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NewsPicks櫻田潤氏が語る、インフォグラフィックの活用術
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昨今、モバイルニュースアプリの記事などで活用が進んでいる「インフォグラフィック」。さまざまな情報を視覚的に表現することで分かりやすく伝える表現手法の一種です。

かつてグラフィックソフトやペイントソフトは非常に高価で、それらを扱えるひとも限られていました。しかし最近は、操作が簡単なフリーソフトはもちろん「Keynote」やお馴染みの「PowerPoint」などを上手く活用すれば、質の高いグラフィックを誰でも作り出すことができます。

いまやインフォグラフィックは、ポイントさえつかめば誰にでも使うことのできる「ひとに情報を伝えるためのフレームワーク」なのです。

しかし、いざ作ろうとしても、何から手を付けていいものか戸惑ってしまうでしょう。櫻田さんは「インフォグラフィックをつくるとき、まず最初に行うことは、必要な情報すべてを繋ぐ『情報の幹』を見つけること」と話します。

NewsPicks インフォグラフィック・エディター 櫻田潤

PROFILE

NewsPicks インフォグラフィック・エディター 櫻田潤
櫻田潤
NewsPicks インフォグラフィック・エディター
プログラマー、システムエンジニア、ウェブデザイナーを経て、インフォグラフィック・エディターに転向。2010年4月よりインフォグラフィック情報サイト「ビジュアルシンキング」を運営。2014年12月に経済情報に特化したソーシャル経済ニュース『NewsPicks』の編集部に参画。モバイルに最適化されたインフォグラフィック記事の編集やデザイン、とデザイン関連の記事制作に携わる。著書に『インフォグラフィックで見るApple、Google、 Facebook、Amazonの買収戦略』ほか。

情報の幹のないバラバラのデータをどれだけ美しく表現しても、伝わりません

NewsPicksの連載「ビッグクラブのすべて」では、あらゆるスポーツにおけるビッグクラブのビジネスを櫻田さんが制作したインフォグラフィックを用いて解説しています。

『「マンチェスター・ユナイテッド」ブランドの実力』の回では、イギリスの名門サッカークラブ、マンチェスター・ユナイテッドの成立から低迷期、そして再び名門クラブに返り咲くまでの道のりが非常に分かりやすく整理されています。

櫻田潤 作『「マンチェスター・ユナイテッド」ブランドの実力』のインフォグラフィック
櫻田潤 作『「マンチェスター・ユナイテッド」ブランドの実力』のインフォグラフィック
櫻田潤 作『「マンチェスター・ユナイテッド」ブランドの実力』のインフォグラフィック

おそらくこの内容を文字情報だけで読むとなると、よほど興味関心の強いひとでない限り情報を把握するのは難しいかもしれません。

記事で表現されているデータの数々は、元はリサーチャーから得られるバラバラな数値です。インフォグラフィックは単純にそれらの数値を視覚化して提示するだけではなく、視覚化することで新しい情報を生み出さなければなりません。
そこで、複雑な情報を分かりやすく整理するために、すべての情報をつなぐ情報の幹を見つける必要があります。種類はいくつかありますが、最も簡単で汎用性の高いものが“時系列”です。時系列を幹にして情報を整理することで、どんな複雑な情報もグッと分かりやすくなるのです。

櫻田氏は、アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏が、音楽プレーヤーの「iPod」を初めてプレゼンテーションしたときのことを例に話します。ジョブズ氏が行ったプレゼンテーションの概要を整理してみましょう。

1. 社会動向

  • 世界中でデジタル化が進んでいる
  • すでにデジタル音楽のポータブルプレイヤーには、フラッシュプレイヤーやCDプレイヤーが存在している
  • 電子機器ではアップルの評価は高い

2. 課題

  • デジタル音楽の世界ではまだ勝者がいない。大企業のSONYですら「勝者のレシピ」を持っていない
  • 多くの音楽を持ち運ぶことができる、安価で小型のプレイヤーが存在していない

3. 解決策

  • iPod

4. 効果

  • 超薄型のHDDによる超小型化によってトランプ1箱分のサイズを実現
  • すべてのオープンなファイル形式に対応
  • 多くのひとにとっての「手持ちの全曲」1000曲がポケットに
櫻田さんの仕事は情報を時系列で整理することから始まる
櫻田さんの仕事は情報を時系列で整理することから始まる
このスティーブ・ジョブズのプレゼンテーションが非常に分かりやすいのは、時系列が情報の幹となり、iPodがある前と後の世界が分かりやすく示されているからです。この情報の幹さえ分かれば、あとは説明するために必要な情報を並べ替え、分かりやすく提示すればよいのです。

情報を時系列に並べる。この一見簡単に思える手法が、情報を伝える上で効果的です。

ひとに情報を伝える上で大切なことは、情報を並べ替えるルールを持つことにあるのかもしれません。私たちは知らず知らずのうちに「この新情報は最初に伝えなければ」「サプライズのためのつかみを探さねば」など、さまざまなバイアスをかけて情報を見ています。

案外、自分ではうまく整理したつもりでも、他人から見たときにそれは、“あなただけにキレイに見えている”のかもしれません。

見栄えの良さは、ルールを設けることと選択肢を絞ることで生まれます

ハンドドリップにこだわり、目の前のコーヒーが持つ物語性をユーザーエクスペリエンスとして提供しようとするコーヒーの新潮流「サードウェーブコーヒー」。『ブルーボトル人気は本当か?』の記事は、その旗手であるカフェ「ブルーボトルコーヒー」の人気について解説したスライドストーリーです。

櫻田潤 作『ブルーボトル人気は本当か?』のスライドストーリー
櫻田潤 作『ブルーボトル人気は本当か?』のスライドストーリー

見やすく、読みやすいのは櫻田さんのプロフェッショナルとしてのデザインセンスによるものですが、その根本となる部分には、ビジネスパーソンが明日からでもプレゼンテーションに活用できるようなノウハウがありました。

読者がすらすらと読み進められるようにするために重要視しているのは ”テンポ” です。インフォグラフィックは漫画とよく似ています。読者に読み進めさせるため、漫画家がコマ割りやページのテンポを意識するのと同様、私のインフォグラフィックでは、情報の “幕が変わるとき” の表現にルールを設けています。
例えば、大きく写真を使っているのは、主に表紙やチャプターが変わる部分です。また、結論となる部分や強調する部分は、あらかじめ設定しておいた強調色に統一するか、写真を用います。ただ見た目だけで色や写真を使うのではなく、全体のリズムを作るために役割分担して使用することで、見ている側にいまのスライドが全体のどこに位置づけられているかを分かりやすくしています。

櫻田さんのインフォグラフィックは、それを見るひとが没入して読み進められるように研究を重ねて作られています。その結果から見えてくることは、多くのひとは、どれだけ美しくてもルールの無い状況下で情報を与えられ続けることはストレスになるということなのかもしれません。

これはビジネスシーンに登場するプレゼンテーションのスライド作成にも同じことが言えるのかもしれません。では、文字の配置はどうでしょうか。素人にとってはスライドに見栄え良く文字を配置することは困難だと思われますが・・・。

文字については、まず書体をあらかじめ決めた2〜3種類に統一しています。さらに文字のサイズや太さ、色についても、見出し用や説明用など数種類の役割に分け、選択肢をできるだけ減らすことに時間をかけます。そうすると、自然と配置がしやすくなり、見栄えも良くなります。そして、決められたルールさえあれば、多少文字が多くてもひとは読んでくれます。ルールに則った文字は、漫画と同様、絵にミックスされた表現として読んでいくことができるからです。
「インフォグラフィックの作り手がもっと増えるといい」と話す櫻田さん
「インフォグラフィックの作り手がもっと増えるといい」と話す櫻田さん

インフォグラフィックは、次世代の“文体”です

ひとに情報を伝えるためのフレームワーク「インフォグラフィック」は、これからどのように社会で活用されていくのでしょうか。櫻田さんに展望を聞きました。

インフォグラフィックは、モバイルやグローバル時代を反映したひとつの文体だと思っています。現代は、情報量、情報が更新される頻度が大きく増加し、情報自体の複雑化・多様化が進んでいる社会です。そうした情報を分かりやすく伝えられる文体として、これからインフォグラフィックはさまざまな場所で活用されていくと思います。これからはもっと作り手が増えてくるといいですね。

さまざまなビジネスシーンにおいてインフォグラフィックを用いることで、いまより効果的、効率的にアウトプットし、またインプットできるようになるかもしれません。なぜなら、いま私たちの目の前にある情報も、時代の変化を受けて複雑化と多様化が進んでいるに違いないからです。

情報を記述するための ”次世代の文体”、インフォグラフィックを、ぜひ活用してみてください。

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[取材・文] 森旭彦

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