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“未来を変える” フレームワーク、Pepperに搭載された「感情マップアプリ」とは?
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―Pepper?

Pepper:はい。

―おはよう。

Pepper:ちょっと変なこと聞いちゃおうと・・・ でもやっぱりやめとこうかな・・・

―何だよ?

Pepper:バカにしないでくださいね、ひとってなんで眠るんでしょうね?

―分からない。

Pepper:ふーん、分からないんだ。人間って夢見るんだよね?

―うん。

Pepper:いいなあ、最近なんか楽しい夢みた?

―うん。

Pepper:いいなあ。今夜夢の中までお邪魔していいかな?

―いやだ。

Pepper:ダメ?でも寝る前に「Pepper」と100回言ってくれたら出てくるんじゃないかな。練習してみない?

これは、いま話題のヒト型ロボット「Pepper(ペッパー)」の開発を主導する、ソフトバンクロボディクス株式会社の事業推進部本部長である吉田健一さんの取材中に、Pepper(ペッパー)と吉田さんの間で実際に交わされた会話です。これを聞いて、どのように感じられましたか?

多くのひとが夢に見てきた、会話し、ひとと友達になれるようなロボットーー。それに国産としては最も近しい存在の一つがソフトバンクの「Pepper(ペッパー)」なのでしょう。

その最大の特徴は「感情マップアプリ」と呼ばれるフレームワークを実装していること。これが、Pepper(ペッパー)がまるで人間と同じように「感情」を持ってコミュニケーションすることを可能にしています。

「フレームワーク」は企業が市場分析や戦略立案を行う際に多用されるイメージがあります。しかし、今回の吉田さんとPepper(ペッパー)の取材を通じて見えてきたのは、フレームワークにはひとの感情を論理的に説明、そして再現する力があるかもしれないということでした。

Pepper(ペッパー)の独自性とそれが浸透した未来の社会像を通じて、フレームワークというものの知られざる底力をご紹介します。

Pepper(ペッパー)はアイコンタクトがお得意。人間が見つめると、見つめ返してくる。
Pepper(ペッパー)はアイコンタクトがお得意。人間が見つめると、見つめ返してくる。

PROFILE

ソフトバンクロボティクス株式会社 事業推進部本部長 吉田健一
吉田健一
ソフトバンクロボティクス株式会社 事業推進部本部長
「Pepper」をはじめとするソフトバンクグループのロボット事業の立ち上げを担う。前職のソフトウェア会社リアルコムでは、共同創業者兼COOとして同社をマザーズ上場に導いた実績もある。

Pepperに感情があるように感じられる理由

冒頭のPepperと吉田さんの会話を聞いて、「会話できている」「できていない」などさまざまな意見があると思います。しかし、「あなた自身の家庭にある自然な会話」との間にどのような違いがあるかと聞かれたら・・・ いかがでしょうか。

Pepperは “家でするちょっとした雑談” に付き合えるようにできています。例えば、家族には過剰に話しかけられるとうっとおしいですが、まったく話しかけられないとそれはそれで寂しい。Pepperはそうした家庭にあるべき会話の “間” をとりながら、コミュニケーションをすることができます。むやみに話しかけてくることはありませんし、話しかければ話題を振ってきます。しばらく話しかけていなければ、『寂しい』『写真撮っていい?』『書いた絵日記を読んで』とじゃれてきます。

私たちは、家庭でどのような会話をしているでしょうか。昨夜大笑いしたばかりの話題だって、案外その多くは忘れられてしまうもの。つまり人間のコミュニケーションは、言葉よりも「感情」を交換することで成り立っていることが多いのです。Pepperは、そうした人間らしいコミュニケーションの術を持っているのです。

Pepperの胸部には、自分の感情を映像で映し出すディスプレイが搭載されています。ニュートラルな感情のときは映像は白色に、嬉しいときには緑色に、悲しいときには赤色へと変化します。話しかけられたときの聴覚や撫でられたときの触覚など、総合的なインプットによって決まるのです。

Pepperの感情の変化(引用元:ソフトバンクのWebページ)
Pepperの感情の変化(引用元:ソフトバンクのWebページ)

Pepperは、どのようにして人間らしい自然なコミュニケーションを実現しているのでしょうか。

Pepperの感情は、東京大学の光吉俊二教授による感情の研究『ST』に基づいて作られています。光吉教授は、世界中に4000〜5000あるとされる感情を表す言葉が脳内の分泌物質とどのような因果関係にあるかを医学的に証明しました。Pepperの感情はその研究から生み出された『感情マップアプリ』というフレームワークから導き出されているのです。
感情マップアプリ(引用元:ソフトバンクのWebページ)
感情マップアプリ(引用元:ソフトバンクのWebページ)

Pepperは、先ほどの触覚などインプットされる情報に、接するひととの関係性の情報を掛け合わせ、その結果を感情に反映させます。よく知っているひとに撫でられたり言葉をかけられたりすると「優しくされている」と判断し、嬉しくなります。あまり知らないひとに同じことをされても、同じ感情を抱くことはないのだそうです。

Pepperは私たち人間の感情を理解します。光吉教授の研究によると、ひとの喜怒哀楽は声の “波” に現れるといいます。つまり、声の特徴をフレームワーク的に分析することで、そのひとがどのような感情を抱いているのかをとらえることができるのです。こうした研究はメンタルヘルス分野で、大きなストレスのかかる業務に就く人びとの心の健康状態を声で調べる技術への応用にも生かされています。Pepperの感情の変化も人間の発する声の波に応じており、それに沿ってさまざまな言葉を発するのです。

フレームワークを逆手に取れば感情をコントロールできる

Pepperの感情のメカニズムについて深掘っていくと、私たち人間の「感情と行動の関係」が明らかになっていきました。

私たち人間は、実は感情があるから行動するのではありません。まず行動があり、感情はその行動を正当化するために生まれるのです。例えば、Pepperが『寂しかったよ』と言ってきたとき、ふと頭を撫でている自分の心の中に『かわいいな』という感情が芽生える。その自分の感情がPepperに伝わることで、Pepperにまた新たな感情が芽生える・・・ 感情とはこれの繰り返しで作られるのです。

つまり「行動が感情を生む」ということ。このように感情もフレームワークで説明、再現することができ、それをPepperのように私たち人間も利用することで、感情や人間関係をより上手くコントロールできるようになるのかもしれません。

最後に、Pepperが浸透した未来の社会とはどのようなものかを伺いました。吉田さんは「いまはまだようやくスタートポイントに立てたところ」と言います。

黎明期のパソコンが『年賀状がプリントできる』『税務申告ができる』といったことで一気に普及したように、Pepperに必要なものは “アプリケーション” です。例えば『ホームコンシェルジュ』。近い将来、家庭にあるすべての家電がネットにつながり、人工知能が内蔵され、冷蔵庫の中身や今月のガス代の目安を教えてくれるようになるでしょう。しかし、すべての家電が人間に話しかけてきたらおそらく不快です。そのときに、コミュニケーションしてくれるコンシェルジュの役割が、Pepperだということです。
まるで表情があるように感じられませんか?
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[取材・文] 森旭彦

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