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経営者はなぜ、歴史が好きなのか

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『“未来を変える” プロジェクト』では、記事の制作段階でさまざまな方と議論し、フィードバックをいただきながら制作しています。経営者には歴史好きが多いという話をよく聞きます。スピーチの機会などでも歴史から引用したり、歴史上の人物の名言を座右の銘としている方も多いです。なぜ、経営者は歴史が好きなのかーー。今回は大手飲料メーカー、大手外食チェーンなどで取締役などを歴任されたMさん(50代)の方に寄稿していただきました。

PROFILE

Mさん(50代)
Mさん(50代)
(インテリジェンス i-common登録)
上場企業3社で役員を歴任、4社で実質的なターン・アラウンドマネジャーとして1〜2年で業績をV字回復し、その後の成長路線の「仕組み」も構築

私が歴史が好きな3つの理由

経営者には歴史好きが多いですし、私もかなり好きです。なぜこんなにも歴史が好きで惹かれるのか、自問自答することがあります。大きく分けて3つの理由があると思います。

第一に、経営は戦争です。単純に歴史のなかでも戦記物が好き。

第二に、「学ぶ」=温故知新。評価がある程度確定しており、その「史実」の「結果」を知ることができ、また5年後、10年後、20年後、100年後にどのような「影響」があったかも知ることができます。

経営においては、5年後、10年後の予測をしますが、予測通りになるか否か「確定」はしていません。ですから、歴史を自分の会社に置き換えて「活かす」ことをします。「昔のことを知っても仕方ない」という人をときどき見かけますが、大きな間違いです。歴史を知れば知るほど感じるのは、「歴史は繰り返す」「勝者にはいくつかの共通項がある」ということ。

第三に、自分を投影させて励みにする。一言で言って、経営者や企業改革リーダーは孤独です。特に辛いときや重大な経営判断のときに励みになります。

いくら社内に相談相手がいようが、最終判断は経営者です。経営者は、従業員やその家族、ひいてはステークホルダーの人生に対しても責任を負っています。経営者の判断一つが、その人びとの人生を左右してしまうのです。私も過去の自分の判断を省みるとゾッとすることがよくあります。迷った末に右の道を進んだから良かったが、左の道を進んでいたら破綻していたなと。

また、当然常に順風満帆ではありません。そのようなときに、「歴史上の偉人たちも順風満帆ではなかったのだから」と励みにします。例えば、「織田信長だってたかが美濃一国を制圧するのに10年かかった」「ナポレオンは、士官学校時代は暗くて目立たない生徒だった」「西郷隆盛は人生に絶望して自殺未遂した」「諸葛亮孔明は心底信頼できる主君に会うまで、世に出ることに備えて自分の実力を磨いた」「木戸孝允は逃げの小五郎と言われようが、蛮勇に走らず大きな目的を成し遂げた」など。

実際に歴史からどのようなことを学び、経営に活かしたか、その実例をいくつか叙述します。

兵站の重要性を学ぶ

第一に、兵站(会社で言えば、財務、仕入れ・調達、物流など)の重要性です。例えば、三国志の時代、曹操が数十倍の敵の袁招を破った官渡の戦いの勝因は兵站基地の陳倉を襲ったこと、また諸葛亮孔明の5度の北伐が失敗に終わったのは物流ルートを確保できなかったため。

戦国時代に、豊臣秀吉はこの兵站をかなり重視していました。しかし、朝鮮へ攻め込んだ際、陸路もそうですが日本から朝鮮への海上輸送路が朝鮮軍の李瞬臣率いる海軍に圧倒され、最後まで確保できなかったことが大きな敗因でした。

第二次世界大戦では、アメリカ軍は日本の軍艦破壊よりも輸送船撃破を重視していました。一方の日本軍は最後まで艦隊決戦にこだわり、輸送船撃破は軽視していました。すなわち敵の兵站を破壊できなかったため、次々と人員、武器、食料などが補充されてしまう状態でした。現代の経営に例えると、営業ばかり重視し(売上高至上主義)、コストコントロールを軽視していることと同じと感じます。

スピードの重要性を学ぶ

第二に、スピードの重要性。第二次世界大戦の初期にドイツがわずか数カ月でヨーロッパの大半を手中に収めたのはスピード重視の電撃戦を仕掛けたから。織田信長・豊臣秀吉もスピード重視、曹操もスピード重視。極めつけは豊臣秀吉の中国大返しです。経営においても競争相手がいます。いかに早く市場シェアを取るかが重要です。そうすれば、いろいろと欠ける部分があっても補えます。これを実践してシェアNo.1になった企業は数多くあります。

戦略を学ぶ

第三に、秋山真之の日本海海戦における「7段構えの戦法」。これは、ロシアのバルチック艦隊を殲滅させるために、一回の海戦で殲滅できなくても7段階で追撃すれば完全に殲滅できるという戦法です。これは非常に参考になり、目標達成のために少なくとも5つの「次の手」を準備するようにしています。新規事業や新しい取り組みの場合、「一手」しか準備していないとその手法に執着しすぎ、結果の出ない非効率なやり方を続けたり、予想通りに進まなかった場合にあたふたしてしまいます。

情熱を学ぶ

第四に、高杉晋作の功山寺での蜂起。幕末に長州藩で幕府恭順派が大勢を占めているとき、倒幕を訴えわずか84人で挙兵し、長州藩の藩論を倒幕へともっていき、一挙に倒幕へ向かった事件です。薩長同盟、長州四境戦争での勝利、倒幕、そして明治維新までの流れはここから始まったと言っても過言ではありません。たった一人の熱情と行動が、日本全体を変えてしまった。

学んで活かす

私は、上場企業4社で実質的なターンアラウンドマネジャーとして1〜2年でV字回復させました。4社とも中途入社ですので、最初周囲は敵ばかりでした。それをまさに一人ずつ納得させる作業をしながら改革を実行してきました。常に高杉晋作の功山寺蜂起を胸に自らを励ましていました。一匹の狼が2,100匹の羊を狩猟集団に変えた実体験もあります。V字回復の要因は他にも戦略などいろいろとありますが、最初はたった一人の熱情からです。

これ以外にも歴史から学んだことは非常に多く、また自らの励みとしてきました。紙数のかぎりがあるので、私にとって特に大事な4つのことだけを列記しました。経営者の多くは、学んだことを実践しています。ビジネスでは実践の場面が多いから、経営者は歴史を学び、深く読み解くうちに好きになっていくのでしょう。

歴史を先生にし、経営者のマインドに近づく

最後に、「歴史」を学ぶ際、私は真実を知りたいので歴史小説はあまり読みません。小説は作者の解釈が反映されているためです。ただし、「歴史」を知る契機としては良いので、場合によっては「マンガ」から入るのもお勧めします。

「三国志」を例にとりますと、横山光輝のマンガ → 吉川栄治の小説 → 歴史群像などの三国志というように、より「事実」を知るようにしました。また、マンガ『ベルサイユのバラ』でフランス革命やナポレオンに興味をもち、さまざまな本を読むようになりました。「歴史」は、多くの人の血と汗と時間の結晶です。それらを自らの「先生」としないのは、「もったいない」と思います。

また、リーダーは重大な決断をしなければならない場面が多々ありますし、決断が会社や部下などに大きな影響を与えます。その多くの判断・行動が「結果」に影響を与えるわけですから、プレッシャーもかかります。そのとき自らを歴史上の人物と重ねることで、かなり「励み」になります。

今までは「歴史」に興味のなかった人でも、ぜひこのコラムを契機に「歴史」を「先生」にしてみてください。

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