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「転職」を考える上で見逃せない最新の観点について

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1,000万回近く再生されたハーバード大学医学部臨床教授のTED動画「What makes a good life? Lessons from the longest study on happiness(邦訳:史上最長の研究が明かす幸福な人生の秘密)」では、1938年から継続されている大規模な調査結果として、

人の幸福度・健康度は、近しい人との人間関係でほぼ決まる。

と述べられ、大きな反響を呼びました。

同様に、MITメディアラボ教授のアレックス・ペントランド教授は、著書『HonestSignal(邦題:正直シグナル)』の中で、人と人が健全な関係でコミュニケーションを行う関係性そのものが、人という生き物にとって幸福を大きく左右する点であることを指摘しています。

本記事では、最近注目を集めている「人間の幸福は、周囲の関係性によって決まる」という観点を踏まえつつ、日常の仕事・人間関係が大きく変化する「転職」という行動について、40人のビジネスパーソンと議論した内容をご紹介します。

「転職」を「周囲の人との関係性」という観点で捉え直すと、はたしてどのような示唆があるのか? ぜひご覧ください。

本日のアウトラインです。

INDEX読了時間:5

それでは、本文です。

昔からマネジメントの領域で知られていた「関係性」と「結果」の関係

職場における人間関係、メンバー同士のコミュニケーションの質は、MITのダニエル・キム氏が提唱する「成功循環モデル」の中で事業成果を生み出す上で不可欠な要素として確立され、多くのマネジメントの場面であつかわれてきました。

昔からマネジメントの領域で知られていた「関係性」と「結果」の関係

このモデルですが、

  • 「関係の質」:仕事上のメンバー同士が、どれだけオープンに密な関係をもっているか?
  • 「思考の質」:メンバー同士が、個別の意見を出し合い、レベルの高い議論・検討を行っているか?
  • 「行動の質」:各人が、どれだけ自分自身でコミットし、踏み込み深く行動しているか?
  • 「結果の質」:売上や営業獲得など、どれだけ最終成果を獲得しているか?

という要素の関係を示しています。

具体的には、「売上を上げろ!(結果の質)」と命令しても、人は動けるわけではなく、そのためには「売上につながる行動(行動の質)」が必要となる。

「じゃあ、売上につながる行動をしろ!」と命令しても、すぐにそうした行動が決まるわけではなく、そのためには「効果的な行動を考えていること(思考の質)」が必要となる。

「だったら、いい行動をがんばって考えろ!」と言っても、今度はそうした考えをもたらすための、個人個人の独立した意見の表明と、その議論をオープンかつ効果的に行えるような関係性(関係の質)が必要となる。

つまり、「成果を上げたかったら、まずマネジャーとメンバーは、お互いの関係性を改善するところから始めることが必要だ」というのが、このモデルが元々使われる主な理由でした。

「売上が上がり、成果が出る(結果の質)」ことで、「お互いにその成果達成によって士気が上がり、さらに関係がよくなる(関係の質)」というのが、この循環の、循環たるポイントとなります。

実は個人にとっては「関係の質」こそが最終ゴールになる?

冒頭のハーバードの研究や、ペントランド氏の指摘にあるように、最近の傾向として、個人の幸福度の尺度は給与や社会的成功ではなく、人と人の関係性にあるという風潮が高まってきました。

これと先ほどの成功循環をあわせて考えると、下の図のように捉え直すことできるのではないかという指摘が、『“未来を変える” プロジェクト』のコミュニティの議論で取り上げられてきました。

実は個人にとっては「関係の質」こそが最終ゴールになる?

企業の観点からすると、結果をもたらし、売上を上げることが目的化されることが多い一方で、個人の観点としては、この「結果の質(売上・利益など)」を創り上げ、稼ぎを生み出すという大義・名分・きっかけがあることで、自分だけでなく他の人と協調する機会が生み出される。成功循環が回り続けることで、その企業が存続・成長し、個人としては同僚や関係者との「関係性」を享受し続けることができ、それが結局、幸福感につながる。

こうした捉え方です。

「転職」と「関係の質」のケースその1:職場の人間関係の悪化

以上の内容を踏まえた上で、2016年4月に「これからの転職とは?」という切り口で転職経験者と未経験者が半々で参加した“未来を変える” プロジェクトの議論イベントでは、以下のような観点が出てきました。

まず、多くの場合、転職のきっかけになるのは、職場内の人間関係のもつれや問題の発生によるものであるという点です。転職理由を尋ねたアンケートなどには表出しづらいものの、実際に転職相談を受けるDODAのキャリアアドバイザーは、

転職希望の方とのカウンセリングでヒアリングを重ねていくと、多くの場合、転職を考え始めるきっかけは、現在の職場における人間関係の悪化に行き着きつきます。カウンセリングの最初は給与や評価、労働時間への不満を訴えますが、深掘りしていくと自身の声に耳を傾けてくれない上司、理解してくれない同僚など人間関係に当たります。問題は、ここをご自身でも認識されていないケースがあるということです。

と指摘しています。

例えば、企業の規模が大きく他部署に異動させられ、上司と部下の関係が悪化し修復不能になった後でも、同じ企業にとどまり関係を解消できる場合は、ある程度この状況は改善可能です。しかし、多くの企業ではそれは難しく、人間関係が悪化し、短期・中期での回復が見込めない場合、転職のトリガーとなります。

転職理由は後からこじつけるけど、きっかけは「その人を尊敬できない」と感じた一つの些細なインシデント(出来事)。引っこ抜かれるときも、結構、人間関係の質を天秤にかけているかも。結局はどこでも、パートナーが良ければ楽しいシゴトは自分次第でできるような気もしてきます(40代・女性・金融)
「転職」と「関係の質」のケースその1:職場の人間関係の悪化

ここではまさに、日々の幸福度を押し下げてしまう「悪化してしまった関係性」が、はたらく人に転職を大きく促すこととなっています。

「転職」と「関係の質」のケースその2:行動内容が硬直化している場合

どのように仕事を進めるのか、どうやって業務を組み立てていくのか、こうした点に踏み込みが乏しかったり、組織内の議論する場が実質的に乏しい場合、成功循環は下の図のような状況になってしまいます。

「転職」と「関係の質」のケースその2:行動内容が硬直化している場合

このような状況の場合、たまたま外部要因が追い風になっており、業績が伸びるときには関係性も良くなり、メンバーからすると幸福感を感じることができます。反面、外部環境が悪化していくと、同じ行動を繰り返すばかり(あるいは、その頻度を高めるばかり)で、無力にも関係が悪化し、幸福感が低下していきます。

このように、思考と行動が分断されている場合、自分たちの幸福度は外部要因によって左右される不安定なものとなってしまい、「自分たちでどうしようもない要因」に一喜一憂する状況に組織が陥ってしまいます。

こうした中、外部環境が一時的であれ悪化したとき、人と人の関係性が低下し、幸福度が一定以上低下したメンバーは、その環境から離脱するために転職を考えるようになります。

行動内容の硬直化は、「できあがった」組織ほど起こりがちなんじゃないかと思いますが、これを打破するのってトップダウンじゃないと難しいのかなと感じました。なので、ボスにその意識や視点、自覚がないと悲惨なことになりますね。部下が言っても「つべこべ言わずにやれ」「うんうん、わかるよ。でも俺もどうしようもないんだよ」的な対応で解決にいたらずと言いますか・・・(30代・男性・銀行)

「転職」と「関係の質」のケースその3:社外の循環に軸足が移る場合

自分の仕事の大半において社内ではなく社外の関係者と深く接し、そこでチームを組むようなプロジェクトは近年増加傾向にあります。例えば、ある新しい製品を作る場合、企画と資金管理は自分が担当し、そのデザインやマーケティングはそれぞれ外部の専門家が、設計・製造は外部の工場が行うといった場合、自社から参加しているのは自分だけといったこともざらにあります。

この場合、プロジェクトが円滑に動いた場合、成功循環が下記のような関係になることもあります。

「転職」と「関係の質」のケースその3:社外の循環に軸足が移る場合

社外での営みがメインとなり、それによって会社からの評価は達成する。ただし、仕事上の「関係の質」が、社外が中心で回るほど、社内との関係の質は相対的に希薄になり、次の営みを行っていく場合も社内で成功循環が回る割合が低くなる。

こうした中、ちょっとした社内での情報共有の欠落や、短期的な業績、結果の質の悪化が発生すると、社内との関係性が急速に悪化し、「それであればもはや社外に活躍の場を移そう」ということで、転職にいたる場合がこのケースです。

逆に、「上手くいく転職」について、こんな意見もありました。

「リファラルリクルーティング」という言葉がバズワードになってきているのは、そうした背景なのかもしれません。元々あった信頼関係をそのまま組織にもち込んでもらうと、関係の質が最初から高いところからスタートできるので、組織開発的にもリファラルで採用するといいですね(曽和利光氏・人材研究所代表)

また、大企業側の制度に関して、以下のような指摘もありました。

私のまわりを見ても、仕事上のプロジェクトだけでなく、課外活動などを通して社外との関係性が社内より強くなった結果、転職したのではと思う人が複数名思い当たります。大企業的には頭の痛い話かもしれませんが、社内にオープンイノベーションの制度や施設を作ったりすることで、個人の関係性を社内に還元しやすくするといいのかもしれませんね。この辺の制度設計は、副業とセットで検討されるべきかもと思いました(30代・男性・元大手自動車メーカー/現iスクール)

一般的な「転職」理由アンケートの結果との関係

以上のように議論を行っていくと、「転職」のきっかけは、この「成功循環モデル」を使って捉えられるという意見が大勢を占めていきました。

転職理由の経年変化(半年ごと)

上記はDODAによる調査(2015年10月〜2016年3月実施、有効回答数33,532件)で、転職者の転職理由の主なものをまとめていますが、これらのデータで多く挙げられる、

  • 給与・金銭面
  • 個人の能力発揮・自己実現の機会
  • 先行きの見通し不安

といった内容は、先ほどから論点になっている「関係の質」が低下したときに、これらの各要素への懸念や希望が具体化し、それによって転職につながるのではないかという会場からの意見がありました。

一般的に、こうした調査で明らかになるのは「転職」の出口側を決めたときの要因であり、それを考えるにいたる「転職」の入口側においては、「関係の質」を抜きに語れないのかもしれません。

自分自身の「関係の質」を判定する観点

さて、そうした意味で自分自身、あるいは自分が抱えるチームの「関係の質」を明らかにするために、以下の質問に対してYes/Noで考えてみることがコンディションを把握する切り口になります。

  • 根拠やデータが明確でなくとも、仕事上で気になったことなどを気軽に周囲に共有・相談できるか?
  • 会議や業務上のやりとりで発言が無視されたり流されたりせず、しっかりとお互いに受け止めているか?
  • お互いの職位や肩書、上司部下の間、あるいは声の大きさなどで偏りが生じることなく、フラットに意見を出し合っているか?
  • わかりづらい発言や意見について黙殺されたりスルーされたりせず、聞き返したり内容を確認したりしているか?
  • お互いに同僚の現在の心理状態・好調不調について興味・関心を持ち、声を掛け合っているか?

これら5つのうち、2つ以上にNoがつくようであれば、「関係の質」が揺らいでいる可能性があります。判定に関しては、以下のような指摘もありました。

最後の判定Questionは、見方を変えれば「部下が転職を考えるような不安感を感じさせないように組織をメンテナンスしていくマネジャーとしての診断基準」となりうるものだと思いました(40代・男性・流通グループ企業)

いかがでしたか? 「転職」というテーマについて、普段とは異なる「関係の質」と照らし合わせると、自分自身のキャリアにとって新しい発見があるかもしれません。

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[編集・構成] “未来を変える”プロジェクト 編集部

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