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フレームワークはクリエイティビティーを邪魔するか?佐藤尚之さんに聞く
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「フレームワーク」に対して苦手意識を感じているひとは少なくないようです。弊誌が実施したイベントの参加者には、フレームワークを実践的に活用した経験やその有用性を感じたことがあまりない。中には、型にはまった考え方に縛られてしまいそうと避けているひともいました。

はたしてフレームワークとは、私たちが仕事でクリエイティビティーを発揮するのを邪魔するものなのでしょうか。この疑問について「さとなお」さんの愛称でも親しまれ、コミュニケーション・デザイナーとして活躍する株式会社ツナグ代表の佐藤尚之さんにお話をお伺いしました。

株式会社ツナグ 代表 佐藤尚之さん

PROFILE

株式会社ツナグ 代表 佐藤尚之さん
佐藤尚之さん
株式会社ツナグ 代表
電通でCMプランナーやWebプランナー、コミュニケーション・デザイナーなどを経て、2011年に独立して、株式会社ツナグを設立。1995年より個人サイト「www.さとなお.com」を運営。『明日の広告』『明日のコミュニケーション』など著書多数。

不特定多数ではなく特定少数のひとと濃く付き合いたい

ベストセラーとなった著書『明日の広告』やこれまで手がけた数々の広告キャンペーンなどで知られる佐藤尚之さん。「コミュニケーション・デザイン」という分野を開拓した第一人者で、佐藤さんが実施した講座を受けて以来、師事する若いひとも多数います。

そんな佐藤さんに最近携わっているお仕事について尋ねたところ「自分の仕事を一言で言い表すのはとても難しいのです」とのお返事が。たしかに、広告賞の審査員を務める一方で、国際交流基金の非常勤理事にも名を連ねるなど、お仕事も関わるひとも多岐に渡ります。

「強いて共通点を挙げるとすると・・・」そう前置きして返ってきた言葉は、

特定少数のひととより濃く付き合う場を作るということかもしれない。

不特定多数のひとを相手にするイメージのあるマス広告とはまったく異なるものです。

特定少数のひととより濃く付き合うとはどういうことか。実は佐藤さんは、最近オフィスの引っ越しをしたばかり。表参道にあるマンションの一室を改装して仕事場として使っています。しかし、いわゆるオフィスらしい雰囲気や使い方とは異なるユニークな場所です。

佐藤さんはこの場所は「4th(フォース)」と呼んでいます。4番目という意味です。

Family(家族)、Friends(友人)、Workmates(仕事仲間)。それに続く、ともに社会に関与したり、学び合える4番目の関係を作る場にしたい。

という思いが込められています。この新しい “オフィス” では、コミュニケーションデザインを学びたい若いひとたちを集めた講座が開催されたり、夜は近しいひとが集うバーにも様変わりするそう。

佐藤さんが、特定少数のひととより濃く付き合うことに目を向けている背景には、ある時代の変化があります。それは、いまはとても多くの情報が世の中にあふれており、不特定多数のひとになにかを伝え、動かすようなやり方がフィットしにくくなっているということ。

佐藤さんは、いまの状況を「情報 “砂の一粒” 時代」と呼びます。ある調査によると、いま社会に流れている情報量は、地球上のすべての砂浜の砂粒の数(1ゼタバイト)よりもずっと多いとか。こんな膨大な情報量の中で、だれかになにかを伝えるということはほとんど不可能に近い時代らしいのです。

伝わりにくい時代の伝えるためのフレームワーク

特定少数とはいえ、そんな情報 “砂の一粒” 時代に、自分の伝えたい情報を、伝えたい相手に伝えるのは至難の業のはず。佐藤さんはそのために、あるフレームワーク(佐藤さんは「型」と呼びます)を使っています。「ファンベース」という考え方です。

佐藤さんの最新著書『明日のプランニング』に詳しいですが、インターネットを日常的に駆使するイノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティーのひとたちに情報を伝えるためには友人知人や「ファン」と呼ばれるひとたちの存在が重要。

企業などなにか情報を伝えたい側が、

  1. ファンに直接リーチする
  2. 友人知人を介して間接リーチする
  3. ファンを介してほかのファンにオーガニックリーチする

ことによって、特定少数のファンベースを育てることができるのだそう。

佐藤さんは著書で、競馬のファンベースを育てる事例を引き合いに出していますが、2はSNSでシェアされた良質な動画コンテンツなどを、3はファンによる誘いなどポジティブなクチコミなどを指します。たしかにこれならファンにリーチすることができそうです。

中でも3は、相手の態度を変容させるほど強い力を持っているかもしれません。では、ファンを介してほかのファンにオーガニックリーチするためにはどうすれば。佐藤さんはここにおいても、7つの要素で構成される独自の型を編み出しています。

  1. 社員という最強のファンの共感を作る
  2. ファンをもてなし、特別扱いする
  3. 生活者との接点を見直す
  4. 商品自体を見直す。ファンと共創する
  5. ファンを発掘し、活性化し、動員し、追跡する
  6. ファンとともに育つ。ファンを支援する
  7. ファンとビジョンを分かち合う

ファンのおもてなしについては、日本コカ・コーラの事例が紹介されています。同社はコカ・コーラについてツイートを検索し、ツイートしたひとに向けてコメントと画像を一つひとつ作って発信する作業をしているそう。なるほど、これならファンが増えそうです。

コミュニケーション・デザインや広告の分野では、さまざまな有名なキャンペーンのアイデアが光るからか、こうしたフレームワークや型のようなものとは縁遠いイメージがあるかもしれません。しかし、実は佐藤さんもこうした型を活用しているのです。

佐藤さんの著書『明日のプランニング』
佐藤さんの著書『明日のプランニング』

プロと呼ばれるひとはみんな自分の型を持っている

弊誌が以前「フレームワーク」をテーマに約50名の読者を集めて実施したイベントでは、

「フレームワークを実践的に活用した経験が少なく、その有用性を感じたことがあまりない。フレームワークと聞くと、型にはまった考え方に縛られてしまいそうという苦手意識すら抱いてしまう」

という方が決して少なくありませんでした。つまり、フレームワークというものが、仕事でクリエイティビティーを発揮するのを邪魔するものだと思われている節があると感じました。

そうではない、佐藤さんは断言します。

剣道も空手もそうですが、まず型をちゃんと練習します。型を全部やるからこそ、型破りができるのです。しかし、型をやらずに、単なるアイデアから入ろうとするひとが多いように思います。

さらに、それがプロフェッショナルとアマチュアの違いを生むとも。

プロと呼ばれるひとは、常に70点を取らなければなりません。しかし、型がないとそれは難しい。ぼんやりと考えていればよいアイデアは思いつくと思われがちですが、そうではありません。プロと呼ばれるひとは、みなさん自分の型を持っているのです。

佐藤さんいわく、自分なりの型を開発するためには、100も1000も仕事で経験を積まないといけないそう。しかしほとんどのひとにそのような時間ななく、また近しい業界には自分の型をほかのひとに伝えるひとが少ないので、こうして執筆活動などをされているそうです。

佐藤さんが自身のフレームワークについて語った著書は、これで3冊目。

2008年に『明日の広告』を出したときは、自分の言いたいことはもうすべて言ったと思っていました。そう思っていたのに、その次に1冊出して、そして今回もう1冊出すことになりました。本を出すときはそのたびにスッカラカンになったと思っていたけど、そうではありませんでした。

佐藤さんは常に自分のフレームワークをアップデートし続けているのです。

「プロは自分の型を持っている」と佐藤さん
「プロは自分の型を持っている」と佐藤さん

日本の武道や茶道には「守破離(しゅはり)」という言葉があります。師匠に言われた型を「守る」ことから修行が始まり、その型と自分とを照らし合わせてよりよい型を作ることで型を「破り」、自分とそれまでの型を理解するからこそ型から「離れる」。

佐藤さんがされていることは、この「破る」「離れる」そのもの。

自分よりもできるひとが山ほどいることを知っているからです。天才と呼ばれるようなひとは型なんてなくてもいいのかもしれません。私は、型がなくてなにかに取り組むのは怖いことだと思います。

こう、佐藤さんは言います。この謙虚な考え方こそが、フレームワークに対する苦手意識を払拭し、活用できるようになるためのヒントなのかもしれません。

一説によれば、実は経験が豊富なひとほどフレームワークに抵抗感を抱く傾向にあるそうです。気がつかないうちに、自分という型にはまってしまうこともあるのですね。佐藤さんはこう言います。

変化し続けるためには、常に腰を軽くしておかないとね。私は、過去の成功体験をあえて捨てて、次に行くようにしています。

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50人のビジネスパーソンに学ぶ「最高・最低のフレームワークの使い方」
ビジネスフレームワークを伝えるか?それとも・・・ 一緒に考えてみませんか。
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[取材・文] 岡徳之

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