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世界的ヒット映画を生み出すピクサー流 良い失敗をするためのノウハウ
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ピクサーは『トイ・ストーリー』『モンスターズ・インク』など、世界的にヒットしたアニメーション映画で知られています。故スティーブ・ジョブズ氏との関わりも深く、同社が初のヒット作「トイ・ストーリー」に恵まれるまでの間、彼が出資し支えていたのです。

ピクサーの作品を、映画館などでご覧になったことのある読者もいるでしょう。ジョブズ氏の先見の明にかなうほどの時代をけん引するコンピューターグラフィックスの技術とストーリーを編み出す力が生み出す作品は、文句なしに感動に値します。

しかしその多くは、映画館で上映される完成品と、製作開始直後の脚本とでは内容は大きく異なり、さらには、製作途中で断念し、お蔵入りした作品もあることを、創業者の一人 エド・キャットムル氏は自著『ピクサー流、創造するちからー小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法』で明かしています。

『ピクサー流、創造するちからー小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法』エド・キャットムル、エイミー・ワラス著、石原薫訳(ダイヤモンド社)
『ピクサー流、創造するちからー小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法』エド・キャットムル、エイミー・ワラス著、石原薫訳(ダイヤモンド社)

「目的」に対して率直に批評してくれるパートナーを見つける

世界屈指のクリエイターが集うピクサーが、その製作過程では多くの「失敗」を繰り返しているという事実は、完成品のクオリティーからして驚きです。では彼らは、いかにしてただの「失敗」を成功に向かうための「良い失敗」にしているのでしょうか。

作品を担当するピクサーの監督は、一人で試写室にこもり、頭を抱えているわけではありません。「ブレイントラスト」と「反省会」という、同僚などチームで失敗と向き合う場を2つ設けています。成功する作品はここで生まれるのです。

「ブレイントラスト」の場には、作品を担当する監督のほかに、他の作品を担当する監督や脚本家、ストーリーの責任者などが集められます。つまり、監督と似たような課題に直面した経験があり、その経験をもとに一歩引いた視点で提案ができるひとたちです。

この場では、まず製作途中のラフな映像が試写され、それに関する批評が交わされますが、参加者にはある重要な姿勢が求められます。それは「率直な会話」をすること。

他人の失敗について発言することに慎重になる理由はいくらでもある、とエド氏はいいます。礼を失したくない、相手の意見を尊重し従いたい、知ったような口を聞きたくない、自分の批評はいいアイデアだろうかーー。しかし「社交辞令」などは決して要りません。

ひとが社交辞令を言ってしまうのは「率直」のベクトルが達成したい「目的」(ピクサーなら傑作を生み出すこと)ではなく「相手」に向かっているとき。自分の目的を理解し、率直に会話してくれるひとこそが、自分を「良い失敗」に導いてくれるパートナーなのです。

「批評を受け取る自分」にもある姿勢が求められます。それは、相手の本音を聞く覚悟。自分の行動やアイデアに対する批評を、自分への攻撃と受け取らないこと。フィードバックの効果的でない部分を捨て去り、効果的な部分をそしゃくして、やり直す能力を持つことです。

「良い失敗」をするためのパートナーシップの要素

「良い失敗」を導く5つのチェックリスト

それでは「率直な会話」をできるパートナーと話すプロセスで、どのような状態に達すれば、より成功に近づく「良い失敗」になったと言えるのでしょうか。これについては、エド氏が自著で挙げたもう1つの場「反省会」の5つの意義が参考になるでしょう。

最初の2つは多くのひとが経験から理解しているものだが、残りの3つはそうでもないかもしれないと同氏は付け加えます。

1.学びを集約できたか

一番多くのことを学ぶのは取り組みの過程であることは間違いありません。しかし、その過程で素晴らしい洞察を得たとしても筋道だっていないことが多いのはたしか。取り組みの過程では不可能だった振り返りを行い、得た学びを忘れてしまう前に集約しましょう。

2.学びを水平展開できたか

取り組みがチームによるものだった場合、自分が苦労して得た経験則をほかのひとに共有したり、あるひとがどのような理屈でその決断に至ったのかをほかのひとが理解したり、検討したりすることは重要です。それは取り組みには参加しなかったひとに対してもです。

3.わだかまりを残していないか

エド氏いわく、失敗の原因の多くは誤解やミス。それが恨みにつながったり、何年も消えずに残る場合もあります。そうした不満を、相手への敬意を失することなく表現し、すっきりして先に進めるよう、気持ちに整理をつけましょう。

4.振り返りの準備をしたか

反省会の準備に費やす時間は、反省会そのものと同じくらい価値があります。反省会が予定されることで自省を強いられます。同氏は反省会を行う価値の9割は、それに至るまでの準備にかかっていると言います。

5.次に解決すべき課題が提起されたか

よい反省会は、そのひと、もしくはチームが次の仕事で向き合うべき適切な課題を与えるもの。それに対する解決策まで期待すべきではありませんが、その課題について自発的に取り組む姿勢を理解できるようになることは大切です。

エド氏は、ひとが失敗を振り返ることを恐れる理由についても語っています。その言葉は、私たちに「良い失敗」をすることの意義を伝えてくれます。

 

ほとんどの人は、プロジェクトの最中に学べることは学んだから、終わったらさっさと次に進みたいと思っている。反省会を、最も賞賛に値するメンバーにもう一度賛辞を贈る場にしようとする。内省するものの、たいていは「成功した、だからこのやり方は正しいに違いない」「失敗した、だからそのやり方は間違っていた」の2つに帰着する。その考え方は短絡的すぎる。失敗を振り返ることを怖がって、次の成功につなげるための絶好のチャンスを逃してはもったいない(一部中略、意訳)

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[文] 赤江龍介

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