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すべての始まりはお客さんから――現場発の自律型組織の作り方

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自律的に動き、成果を出す強い現場を作るにはどうすればいいのか。主に営業、マーケティング部門を渡り歩き、欧州、米国、アジアの各地域に赴任し販路開拓や大型M&Aに従事するなど海外事業の成長に多大な貢献、経営者としても数々の成果を挙げてきた小林隆博さんに「強い現場の作り方」をテーマに寄稿していただきました。

PROFILE

IT企業役員/キャリアコンサルタント 小林隆博
IT企業役員/キャリアコンサルタント 小林隆博
パーソルキャリア i-common登録
大学卒業後、株式会社リコーに入社。主に営業、マーケティング部門を渡り歩き、欧州、米国、アジアの各地域に赴任し販路開拓や大型M&Aに携わるなど海外事業の成長に多大な貢献をしてきた。関連子会社の取締役、監査役などを歴任し、問題を抱えている会社の経営再建にも尽くしてきた。事業戦略、経営企画に長年関わり、特に人財マネジメントのエキスパートとして全社的な働き方改革や社員意識変革をリードしてきた。定年を前に退社・独立しIT企業の役員を務めながら、現在はグローバルに事業展開する企業への支援やミドルマネジメント向けキャリアコンサルティングを行っている

社員が自律的に動き、成果を出す強い現場には3つのポイントがあります。

  1. 高い壁をも越えてやろうというチャレンジする強い気持ち
  2. 問題点を今の延長線上で少し改善していこうと考えるのではなく、根本的に改革しようという意識
  3. 常に顧客起点で思考する現場目線

私が40代半ばで海外の関連子会社のマネジメントとして意気揚々と東京本社から現地に乗り込んだときの話です。それまでの本社管理部門から文化、仕事の進め方、ビジネス慣習が大きく異なる環境に移り、武者震いを感じながらのスタートでした。

当時の会社は市場が伸びているにもかかわらず売上、利益は横ばい。マーケットシェアが低迷しているにもかかわらず緩い空気が社内に漂っていました。安定した顧客ベースにあぐらをかき、事業を伸ばそうという意識に欠けていたのです。

何かを変えていかなければこの会社はダメになってしまう。ジリ貧になってしまう。そう考えた私は社員にしっかりと目標を意識し、自分の成果に責任を持ってもらうべく目標管理制度を見直し、社内の評価制度や報酬の仕組みの改革を会社の幹部社員に訴えていきました。

熱く何度も説得を試みたのです。しかし私の試みは空回りしてしまい誰も私の考えを支持してくれず、組織としての動きがなかなか生まれてきませんでした。「今のままで何が悪いのか?」という意見が大勢を占め、その壁は並大抵の力では動かないと痛感したのです。

そんなとき、転機が訪れました。ある支店営業会議に出席し営業スタッフと打ち合わせしていると、彼らは「本社の指示でどうした」とか「本社の意向がどうだ」とか言うばかりで、「お客さんがこう言っている」といった言葉が出てこないことに気がついたのです。

振り返ってみると、私の改革提案も「こうあらねばならぬ」から「従え」という言わば上から目線になっており、まったく顧客を意識していないことに気がつき、愕然としました。会社、社員が常に内向きの仕事に埋没し、顧客つまり外の世界を向いて仕事をしていないことに危機感を覚えました。

このままではマズいと思い、社員に変われと言う前に私自身が変わらなければいけないと強く感じました。さっそく私は営業や顧客サポートをしている方たちと時間を見つけては顧客を訪問し、シンパのユーザーだけでなくクレームユーザー、見込みユーザーなどできるだけさまざまなタイプの顧客と接点を持ちました。

そのように顧客を理解し、自分たちのやるべきことを整理していったのです。そして、常にまわりの社員に「お客さんは私たちに何を求めているか?」「お客さんはどう変化していくのか?」を問い続けました。

私がそんな行動を続けていると、「一緒に会社を変えていきたい」と目を輝かせて言ってくる連中が徐々に表れてきました。心の中で問題意識を抱えていてもなかなか表に出せない人間がこれほどいたのかと思いました。

顧客に対する理解を深め、それを基に何度も私たちが今やらなければいけないこと、将来やらなければいけないことをグループで何度も議論を重ねていくうちにチームがまとまっていくのを肌で感じました。

顧客をしっかり意識すると私たちに求められる行動や目標が自ずと決まってきます。そして、それを時系列に並べていき、まず “To Be(あるべき姿)” を決め、そこに到達するまでの “Can Be(今やればできるレベル)” を決めていきました。そこまでいくと、あとは各組織、各個人に合わせて分解していき、その大きなうねりに乗って会社が変わっていくのを眺めるだけで意識変革が進みました。

「本社が言っているから」「トップが言っているから」では改革はおぼつきません。今の行動パターンの延長線上に変革はありません。「お客さんが私たちにこれを求めている」という視点がなければ、自分たちの行動の変革にはつながらないのです。

組織に属していると理不尽とも思える意思決定や状況変化に出会うことがしばしばあろうかと思います。あるいは、自分が思っているほど自分自身や自分の仕事の成果に対する評価がままならないということもあるでしょう。自分の意に沿わないことというのは、組織人として誰でも多かれ少なかれ経験されているのではないでしょうか。

しかし、自分の価値観でとらえるとあるべき姿からほど遠いと思うモノごとでも、一歩引き、自分を含む全体を自分とは違う人間として見ることで違う世界が見えてくることもあります。仕事がうまく回らないとか目的が実現できないというときにこそ、自分の考えや行動を客観視することが重要だと思います。特に、現場の声は多くのことを教えてくれます。頭では分かったと思い込んでいることでも、実は分かっていないことも多いのです。

“Walk to talk” という言葉があります。対話するために歩け、つまり現状を理解するために現場の人の話を聴け、という意味で使われるそうです。この言葉を読者のみなさんに送りたいと思います。ネット全盛の今の時代であっても現場の生の声を聴くことで新たな発見、気づきがあるはずです。そしてそれが自身の成長を促してくれるでしょう。

最後に、自分がやろうとするタスクやプロジェクトがなぜ失敗するかというと、越えようとするハードルが高いからです。しかし、低いハードルをいくら越えても達成感や満足感は小さいのではないでしょうか。ハードルが高いからこそ、乗り越えようとする意欲が湧くしモチベーションが上がります。

私のささやかな経験を基にチャレンジする意識と現場に寄り添うことの意義を述べましたが、これからの将来を担う方たちには決して現状維持にとどまらず、旺盛なチャレンジを続けていってほしいと思います。

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