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私が「仕事がつまらなくて仕方がない頃」に聞いたキャリアについての話

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『“未来を変える” プロジェクト』では、記事の制作段階でさまざまな方と議論し、フィードバックをいただきながら制作しています。今回は月間150万PVを超える「仕事・マネジメント」をテーマにした人気ブログ「Books&Apps」を運営する安達裕哉さんに「仕事がつまらないときに意識すべきこと」をテーマに寄稿していただきました。

PROFILE

ティネクト株式会社 代表取締役 安達裕哉
安達裕哉
ティネクト株式会社 代表取締役
1975年、東京都生まれ。Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。大企業、中小企業あわせて1000社以上に訪問し、8000人以上のビジネスパーソンとともに仕事をする。現在はコンサルティング活動を行う傍らで、仕事、マネジメントに関するメディア『Books&Apps』を運営し、月間PV数は150万を超える。

昔、教育研修の営業をやっていたとき、かなり忙しい時期があった。コンサルティングと異なり、教育研修は単価が低い。数多くの顧客を開拓しなければとても目標に到達しないので、当時はプレイングマネジャーで、部下とともに飛び込み営業、テレアポ営業と何でもやっていた。

当時は昼食を食べる暇もなく、お客さんからお客さんに渡り歩く日々で、私はとても疲れていた。

「ああ、こんなつらいことがいつまで続くのかな・・・」と、なんとなく仕事が投げやりになることもあり、仕事がとにかく楽しくなかった時期だったことを憶えている。

ーーーーーーーーーー

その日も朝から午前中2件、午後3件のお客さんとのアポが入っており、息をつく暇もなかった。午後は帰社し、19時から会議、21時からようやく自分の仕事ができる。やれやれ、と思っていたとき、携帯電話に連絡が入った。

「すいません、今日なんですけど、社長の身内に不幸があって11時からのアポイント、キャンセルしてもらえないですかね」という連絡。

「ああ、見込み客が一つ減ったな・・・」と今月の目標値を気にしつつも、思いがけず手に入った貴重な休息の時間、私は少し嬉しかった。

とはいえ、過密スケジュールだ。のんびりどこかの店で食べるわけにもいかない。そもそもこの辺りにはお店も少ない。私はいつもの通り、近くのコンビニでおにぎりを買い、その駐車場で食べることにした。

「こんな生活をしていたら、からだ壊すよな…」と思いつつ、ツナマヨのおにぎりを食べていると、隣に休憩中らしき道路工事の作業員のおじさんがいて、缶コーヒーを飲みながらタバコを吸っていた。

寒いのに道路工事か・・・ 大変だなと思う。まあ、営業も似たようなものか、テレアポも飛び込みも体力勝負だからな、とあらためて今月の数字と見込みの数字を手帳で確認し、ため息をついた。

と、突然おじさんが「営業かい?」と私に声をかけてきた。

「ええ、まあ……」

「大変だねえ。飛び込み営業かい?」

「あ、今日は飛び込みじゃなくてアポイント取ってから行ってます」

「そうかい。頑張れや」

思いがけず優しい言葉をかけてもらった私は、少しオープンになっていたのでおじさんに話しかけた。

「いま、お仕事は忙しいんですか?」

「ああ、そうだねぇ、最近は結構現場多いかな」

「そうなんですか。まあでも、忙しいのはいいことですよね」

「おう、そうだな。仕事があるだけマシだな」

そうだ、仕事があるだけマシなのだ。

毎月給料をもらっている身だから「やる気が無い」などと思ってはいられない。やる気があろうが無かろうが、結果を出すのが社会人というものだ。私はおにぎりにかじりついた。しなびた海苔が噛みきれない。

するとおじさんが話しかけてきた。

「おれも昔、営業やってたんだよね」

「そうなんですか?何の営業ですか?」

「金属の配管とか継ぎ手とかを工場に収める会社でね、結構頑張ったんだよね。なんか、懐かしくなってさ」

「へえ、いつ頃なんですか?」

「10年以上前かな。あの頃は景気も良かったから、仕事がたくさんあってね。でも、いつの間にか工場はほとんど海外に行っちゃってね。うちの会社は潰れちゃったんだ。社長は夜逃げしちゃってさ、最後の給料もナシ。大変だったな」

「そうだったんですか。大変でしたね」

私は苦しい経験の持ち主に掛ける言葉をあまり持っていなかったので、少し黙ってしまった。仕事柄、中小企業にも数多く訪問していたのでそういったエピソードは数多く耳にしていたが、その当事者を目の前にすると「大変でしたね」としか言いようもなかった。

「で、そのあとは営業はもう辞めよう、ってんでタクシー運転手とかやって、でもあまり合わなくて、この世界に入ったんだけど、まあ、どこも仕事は厳しいわな」

「そうですね」

毎日の仕事が確実にある、という恵まれた立場の私が何を言ってもなにか失礼なことを言ってしまいそうな気がしたが、私はそのとき、微妙な心境だった。「どこも仕事は厳しいわな」というおじさんになにか話したかったのだ。

「そうですね、さっきも考えてたんですよ。こんなことがいつまで続くんだろうって。仕事が楽しくないんですよ」

私の当時の素直な心境だった。それを聞き、おじさんはタバコをふかして言った。

「兄ちゃん、仕事はな「楽しくない」って思うと、もっと楽しくなくなっちまうんだうよ」

「?」

「昔、おれも営業ずっとやってて、嫌な客もたくさんいた。ドライバーやってたときもそうだ。失礼な客がそれこそ毎日のようにクルマに乗ってくる。頭にきて、そんときゃもう『楽しくない』って思ってたんだけど、今思うと実は充実してた、って思うんだよね」

「なぜですか?」

「いま、おれがやってる仕事は楽だけど退屈なんだ。それが一番キツい。でも、人と関わる仕事はお客さんの反応がすぐわかる。で、当時を思い出すと実際はかわいがってくれた良い客もたくさんいるのに、そういうのはあまり記憶に残らないんだな」

「そうですね・・・」

「楽しくないときは、仕事の嫌な部分だけがよく見えるけど、楽しくないときほど、仕事のいい部分に目を向けないとだめだ。中途半端な状態で会社辞めちまうと、おれみたいに『ドライバーをきちんとやればよかった』って後悔するからな」

私は、心を見透かされたような気がした。知らず知らずのうちに「仕事の嫌な部分」だけを気にするようになっていたのだ。

「ま、仕事のいいところに目を向けなかったら、どこ行っても一緒だって。兄ちゃんの仕事も面白いことあるだろう?」

「はい、あります。」

「ま、おれも今の仕事を頑張れるようにいろいろ考えてるからさ。お互い頑張ろうや」

ーーーーーーーーーーー

振り返ると、たしかにおじさんの言う通り、当時の営業の経験はキャリア形成上、非常に良い経験となった。

中途半端な状態で会社を辞めても、何も自分に残らなかっただろう。「血肉となるまで一つの仕事をやり切る」のは重要だ。

そしてもう一つ「仕事のいいところに目を向けなかったら、どこに行っても一緒」という言葉も、私の中に長く残った。「理想的な会社」なんて、どこにもない。あるのは「ネガティブな自分との戦い」だけだ。

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