優れた志望動機とダメな志望動機のちがいとは?

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今回は月間150万PVを超える「仕事・マネジメント」をテーマにした人気ブログ「Books&Apps」を運営する安達裕哉さんに、「優れた志望動機とダメな志望動機のちがい」について寄稿していただきました。

PROFILE

ティネクト株式会社 代表取締役 安達裕哉
安達裕哉
ティネクト株式会社 代表取締役
1975年、東京都生まれ。Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。大企業、中小企業あわせて1000社以上に訪問し、8000人以上のビジネスパーソンとともに仕事をする。現在はコンサルティング活動を行う傍らで、仕事、マネジメントに関するメディア『Books&Apps』を運営し、月間PV数は150万を超える

新卒、中途問わず、面接官としてさまざまな「志望動機」を聞いてきた。なぜうちの会社に入りたいのか、なぜこの仕事がしたいのか、企業は入社志望の方にかならずそれを聞く。すると、多くの場合、こんな回答がある。

  • ◯◯という市況を見て、御社の将来性に魅力を・・・
  • 中高時代からモノづくりに憧れていました。ですから・・・
  • 父が◯◯の仕事をしているのを見て・・・
  • 今まで◯◯の仕事をしてきましたが、やれる業務の幅を広げたいと思い・・・

上のような「志望動機例」はWeb上で「望ましい」とされているような事例である。

しかし、少し考えてみれば、上のような志望動機を言っているようでは、まず意中の企業に入社できないことはすぐ分かる。なぜなら、それは「普通」だからだ。

面接官は実際、こういった回答を聞くたびに、「ああ、この人はダメだな」と失望する。「テンプレ的回答」はそれだけで応募者に対する興味を失わせるからだ。それは何度も聞いた普通の話であり、「平凡な人」の証でもある。

一方で、当たり前の話だが、「良い企業」は平凡な人を求めてはいない。特に高度な知識をあつかい、収益性が高く、ネームバリューのある企業は「優れた頭脳を持つ人」が欲しいのである。「平凡な人」は会社にとって資産どころか大きな負債となりえるため、各社とも採用には慎重だ。

例えば、Googleは創業時、優れた頭脳を持つ人材を採用するため、「数万人に一人」しか採用していなかったと言われる。その後、紹介採用に力を入れたときですら、社員の紹介であってもその確率は5%を下回っていた(出典:『ワーク・ルールズ!』東洋経済新報社)。

待遇の良い会社は、「狭き門」である。このように言うと、「志望動機だけで判断しないでほしい」と言う方がいるかもしれない。「もっと人の中身を見てほしい」と言う方もいるだろう。

しかし、もっと話をしたとしても、おそらく面接官の判断は変わらないだろう。「どの会社でも聞かれると分かっている質問」に対して、このような平凡な回答を返している時点で、ほとんどの面接官は「平凡な頭脳の持ち主である」と認識するからだ。

本質的に面接官は「志望動機」の内容が知りたいわけではない。「志望動機」という重要性の高い質問に対して、どのように回答するかで次のようなことを総合的に見ている。

  • 自分の考えを適切に表現できるか(プレゼンテーション力)
  • 面白い話ができる人物か(ユーモアのセンス)
  • どの程度こちらの業界のことを調べているか(調査・分析力)
  • 話の筋が通っているか(論理的思考力)
  • 説得力がある話ができるか(コミュニケーション力、交渉力)

彼らはいわば、「志望動機のメタ情報」を見ているのだ。

逆に言えば多くの応募者にとって「志望動機」こそ、アピールの最大のチャンスであるということ。他の応募者が何も考えず、平凡な志望動機を言っている中、自分だけがキラリと光る志望動機を作れたことこそ能力の証なのだ。

では、どのような志望動機が望ましいのか。「テンプレ的回答」は望ましくないため、ここで「志望動機に必須の5つのこと」などと言ったノウハウをお伝えすることに意味は無い。むしろ害だ。自分で頭を捻って考えるべきである。

とはいえ、何も手がかりがなければイメージが湧かないと思うので、少し事例に触れたいと思う。

その会社は「Webサービス」の提供会社で、人数は7〜80名程度。顧客企業が増え、経営がだいぶ安定してきたため、これからマーケティング予算を大きく取り、自社をアピールしていく方針を取っている。

「◯◯サービスが業務拡大中につき、Webマーケティング担当者を募集」といった趣旨で、募集をかけたところ、Webサービスの知名度もあってそれなりの人数が集まった。そして、採用は狭き門ではあったが、驚くべきことに実際に採用されたうちの一人は「Webマーケティング未経験」だった。

面接を担当した部長は「当初、未経験者を採用するつもりはなかったが、面接で大変面白い経験ができたので採用した」と言います。彼はいったい、何をアピールしたのだろう。

面接官である部長が志望動機を聞くと、彼は「まず、志望動機はいくつかありまして・・・」と言った。「一つ目は、当たり障りのない動機です。二つ目は個人的な動機、三つ目は・・・ もしかしたら不快に思うかもしれません。どれからお聞きになりたいですか?」。

部長はこの時点で、「他とはちがう応募者が来たな」と思ったそう。実際、応募者だった彼も面接官を試していたとのことで、「ある程度変わった人を許容できる会社じゃないとダメだと思いましたから」と言っていた。

ともあれ、部長は苦笑しながらも、「では、個人的な動機から聞きましょう」と言うと彼は、

「簡単です。『貴社がとても面白そうなことをしている』と思ったからです。開発者向けのブログの◯◯さんの記事が良かった。こう言う人のいる会社ではたらきたいと思いました。結局会社って、だれとはたらくかだと思っていますので」。

「そういう人だけじゃないかもしれませんよ」と部長が聞くと、「でも◯◯さんって、肩書きを見ると上の方ですよね? そういった方が評価されている組織なら安心です」と彼は言う。

「『不快に思うかもしれません』という動機は?」と部長が続けて聞くと彼は、「入りたい会社の中で、給料が良かったからです。正直、同じ水準の企業が他にもないのかと言われればそうではないですが」と、悪びれもせず言いました。

「当たり障りのない動機は?」と部長が最後に聞くと、彼は「私、未経験なので逆になんでもやれます。皆が嫌がることでもこだわりがないので。未経験と言っても営業は真剣にやってきたので、お客さんの気持ちを読むのは得意ですが。精一杯はたらきます」。

「未経験は不利だけど、どうやって知識をつける?」

と、話は大変盛り上がった。「テンプレ的回答」をする人物よりも、未経験でもよほど魅力的な人物に見えるのではないだろうか。

本質的にはもちろん、「志望動機」だけでは採用の可否を判断できない。しかし、話の「つかみ」としては十分だ。

このように、「優れた志望動機」は、その人の人間性や、知力、コミュニケーション力のすべてが表れるもの。テンプレ的回答をして「ダメな志望動機」をアピールしてしまうのは、本当にもったいない。

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