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「感じ知る」「想い描く」「試し創る」ーー現場力を強化する3つのキーワード

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変化の激しい時代においては、柔やかに対応し、ビジネスに変革を起こせる「現場力」がますます大事になっていきます。では、最前線でビジネスの種を見つけ、自発的にビジネスを生み出したり、改善したりする自律した現場はどうすれば構築できるのか。トヨタ自動車株式会社で数々の成果を挙げてきた改田さんに「強い現場力」をテーマに寄稿していただきました。

PROFILE

改田哲也(57歳)
改田哲也(57歳)
パーソルキャリア i-common登録
東京大学工学部を卒業後、トヨタ自動車株式会社での約30年の勤務を経て、「風の企画事務所」を設立。現在はコンサルタント、大学院教授、アドバイザー、研修講師などとして活動。「TEDxSapporo」にもスピーカーとして出演

現場力を向上させるための3つのキーワード

  1. 感じ知る
  2. 想い描く
  3. 試し創る

1.「感じ知る」

一つ目の「感じ知る」は、身体感覚や五感を開放することで、体験とそれが投影する体感を得ることです。

例えば、初めて訪れる異国の街でのこと。当然、初めての異国の地ではさまざまな体験が次々に起こります。早朝、昼下がり、夕暮れどき、夜更け・・・時の経過とともに、その姿風情が様変わりしていきます。

週末にはまた異なった趣きを見せてくれますし、突然の雨が思わぬ渋滞を引き起こし、雪や風が街行く人の表情を染め、歩みを変えます。ふと立ち寄った大学のキャンパス、モールやマーケット、売り出し中のマンション、公園や教会、寺院、その街での食事や娯楽、買い物、そして偶然の出会いや片言かもしれないけれど笑顔での交歓。

そんな、その場ならでは、そのときならでは、そしてあなたならではの “感じ” によって、その街や人の “何かを知る” ことになります。「調査の原点」と言ってもいいかもしれません。

仕事としての「調査」は、「定性と定量」を組み合わせたり、もっと身近な方法としてネットで検索したりするもその一つですし、ビッグデータ解析、さらにはAIを活用して・・・とその概念は広がりつつあります。

そのようにして、世界というものが間接的に広大に伸びていく今だからこそ、その “現場” に生きるあなた自身が “感じ知る” という種を持っていることが、あなたの人生という旅の基点としてとても大切だと思います。

そして、例えば異国、異文化での非日常に対する “繊細な感じ” は、あなたが当たり前のように過ごしている “日常という足元に咲く一輪の花にも心映す” 素直な優しさがあればこそ、成り立つものだとも思います。

  1. 想い描く」

「想い描く」は、池に投じる石、それによって起こる波紋や響きをイメージすることです。

例えば、街を歩いて橋に立ってみると、朝の渋滞という課題に出会います。さて、あなたならどんな石や波紋を想い描きますか? 「この橋の少し東にもう一つ橋を」「この橋を複車線に拡幅したら」「AIで車の流れを最適に制御したら」・・・いずれも大きな資金(税金)と技術によって可能なことです。

しかし、こんな別の想いを描くこともできます。例えば、橋の欄干に “風や雨を感じて音を奏でるカラクリ” を作ってみたら。

「おじいちゃん、今日は風が吹いてるからあの橋に行こう!」、そんな孫に手を引かれる老人の元気な笑顔を見ることができるかもしれません。「今朝はあの橋が渋滞してくれてラッキーだったよ、おかげで何曲もブリッジオーケストラを楽しめたからね」、そんなちょっと遅く出勤する会社の先輩が職場に爽やかな風を届けるかもしれません。

いかがでしょうか。想うこと、そして描くことは、同じ橋という現場にあっても、案外自由な可能性をもっていて、どんな夢橋を架けるのかで、その先に待つ世界がこんなにも異なってきます。

これは病院の介護現場でも、どんなロボットを想い描くかでその先には思った以上に違った姿が現れます。「ランチの時間やお味噌汁の具材、温度など正確にデリバリーするロボット」には、「また今日もこれかね、たまにはもっと具の少ない冷めたお味噌汁もほしいわ」「今日はまだお腹空いてないから、もっと後にしてくれ」、そんな不平やわがままが聞こえてきそうです。

でも、「なぜか時間を間違えたり、ときに目の前でお盆をひっくり返したりと、なんとも粗相なロボット」には、「わしはまだ自分で取りに行けるから、お前さんはそこで休んでなさいよ」と、ちょっと自慢げに元気に自立しようとする姿があるかもしれません。

こんなふうに、“現場で想い描く” ことはとても豊かな可能性を持っていますし、この可能性の種は一つ目の “感じ知る” ことと表裏のように関わっていると思います。

  1. 「試し創る」

三つ目の「試し創る」ですが、これは先の橋やロボットを考えるとよく分かります。新たな橋の建設は、「議会や予算審議、ゼネコンなど誰かの決裁手腕などが試されます」が、いずれその橋でもまた、「次なる渋滞といら立ちが創られる」のかもしれません。

一方、風が吹くことでそのときに起こる刹那の奏について考える際には、さまざまなカラクリのアイデアやその工作、材料と加工、さらに工作の冶具に関する検討、そして何より試行錯誤での改善を繰り返し、モノづくりとコトづくりを連動させる感性が試されます。

また、こうした過程でこそ最先端の技術は試され、新たな技術力が創られると思います。そして、何よりも行き交う人びとの笑顔や爽やかな気分が創られ、街や暮らしにもこれまでとは異なった灯りが燈り、歩いてみたくなる道程が創られていくのかもしれません。

ちょっと詩的な、物語のような例を通じて私なりの「現場力についての思い」をお伝えしてみました。

最初の「異国」の話は、「異なる部署」「別の取引先」などと読み替えることもできます。橋やカラクリ、介護やロボットの話もいろいろ読み替えて、見立ててみてください。

そうすることで、開かない扉や越えられない壁に日々出くわしたとしても、笑顔で開けたり、乗り越えたりできるようになります。また、あえてその扉を開けない、壁をそのままにしておく、そんな発想が生まれたり、そのことがより爽やかな解決の道につながっていくかもしれません。

最後に、大きな組織や会社で働いていると、またそれをマネジメントしていると、計画通りにいかないことや思いもしないアクシデントに見舞われることがたびたびあります。そんなときにこそ、「感じ知る」「想い描く」「試し創る」という種を見つめ直してみてください。

そしてそのあと、温泉に恵まれたこの島国にいる幸運を、露天の湯けむりに包まれながらかみしめたりしてみると、3つの種から思いもしない綺麗な華が咲くかもしれませんよ。

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