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キャリアにおける真の後悔とは?

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『“未来を変える” プロジェクト』では、記事の制作段階でさまざまな方と議論し、フィードバックをいただきながら制作しています。今回は月間150万PVを超える「仕事・マネジメント」をテーマにした人気ブログ「Books&Apps」を運営する安達裕哉さんに「キャリアにおける真の後悔」をテーマに寄稿していただきました。

PROFILE

ティネクト株式会社 代表取締役 安達裕哉
安達裕哉
ティネクト株式会社 代表取締役
1975年、東京都生まれ。Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。大企業、中小企業あわせて1000社以上に訪問し、8000人以上のビジネスパーソンとともに仕事をする。現在はコンサルティング活動を行う傍らで、仕事、マネジメントに関するメディア『Books&Apps』を運営し、月間PV数は150万を超える。

「後悔したくない」という感情は、人間にとって最も強い感情の一つである。しかし、50代を過ぎてキャリアの終盤を迎えると、いくつかの「後悔」を抱えるようになる人は多い。では、皆どんな後悔をしているのだろうかーー。

よく言われる話は「チャレンジしなかった」や「新しいことを始めなかった」といった話である。人間は「やったことによる後悔」よりも「やらなかったことによる後悔」が大きいという格言めいたものが数多く残っているからだろう。

だが、実際のところはどうなのだろうか? 認知心理学者のダニエル・カーネマンは、「実際にやってしまったこととは違う行動をとっている自分を容易に想像できる場合ほど、後悔は深まる」と述べている(*1)。

彼は実験によって、行動して生み出された結果に対しては、行動せずに同じ結果になった場合よりも、強い感情反応が生まれることを確かめた。

カーネマンはこうも述べる。「実はここで重要なのは、行動するかしないかの違いではない。(中略)デフォルトから離れた行動をとって悪い結果が出た場合には、ひどく苦痛を味わうことになる」

つまり、「会社員を辞めて、起業にチャレンジして失敗した場合の後悔はかなり大きい」ということができるだろう。これは、先ほどの格言とは逆の結果だ。実験結果は、「やらなかった後悔」よりも「やってしまった後悔」のほうが大きいことを示しているのだ。

したがって、「キャリアにおける真の後悔」とは「チャレンジしなかった」ことではない。「積極的に間違った選択をしてしまうこと」が、最も後悔につながりやすいのだ。

これは私の聞いた話とも一致する。実は、50代以上のビジネスパーソンの「仕事における後悔」で意外に多数の方が答えたのは、「チャレンジを断ったこと」だった。

昇進のチャンス、海外赴任、転勤、異動、新規事業プロジェクトへの招待・・・ そして上司や部下との人間関係などだ。そのまま行けば「受け入れることになったであろう出来事、人との出会い」を自分から断ってしまったり、関係を絶ってしまったりしたことが、大きな後悔につながっている。換言すれば、「問題や現実から逃げ出したこと」がビジネスパーソンにとって、真に大きな後悔となっている。

中には、次のように言う人もいた。「同僚や上司について、相手の言うことを頭から拒否せず、もう少しわかり合えたはず」「与えられた仕事を、きちんとこなせばよかった」「自分のやり方に固執せず、上司の言ったとおりにやってみればよかった」。要するに、キャリアにおける真の後悔とは「食わず嫌い」によるものなのだ。

つい先日、昔の会社の仲間と出会ったとき、その人物は転職をひどく後悔していた。

「なんで転職なんかしてしまったのか。私、すごく後悔しているんです。あのとき踏ん張って、結果が出るまで仕事を頑張ればよかったって」

「そういえば、いつも『この仕事は自分には合わない』って言ってたのを覚えてるよ。でも、自分で選択した結果って後悔しないって聞くけど・・・」

「そうなんです。当時は嫌で仕方がなくて『合わない』って思ってました。自分に合っている仕事はもっと、充実感があって、面白くて、すぐに結果が出るだろうって。でも今思うと『自分には合わない』ってのは、単なる言い訳でした」

「なんで?」

「そうですね、転職して別の仕事を始めてみたら、すごく元の仕事がやりたくなってきたんです。『あ、あんなことも試してなかった。こんなこともやってみたかった』、そんなふうにいろいろと心残りがあって。視野が広がると、考え方もまったく変わるんですね」

「うん」

「結局、初めてのことが多すぎて、混乱してただけだったみたいです。冷静になってみると、もったいないことをしたなと思います。あのときは、『もうこの仕事続けるの無理だ』って思って、あわてて転職を決めてしまったんです。逃げることが目的で。自分を採用してくれるところならどこでもってわけではないですけど、それほど吟味しなかったです」

「そうなんですか」

「そうなんです。私、すぐに結果が出ないとつまらない、って感じてしまっていて、今まで全部中途半端に終わらせてきたんです。そういう自分の行動って、あとで悔やんでも悔やみきれないことがたくさんあります」

私はしばらくその人物の愚痴を聞いていたが、「石の上にも3年」という使い古されたことわざが、心に浮かんだ。

「やっぱり、しばらく我慢してやってみることも大事なんですかね」

「うーん、どうでしょう。ただ会社の仕事って、どこに言っても面白いこととつまらないことが両方あって、転職すれば解決する、という話でもないと思いました」

「今の仕事はどう?」

その人物は少し答えをためらったが、やがて最後にこう言った。

「もう後悔したくないので、逃げませんよ」

私は成功を祈った。

*1 『ファスト&スロー』(ダニエル・カーネマン著 早川書房)

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