ログインして記事ブックマーク、コメント投稿などすべての機能を使う。

close

POINT OF VIEW
企業、個人のキャリアを劇的に変える!注視すべき社会制度変化の威力
POINT OF VIEW

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
BOOK MARK

テクノロジーの進化は、いまの時代のすべてを急速に変化させています。本誌がこれまで深掘りしてきたテーマである、ビジネスパーソンの学習、はたらく軸の選び方、新規事業への取り組み方なども、変化する時代の要素の一つでしょう。

もう一つ、テクノロジーの進化によって現在進行形で変化が起こっており、かつそれが変化することによって、社会にとてつもなく大きなインパクトをもたらすものがあります。それが「社会制度」。つまり、国の法律や地方自治体の条例などです。

社会制度ーー あまりにも話のスケールが大きく、私たちビジネスパーソン個人のキャリアには一見関係のないことにも思えますが、実はそうとは言い切れません。社会制度の変化は、個人のキャリアを大きくドライブさせる追い風にもなり得るのです。

そんな社会制度とキャリアの知られざる関係について、これまでの数多くのベンチャー企業を、官公庁や大企業とのコラボレーション支援を通じて成長させてきた、トーマツベンチャーサポート株式会社の斎藤祐馬さんにお話を伺いました。

トーマツベンチャーサポート株式会社 事業開発部長 斎藤祐馬

PROFILE

トーマツベンチャーサポート株式会社 事業開発部長 斎藤祐馬
斎藤祐馬
トーマツベンチャーサポート株式会社 事業開発部長
1983年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。2006年公認会計士試験合格、監査法人トーマツ入社。2010年より社内ベンチャーとしてトーマツベンチャーサポート株式会社の事業を立ち上げ、3年半で全国23の活動拠点・150名体制への拡大に成功する。ベンチャー企業の成長支援を中心に、大企業の新規事業創出支援、ベンチャー政策の立案に至るまで幅広く手掛けている。

新規事業において、社会制度と距離を置くのは機会損失を招く

斎藤さんは、こうして業界は多岐にわたる数多くのベンチャーを支援してきた過程で、社会制度の変化が企業のビジネス、そして個人のキャリアに与える前向きなインパクトの大きさを身を持って感じてきたといいます。

例えば、昨年(2014年)10月の「官公需法改正」。これは、主に創業10年未満の中小企業が、官公需に基づく契約の発注先として優先されるようになるもの。

年間20兆円規模あるといわれる官公庁から民間企業への業務発注のうち、現在は1%が創業10年未満の中小企業を対象としたものですが、これを3年で倍増させようとしています。つまり、2000億円の市場が4000億円になるということ。中小企業やそこで働くひとたちにとっては、大きなビジネスチャンスです。

官公庁から業務の発注を受けたことがあるという実績が、その後の大企業に対する営業活動においても効力を発揮し、企業の大きな成長を後押しします。ですから、社会制度の変化というものに対して漠然と距離を置くのは、機会損失を招くおそれがあるのだそうです。

これから激変する領域は「電力」と「インバウンド」

今後、社会制度の変化による大きなインパクトがもたらされるであろう領域として、斎藤さんは「電力」と「インバウンド(訪日外国人旅行)」の2つを挙げます。

まずは、電力。斎藤さんいわく、電気事業法が改正され、来年から家庭などで作られた電力をほかの家庭などに対して売ることができるように小売が自由化されることで、電力業界への新規参入者が増え市場が活性化するだろうとのこと。

電力市場は推計20兆円と非常に大きいため、その市場の0.5〜1%でもシェアを取れれば非常に大きな事業になります。

すでにある異業種のベンチャーや起業家など個人でも、よいアイデアさえあれば十分に入り込める余地はあります。

続いて、インバウンド。最近の円安や2020年に開催予定の東京オリンピック・パラリンピックに向けた取り組みが訪日外国人旅行者の増加を後押しし、観光庁が目標として掲げる2014年時点で約1300万人という数字を2020年に2000万人にまで引き上げるという目標は確実に達成されると見られます。

訪日外国人旅行客の急増に対して追いついていないのが、宿泊施設の供給。そこで注目を集めているのが「AirBnB」などのいわゆるバケーションレンタルサービスですが、既存の旅館業法により国内のサービス提供は難しい状況にあります。

しかし、

オリンピックという一時的な需要増のために新しくホテルを作るというのは非現実的。であれば、空き部屋を効率的に活用できるようにするような社会制度の変化は必要だし、起こりうる。

と、斎藤さんは見ています。

さらに、このことは旅行業界以外で働くひとにとっても要注目。なぜなら、部屋に宿泊する外国人への英語対応や部屋の清掃、クリーニングの代行など、周辺には異業種のノウハウを生かせるスキマがこれからますます生まれていくからなのです。

オリンピック特需は、建設業界の制度変化にも影響を及ぼすかもしれないと斎藤さんはいいます。ホテルなど施設の建設に必要な人材や資材を効率的に調達するための手段に対する需要が高まり、既存の制度がそれの弊害となるおそれがあるからです。

社会制度が変わるのを待っていては遅い

企業で働くビジネスパーソンがこうした社会制度に目を向けることのメリットは、事業の成長だけではありません。斎藤さんは個人のキャリアを考える上で必要な新たな視点をもたらしてくれるといいます。

法律や条例など社会制度の変更、それと隣り合わせにある政府予算の概算要求などの動向を注視すると、今後3年間ぐらいの世の中の流れが見えてきます。官僚のひとが、この国をこれからどのような方向に持って行こうとしているのかがそこに表れるからです。

一方で、起業などなにか仕掛けたいビジネスパーソンにとっては、

社会制度が変わるのを待っていては遅い。社会の非効率を解決するなど、なにか大きなことを成し遂げたいなら、既存の制度を変化させるよう働きかけていかなくては。

とも。時代が変化するスピードがとても速い現代においては、制度が変わったときに動き始めても、そのときにはすでに自分と同じことを考えているひとは大勢おり、しかもその一部は制度を変化させるために働きかけてきたひとたちなので、スピードダッシュで負けてしまいます。

そこで斎藤さんがなにかを仕掛けたいビジネスパーソンに提案するのが、既存の制度を度外視にして、解決したい社会の課題に取り組み、実績を積み重ねるということ。実績を積み重ねる過程で、必要な制度変化を左右するキーマンと巡り会えたり、説得材料になるからです。

また、これは少しハードルが高いですが、日本の制度を変えられないなら、海外で事業に挑戦してみること。斎藤さんいわく、日本にはどうしても新しいものが育ちにくい土壌があるそう。であれば、海外での実績や実態に即して制度を変えていくのも手とのこと。

そして、最後に「社会制度は変えられないものだと思い込まないこと」も大切だといいます。

世界でイノベーションを起こしている企業やひとたちは、既存の制度が自分たちのビジネスの障壁になったとしてもたくましくやり続けた。だからこそ、いまの姿があります。社会制度というものは、あくまで一時点におけるルールに過ぎません。普遍的に正しいものでは決してないのです。

【 本記事の読者にはこちらもお薦めです 】
経験者たちが語る〜社内政治に頼らず事業開発を成功させる9つのコツ
新規事業に取り組むことが必須のいま、個人に求められる力とは?

[取材・文] 岡徳之

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
BOOK MARK

いいね!していただくと
最新記事をお届けします。

コメントを送る

関連する記事

連載一覧を見る

タグ

タグ一覧を見る