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高給を取りながら「幸せではない」と不満を持つ人たちの話

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『“未来を変える” プロジェクト』では、記事の制作段階でさまざまな方と議論し、フィードバックをいただきながら制作しています。今回は月間150万PVを超える「仕事・マネジメント」をテーマにした人気ブログ「Books&Apps」を運営する安達裕哉さんに、「高給を取りながら『幸せではない』と不満を持つ人たちの話」について寄稿していただきました。

PROFILE

ティネクト株式会社 代表取締役 安達裕哉
安達裕哉
ティネクト株式会社 代表取締役
1975年、東京都生まれ。Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。大企業、中小企業あわせて1000社以上に訪問し、8000人以上のビジネスパーソンとともに仕事をする。現在はコンサルティング活動を行う傍らで、仕事、マネジメントに関するメディア『Books&Apps』を運営し、月間PV数は150万を超える

マスコミや商社、銀行などクラシカルな大手企業に在籍し、30〜40代前半で年収1000万円を取るような高年収層の会社員が抱える悩みの1つは、「不満はないが、これでいいのだろうか」という言葉に代表される、お金の面では満足しているが思ったほど幸せではないという事実ではないだろうか。

私は以前からこの感覚を持つ人たちに興味を持ち、このように述べる人がそれなりの多数派を占めている理由について考えていた。彼らの話によれば、「あまり幸せではない」と感じる理由はいくつかある。

一つ目は、「いつも競争に忙殺されている」と感じがちなことだ。

会社員でありながら、年収1000万を稼ぐには、

  • 給与の良い会社に入ること
  • 会社に入って成果を挙げること

の2つが求められる。そして、そこに到達するまでには誰もがそれなりの苦労を積まなくてはならない。

特に大企業に入ってからの競争は長期に渡る、熾烈な競争である。社内の出世競争に「勝ち続けて」ようやく達する年収1000万円は、意にそぐわない転勤も引き受けるなど人生の一部を代償として得られるものである。

勘違いしないでいただきたいのは、もちろん彼らは「仕事が嫌い」なわけではない。彼らは基本的に仕事が好きであるし、成果を出すことに長けているため社内での評価も高い。

だが、30代も後半になって「今の私」をあらためて振り返ると、多くの方から「仕事は面白く金銭的にも恵まれているので幸福だと思わなければならないのだろうが、さりとてこのままで良いのだろうか」という不安を聞く。

一説によると、人は年収900万円を超えると、それ以上お金を稼いでも幸福度が上がりにくくなるという。

'02年にノーベル経済学賞を受賞した米プリンストン大学の心理学者、ダニエル・カーネマン教授が面白い研究をしています。それによると感情的幸福は年収7万5000ドル(約900万円)までは収入に比例して増えますが、それを超えると比例しなくなるんです。

こう語るのは「幸福学」を専門とする慶應義塾大学教授の前野隆司氏。これは、アメリカの世論調査会社ギャラップ社が45万人を対象に行った健康と福祉に関する調査の回答を分析した結果である。

ちなみにこの額は、米国の一世帯当たりの平均年収7万1500ドル(’08年)をわずかに上回るものだ。前野氏が続ける。

収入の低い人にとっては、身の安全や健康、そして食糧の確保という意味で、おカネを得ることが長期的な幸せにつながります。誰も寒さで凍えたり、空腹に悩まされたりする生活を送りたいとは思いませんからね。しかし、一定限度を超えると、幸福度は上がらなくなります。そもそも金銭による幸せというのは長続きしないものです。人間は収入が増えれば増えるほど欲しがってしまうものなのですが、満足感は一瞬で消えてしまうものです。

引用元:これを超えると不幸になるらしい「年収900万円=最大幸福」説は本当か?(現代ビジネス)

彼らは会社に入って以来、分かりやすい目標、すなわち「成果を挙げる」「出世する」に邁進してきた人がほとんどだ。それが実現してしまい、次の目標を見失ってしまうのである。これが、あまり幸福ではないと感じる原因の1つだ。

二つ目は、「自分の生きている世界がせまい」と感じがちなことだ。

20代で年収1000万円を超えるような給与を取る一部の外資系企業を渡り歩くような会社員は例外だが、冒頭に述べたような人たちには、一社で10年、20年と地道にやってきた人が多いだろう。

だが、中で働いている当人がどう感じているかといえば、それほど呑気にしていられるわけではない。若くて優秀な人が続々と入ってくる「良い会社」においては、

「私は果たして社外で通用するのだろうか」

「会社の肩書がなくなっても、私は信頼されるのだろうか」

と常に「外の世界が見えていないこと」への不安が募る。

また、公私に関わらず他の会社の経営者や、外資系のトップキャリアの人と会う機会が多くなると、「本当のトップキャリアは別世界だ」ということが見えてしまうときもある。

もちろん彼らは、「会社員としての成功」は手にしている。特にこれ以上のお金が欲しいとも思わない。

だが、彼らの中では「給与の多寡」は一種の成功の尺度である。20代、30代で年収が数千万、数億という値を稼ぎ出す人を見て、「私の知る世界は小さかった」と思う人も多いだろう。

私も個人的に憶えがある。20代のころ、私は「中小企業の経営者」という人びとと仕事でお付き合いすることになった。社員は100名程度、社員の平均年収は450万円くらいの会社だ。社長は当時30代後半であったが、なんと彼は2億円以上の収入を得ていた。

私は「中小企業の経営者の年収は、高いと言ってもせいぜい1000、2000万円くらいだろう」と思っていたので、そのギャップにしばし呆然としたものだ。自分の「世間知らず」ぶりに恥ずかしくなった。

このように、高給を取りながらも「時間」と「世間知らず」について不満や不安を持つ人は少なくない。では、これを解決する術はあるのだろうか。

もちろん、解決策は人それぞれだ。例えば、「足るを知る」を実践し、人と自分を比べないことで心の平穏を取り戻すことも一つの解決策であろう。

だが、「時間を手に入れること」と「別の世界に進むこと」は、今の会社のキャリアの延長線上にはないことも知っておくべきだ。今の「そこそこ」の世界を捨てずに、新しいものを手に入れることはできない。

高給を取りながら「幸せではない」と不満を持つ人たちこそ、新しいチャレンジをする十分な能力も機会もある。だから、「不満や不安」を感じるのはとても健全なことなのだ。

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