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大企業が見落としがちな、変革のチカラとは

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『“未来を変える” プロジェクト』では、記事の制作段階でさまざまな方と議論し、フィードバックをいただきながら制作しています。企業の出向制度を使って人材を他社のプロジェクトに参加させるためのプラットフォーム「LoanDEAL」を運営する、株式会社ローンディールの代表、原田未来さんに「組織の変革に必要なこと」について寄稿していただきました。

PROFILE

株式会社ローンディール 代表取締役 原田未来
原田未来
株式会社ローンディール 代表取締役
出向制度を活用して人材が他社のプロジェクトに参加できる仕組み、「企業間レンタル移籍プラットフォーム LoanDEAL」を展開。大企業からベンチャー企業への出向などを通じて、日本的な人材の流動化の創出に取り組んでいる。
今の会社を辞めたいわけじゃないけど、自分が他社でどこまで通用するのか試してみたい。

転職経験のない人であれば、一度はそんなふうに思ったことがあるかもしれない。

在職年数が長くなればそれなりに仕事を「こなせる」ようになり、組織への愛着は深くなる。しかし、自分が身につけた能力が他社に行っても通用するものなのかを測る物差しはなく、在籍期間が長くなるにつれて社内で新しい知識や経験を獲得する機会は減っていく。

終身雇用制の崩壊やテクノロジーによる労働力の代替が現実のものとなりつつある今、転職願望のあるなしにかかわらず、個人が自分の市場価値や強みを把握しておきたいと考えるのは至極当然のことだ。

その結果として、副業禁止規定の是非が議論を呼び、平日夜や土日を使ってベンチャー企業やNPOの仕事を手伝う人が増えていることなどからも判るように、個人のキャリア志向が企業の内側から外側へと変化しつつある。

一方で、企業が必要とする人材の質にも変化が起きている。従来であれば、会社の価値観を理解し、社内のルールを知り、既存事業を管理してくれる人材こそが重要だった。だが、一つの事業が安定して収益を上げ続けることのできる期間は短くなり、企業はイノベーションを起こせる人材を求めるようになった。

そして、社内にはそれに適した人材がいないという課題に直面している。そのような背景から、中途採用の強化やオープンイノベーションの促進によってこの状況を打開しようとしている。

個人は能力発揮の機会を社外に求め、企業は自社の創造や変革を外の人材に求める。果たして、これは健全な状態だろうか?

企業は新卒採用で優秀な人材の確保に躍起になっているにもかかわらず、せっかく入社した人材は組織内の同質化の圧力によって個性を見失ってしまう。このような状況では、企業が内なるチカラを十分に活用できていないと言わざるを得ない。企業が個人の持っている個性を引き出すことができれば、イノベーション人材の不足という課題は解決されるはずだ。

まず考えるべきは転職経験がなく、一つの会社でキャリアを積み重ねてきた人材だ。一つの会社しか経験していない人材の個性を再び呼び覚まし、創造性を発揮させることだ。

そこで注目したいのは、人材の持っている「関連づける力」である。これは『イノベーションのジレンマ』の著書で知られるクレイトン・クリステンセンが、『イノベーションのDNA』においてイノベーションを起こすために必要な能力として提唱しているものだ。

イノベーターは産業・企業・職業・学問などのあらゆる境界を越えて関連づけを行うことで型破りな組み合わせをつくり、それがイノベーティブなビジネスアイデアを促すのだ、と。

そして、特定の専門分野に深く精通している人は、その知識をなじみのない新しい概念やアイデアと組み合わせることができるため創造性が高い傾向にある、と指摘している。つまり、特定の分野に精通しつつ、新しいものと関連づけることが重要なのだ。

この点において、転職経験のない人材はその企業が属する業界や職種といったものに精通する可能性が高い。にもかかわらず、イノベーティブなアイデアが出てこないのは、境界を越えた関連づけがなされていないことに起因していると考えられる。転職経験のない人材の環境が閉鎖的で、境界を越えた情報のインプットが乏しいのだ。

この状況を打破するために、企業は自社に精通した人材に対して積極的に境界を越えることを促進すべきではないだろうか。

具体的な手法として、国内外のNPOとともに社会課題の解決に取り組むプログラムや、出向制度を活用して他社のプロジェクトに参加させる仕組みなどが挙げられる。CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の立ち上げやアクセラレーションプログラムを通じて、社内の人材を積極的にベンチャー企業とかかわらせる取り組みも有効だろう。

いずれにせよ、自社の枠を超えて新しい機会を提供し、外部との関連づけを促すことが必要なのだ。特定の分野に精通した人材が豊富ということを強みと捉えなおせば、組織の内側からイノベーションを起こせる可能性は十分にある。

翻って個人にとって。SNSが浸透した今、外の世界と接点を作る方法はいくらでもある。例えば、ベンチャー企業のピッチイベントや業種・業界を超えた勉強会などはいたるところで頻繁に開催されており、そういったイベントに顔を出してみるのも一つの手だろう。このように外に目を向けて接点を設けていれば、「他社でどこまで通用するか」を試す機会は比較的容易に獲得することができる。

ただ、その際に推奨したいことがある。

それは、社外から得た情報や経験を単に個人の経験として本業と分断するのではなく、関連づけて思考することだ。新しいテクノロジー、ベンチャー企業が見いだしている事業機会や課題、他業界の事例などの社外での経験を、自社と関連づけて考える。

そのような思考を通じて、自社が持っている強みや経営資源に気づくことができる。特定の分野に精通していることを活かしてこそ、境界を越えた情報のインプットが有効なのであり、今ここにあるチカラをいかに活用するかを意識することで、創造性が発揮できるはずだ。

以上に見てきたように、企業が人材に外の世界を見る機会を提供し、個人が自社と関連づけて思考する機会が増えれば、組織の創造性を高めることが可能なのだ。

変革に必要なのは、内なるチカラである。

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