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最新理論で考える|些細なことで険悪にならないチームの創り方

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「すごく優秀な同僚がいて、目標を握るといつも小気味よくスピードを上げて仕事を引っ張っていってくれたんです」

「ただ、ときには “そこまで目標にこだわらなくても・・・” とこちらが引いてしまうことがありました。“そんな曖昧な取り組み方、信じられない” とあまりに激しくチームメンバーを詰めるので、チームの雰囲気が険悪になることもありました」

そう語る某外資系メーカーのマネジャーは、こう続けました。

「その同僚は優秀なんです。だけど、仕事で難しいテーマをあつかうほど、チームの雰囲気が険悪になっていきました。彼から自分たちが “無能だ” と叱責され続けている空気が生まれ、そのうちに他のメンバーも『目標、目標』と連呼し、チーム内の人間味が薄い、なんて揶揄する声も多くなっていきました」

このエピソードにあるような、「同僚が考えていることが、いま一つ分からない」「何か仕事がうまく進まないことがあると、それをきっかけにお互いの信頼度が下がっていく」「信頼度が下がった結果、さらに仕事が進まなくなり、さらにお互いの不信感が増す」といったスパイラルに陥っている組織は、少なくありません。

当プロジェクトでは、些細なことで組織が険悪になるメカニズムについて、40名の現役ビジネスパーソンと実体験の共有や議論を行いました。その内容を、「強い絆/弱い絆」「インナーワークライフ」という2つの理論を用いて、深掘りします。

職場で日々繰り返される「負のスパイラル」は、どのようにして引き起こされ、どうすれば解決することができるのでしょうか。

今回のアウトラインです。

INDEX読了時間:5

それでは、本文です。

インナーワークライフ理論が解き明かす職場の負のスパイラル

ハーバード・ビジネス・スクールのテレサ・アマービル教授らは、多数の企業と提携して行った調査結果をベースとし、「認識」「感情」「モチベーション」の3つがお互いに絡み合い、些細なことが仕事の成果が大いに影響を与えることを指摘しています。アマービル氏らは、この関係性を「インナーワークライフ」と呼びます。

インナーワークライフ

例えば、上司から3日前に急に頼まれた仕事。期日の当日になってなんとか間に合わせてメールで成果を送ったのに、上司からは何のリアクションもなし。そればかりか、チーム全体に対して直後にメールで、来月に実施される社員旅行の話がのんびりと送られてくる・・・。

これにより、仕事を片づけた本人は、「自分が一生懸命やった仕事について、何のリアクションもないんだ。上司はそれほど重要でなく、返事をするほどでもない仕事を、自分に押しつけたんだ。上司は、自分のことを “大して重要じゃない仕事しかしていない人間” だと思っているのかもしれない」と【認識】します。

本人は、こうした【認識】に頭をもたげ、他の仕事に着手してもずっと「自分は、上司に認めれられていない」と、哀しい【感情】に支配されていきます。その結果、「今着手しているこの仕事も、上司はとりあえずやらせているだけで、どんな結果になっても実は差し障りがないんだろうな・・・」と、さらに悪い【認識】が助長されていきます。

こうした連鎖によって、本人の【モチベーション】は急激に低下し、活動が鈍っていく。それによって仕事の進捗に遅れが目立つようになり、上司からその点を指摘されると、「自分はあまり重要だと思われていないから、こういうふうに結果が悪いときだけ、叱責されるんだ」と、【認識】がさらに強化されていきます。

しかし、実際はこうでした。上司は、「急ぎでやってもらった仕事が無事に片づき、ホッとして、社員旅行というポジティブな話題をメンバーに振る心境になった」と言うのです。厳しいスケジュールの中できっちりやってくれた当人へのメールでのお礼を失念し、社員旅行のメールを送ってしまっただけの行為が、こんな連鎖を引き起こしてしまったのです。

以上のように、ちょっとした些細な出来事が、人の内面(インナー)にいろいろと相互作用を起こし、結果に大いなる影響を与えてしまうというのが、この「インナーワークライフ」で、テレサ・アマービル教授らが指摘する点です。

「強い絆」はインナーワークライフの存在を霞ませる

一方、職場では普段、あまりインナーワークライフについて注意が向かず、その影響を無視して仕事が進んでしまいます。その背景には、マーク・グラノヴェッター氏が提唱する「強い絆/弱い絆」理論が関与します。

「強い絆/弱い絆」理論は、人と人のつながりは、

  • 自分以外に共通の知り合いが多数存在し、いつも行動をともにする「強い絆」
  • 自分以外との共通の知り合いはほぼおらず、新しい知識や刺激を与えてくれる「弱い絆」

の2種類が存在するというものです。

このうち、職場の同僚や上司との関係は、お互いに共通の知り合い(もとい同僚)が多く存在し、行動をともにすることから「強い絆(図の青線)」に相当します。

強い絆

「強い絆」の特徴として、お互いにそのつながりの中で繰り返される行動パターンが強化されていき、それが行動規範になる「強化」のメカニズムが知られています。

「強化」のメカニズム

そのため、個々人が職場で行動をするときは、この共通の価値観・行動規範がベースになっていき、個々人が内面に持つ「インナーワークライフ」にはあまり注目が集まりません。

例えば、「土日を使ってでも、クライアントが驚く成果を出すコンサルティングを最重視している」という価値観が浸透している組織であれば、お客さまに関する話に非常に感度が高くなり、お客さまからのメールは即座に返答することが文化として根づいているでしょう。

すると、一方で社内のメンバー同士は、「感謝しあう」文化が特段なく、お客さまを重視するばかりに、お互いへの注意が希薄になる傾向があったりします。そして、先ほどのメンバーの「インナーワークライフ」は、完全に意識外へとはじき出されてしまうことになります。

弱い絆同士がつながった新たな「強い絆」組織のインナーワークライフ

これに対して、「共通の興味やテーマ」によって、弱い絆でつながっていた人たちが集い、多産多死により企業として成長する場合は、参加するメンバー同士の「インナーワークライフ」が、スタート段階でよく理解されている場合が多くなります。

シリコンバレーに代表される「弱い絆同士がつながって新たな強い絆が生成され、企業となる流れ」
シリコンバレーに代表される「弱い絆同士がつながって新たな強い絆が生成され、企業となる流れ」

新しく出会った人同士が仕事を始めようとすると、まだ「行動規範・価値観」が存在しないため、まずは互いの「価値観、生い立ち」に話題が集まり、インナーワークライフを理解し合う機会が数多く生まれます。

その結果、弱い絆で集まった組織は、「彼はきっと、こう命令されたら、こう捉えてモチベーションが落としがちだ」と配慮を加えたり、相手の「価値観・生い立ち」などが不透明なときは、「そもそも、どういう風にこれを捉えたの?」という背景を深掘りする傾向が強くなり、インナーワークライフと上手く付き合った組織運営が行われやすくなります。

弱い絆から強い絆をつくる実験で分かったこと

そこで実際に、当プロジェクトでは、元々「弱い絆」のつながりしかないビジネスパーソン約40名をイベントに招待し、互いの内面を理解しながら、新たな「強い絆」を短時間でつくるという実験を行ってみました。

このときに使った手法は、LEGO@SERIOUS@PLAYと呼ばれるもの。レゴブロックを使いながら、互いが考えていること、互いが持っている価値観を可視化して説明し、そこから共同で取り組むプロジェクトを考えてみるという内容です。

結果、参加した方々からは、以下のような反響がありました。

「それぞれの人の大切なポイントを尊重しながら議論すると、気持ちいい!」

「それぞれ別の意見を持っていたが、その「共通点」をみつけるのではなく共有し続けた。これを意識すると、誰も自分の考えをおさえこむことなく、考えのモトとなる背景を話すので結果が全員の納得するモノになった」

「自分が大事にしているものを共有する、それが共感してもらえると安心感が生まれて、「何かできるのでは?」という期待につながりました」

このように、ほぼ初対面で共通のつながりが少ないグループであるからこそ、最初に価値観を共有し、深く互いを意識し、インナーワークライフを想像しながら議論を進めることできたことで、全員が高いモチベーションをもって営みをスタートできることが確認できました。

この結果だけをみていくと、なまじ組織の価値観だけで長い時間運営され続けてきた組織よりも、0ベースで新たに形成されたチーム、新たな強い絆のチームの方が、遥かにスピード感を持ち、互いにモチベーションを高めあい、邁進する可能性があることが想像できます。

既存の「強い絆」でインナーワークライフを改善するための処方箋

では、既存の価値観や行動規範が強く、個人のインナーワークライフが霞んでいる組織で起こる負のスパイラルは、どのようにして改善できるのでしょうか?

冒頭に登場した外資系の目標意識が強い社員の話には、実は続きがあります。その上司は、ふとした会話をきっかけに、こんなことを知ったそうです。

「あるとき、その同僚の実家が代々続く中小メーカーの経営一家だという話を教えてもらい、すべてが腑に落ちました。自分の父も祖父も、“もしも目標を曖昧に経営すると、数十人の従業員とその家族を路頭に迷わせてしまうかもしれない。だから、責任を持って目標を追求することが大切なんだ”、そう育てられてきた同僚からすると、目標にこだわるのは当然。それからは、“きっとあいつなら、こう考えるな” と想像できるようになり、チーム内での衝突や軋轢がグッと減り、仕事が捗るようになりました」

この例にあるように、多くの場合、インナーワークライフのベースになる認識は、当人の過去の経験、幼いころからの生い立ちの積み重ねによって形成されており、それが理解できれば、既存の組織であっても、お互いスムーズに働けるようになることが可能です。

ここでは、先ほどの実験にも参加した40名のビジネスパーソンたちからの意見、およびテレサ・アマービル教授らが提唱する方法を参考に、既存組織におけるインナーワークライフの認識を実際に深めるアプローチをご紹介します。

【既存組織でお互いのインナーワークライフへの理解を深めるワークの手順】

まず、チーム内で2人1組になり、お互いにインタビューする形式を、片方1時間、合計2時間程度行います。質問の流れは、以下の通りです。

  1. 最近の自分の仕事の中で、最も手応えがあった仕事、自分として最高だった仕事を1つ選びます
  2. その仕事の詳細(どんな登場人物がいて、どんな状況で、自分が何を行い、その結果どのようになったか)について、説明します
  3. その仕事が「なぜ自分にとって最高だったか」という点について、背景にある価値観や考え方を説明します
  4. その価値観が、「新社会人時代」「大学時代」「高校時代」「小中学校時代」に、それぞれどのように発揮されていたかを、時間軸をさかのぼって説明します

そして、インタビューした側の人物が、チームの残り全員に対してそれぞれの内容を共有することで、チーム全員のインナーワークライフがグッと見えやすくなります。

いかがでしたか? いつも組織で、些細なことがきっかけに起こるネガティブスパイラルに直面している方は、上記のアプローチを組織内で一度試してみたり、あるいは新たな強い絆そのものを、自分自身で創り出してみたりしてはいかがでしょうか。

[編集・構成] “未来を変える”プロジェクト 編集部

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