心理学者リチャード・ハックマンが暴くチームワークの真実

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「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー」というアワードがあることはご存知でしょうか?毎年「いいチーム(11/26)の日」に、その年に最もチームワークを発揮し、顕著な実績を残したチームを表彰するアワードです。

2012年度は、一般企業部門から携帯アプリのLINEを手がけた開発チームやスカイツリー開発を手がけたチーム、スポーツ界からはフェンシング男子チームなどが選ばれたそうです。

組織運営において、個人主義・成果主義から、チームワークや組織力の重要性が叫ばれるようになり、チームマネジメントに関する書籍も数多く出版されています。

ただ、世の中のこうした「チーム礼賛」の風潮に対して疑問を呈したのは、社会心理学と組織心理学の権威で、チーム研究の第一人者でもあるハーバード大学心理学部教授のJ.リチャード・ハックマン氏です。

彼は、これまで発表した著書やコラムの中で、世の中で信じられているチームワークに関する定説が真実ではなかったことを暴いてきました。今回は、その中でもとりわけ日本のチームリーダーにも参考になる指摘を抜粋してお伝えします。

『Why Teams Don’t Work』   >>記事元

“メンバー全員が満足しているチームよりも、多少不満を抱えているチームの方が優れた成果を上げる”

ある交響楽団を調査したところ、多少の不満を抱えているオーケストラの演奏の方が、メンバー全員が満足し切っているオーケストラのそれより優れていることが分かりました。ハックマン氏は原因と結果の順序が、一般的に考えられている順序と逆であるために起こることであると指摘しています。つまり、チー ムメンバーたちが生産的で、協力して優れた成果をおさめ、そしてそのことが評価されて、初めて満足感が得られるのであって、その逆ではないのです。

リーダーはメンバーの不満を無くすことが仕事ではありません。メンバーからの不満を恐れず、常に少し高い目標を掲げ、そこに向けて邁進させること。そして、達成感を味わわせることで、より強固なチームワークが構築されるのです。

“リソースの豊富な大きなチームよりも、限られたリソースの小さなチームの方が生産性が高い”

ある調査によると、チームの規模が大きくなればなるほど、管理すべきメンバー間の関係が加速度的に増えることが明らかになり、そしてチームを混乱させるものこそ、メンバー間のマネジメントであるそうです。

ハックマン氏の考察では、チーム人数はせいぜい10人が限界で通常は6名程度のメンバー数を推奨しています。大人数のトップチームがどれだけ素晴らしいメンバーを揃えても機能しないのは、そのメンバー間の調整に手間をとられ、本来のコミットメントが引き出せないためです。

“メンバーを交替せず、同じメンバーで臨んだ方が真のチームワークが築かれる”

アメリカ国家運輸安全委員会の調査によれば、飛行機事故の73%が、乗務員たちが初顔合わせした日に発生しているそうです。彼、彼女らは、経験を通じて最高のチームワークを学ぼうにもその機会がなかったのです。

またアメリカ航空宇宙局(NASA)の調査では、疲れているものの一緒に搭乗した経験のあるチームと、休養はとったものの結成されたばかりのチームを比較すると、前者のミスは後者のそれのほぼ半分だったそうです。

創造性と目新しい視点を失わないために、チームに新しい人材を投入する必要もありますが、そのペースは3、4年に1人という穏やかなものでよく、問題なのはチームの雰囲気が停滞して淀んでしまうことよりも、チームが安定しないことにあるのです。

“異端者がチームのパフォーマンスを高める”

ただ、同じメンバーで構成されたチームにはもちろん気をつけるべき点があります。チームメンバー同士がお互いに気心も知れ、気安くなるため、互いの欠点を受け入れ始め、その結果チームの業績が低下するという点です。

そんな時こそ「異端者」と呼んでいる人たちの出番です。ここで言う異端者とは、同質性を求める余り、創造性と学習を抑圧しかねないチームの傾向にあらがうことで、チームに貢献する人のことです。

ハックマン氏の調査で、何か独自に生み出したチームと何の取り柄もない平均的なチームを詳細に比較したところ、異端者のいるチームの方が異端者のいないチームより高い成果を上げていたそうです。

ただ、こうしたイノベーションの源である異端者は、チームにおいては意思決定を覆したり、流れを変えてしまう存在であるため、チームから煙たがられてしまうことも多いのです。チームリーダーがこの異端者をどのように扱うかで、凡庸なチームに成り下がるか、イノベーションを興すチームになれるかどうかの分かれ道となるでしょう。

最後に、素晴らしいチームリーダーとして評価されているのが、アメリカ大統領のバラク・オバマ氏です。選挙ではライバルだったヒラリー・クリントン氏を国務長官に任命し、前政権で国防長官を務めていたロバート・ゲイツ氏を留任したオバマ氏。明らかに自分と意見の違う異端児を受け入れる度量の大きさと、「自分には知らないことがある」という謙虚さは、見習うべきものがあります。

チームワークの発揮に悩むリーダーの皆さん、今後のチームマネジメントを見直すきっかけにしていただければと思います。

[ 執筆 ]菊池龍之(株式会社コヨーテ代表取締役)

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