問題は大きくなってしまいます。そして、もはやリーダー一人では太刀打ち出 来ないほどの大きさになっていることがよくあるのです。リーダーの「これぐらいは目をつぶっておこう」という考えは、優しさでなく自己欺瞞であり、健全な組織が歪んでいく原因の一つになっています。

コラムの結びの中で「こうした事態を引き起こさないためにも、人心掌握力に長け人望のあるリーダーたちは、自分の長所であるそれらが、自らの足を引っ張ることもあると認識すべきである。そして、対人関係重視とは対極にある『人に対して衝突を恐れないこと』も、ビジネスにおいては価値があることを知るべき」と 主張しています。

多くの人達は“頼りがいがあって、愛され、尊敬されるリーダー”になることを望みますが、現実はそう甘くないようです。大手下着メーカー、トリンプ・インターナショナルでかつて代表取締役を務めた吉越浩一郎氏の著書『結果を出すリーダーの条件』には、「愛されるだけの上司は、もういらない」と書かれています。

「部下をはじめ周囲を気にするあまり、仕事の効率化が損なわれていては本末転倒である。リーダーたる者、自らに厳しくし、結果を出すことで部下を統率できるという根本を忘れてはならない」、そして「恐れと配慮を捨てたとき、人は“真のリーダー”になれる」と書かれています。

では、「恐れと配慮」はどのようにすれば捨てられるのでしょう。無謀とも言える数々のチャレンジングな事業を立ち上げてきたヴァージン・グループ会長であるリチャード・ブランソンが語った言葉を最後に、人心掌握について締めくくりたいと思います。

「周囲の評価が怖いのは、自分のプライドが高すぎるからだ。自分の間違いも認められる素直さを持ち合わせた時、周囲へのいらぬ配慮がなくなり、反対だって怖くなくなる」

[ 執筆 ]菊池龍之(株式会社コヨーテ代表取締役)

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