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メンバーの自律を促し、成果を出す強い組織を育む3つのポイント

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変化のスピードが激しい時代、強い現場を生み出すキーマンとしてマネジャーが担う役割の難易度は増していくことでしょう。そこで、これからの時代におけるマネジメントのポイントをテーマに、車載関連の業界で実績を挙げてきた多田惠雄さんに寄稿をいただきました。多田惠雄さんいわく、変化を受け入れ、成果につなげる自律した組織を作るには、ポイントが3つあるのだそうです。

PROFILE

元ニチコン株式会社執行役員 多田惠雄
元ニチコン株式会社執行役員 多田惠雄
パーソルキャリア i-common登録
1954年東京生まれ。成蹊大学工学部(現理工学部)電気工学科出身。パイオニアの車載関連事業所で部品技術部長等の立場で長年経験。その後、同社の本社調達本部で室長などを歴任。同社退職後、ニチコン株式会社で執行役員、品質保証本部長を務める。同社を退職後は技術領域、品質保証領域などをメインにフリーランスの顧問、セミナー講師として活動中

自律的に成果を出す組織を作るための重要なポイントは3つ。

  1. 組織内(外)の情報を自分自身で積極的に取りに行く
  2. 忙しいのは自分(上席)ではなく部下であると自戒する
  3. メールのみに依存せず自らのフットワークも活かす

1. 組織内(外)の情報を自分自身で積極的に取りに行く

世に言う「報連相(ほうれんそう)」の時代はすでに終わりました。報連相という発想は、もはや上席が待ちの体勢にあることへの言いわけでしかありません。

組織の長であればアンテナを高くし、自分から情報を取りに行く気概が必要です。報告が上がってこないというのは、アンテナが低いか、執務姿勢が「相手の話を傾聴するように見えていない」ことに起因しており、自らを情報弱者にしています。

待ちの体勢の人には、「耳に心地よい浮ついた情報」、あるいは「もはや手の施しようがないか、打ち手の選択肢がかぎられてしまった悪い情報」しか集まってきません。

周囲にいるメンバーの電話中の言葉の端々、ccで届くメールの文中には「大事に至りかねない事象の予兆」が含まれています。

一つ、エピソードを紹介します。普段から温厚な性格で関連部門ともうまく業務上のやり取りを行っているAさんというメンバーが組織にいました。

ある日、社内へ電話を掛けているAさんの口調が妙にぎこちなく、また刺々しい。「Aさんらしくない」、そう思い、電話が終わったあとAさんの席へ行き、「どうした? 何かあった?」と私から口火を切りました。

詳しく聴いてみると、顧客からの依頼案件が社内で押しつけ合いになり、膠着状態に陥ったとのこと。万が一、顧客に影響が出てしまっては困るので、Aさんと私の2人で、揉めている先である社内関連部門へすぐに話し合いに行くことにしました。

当該部門へ行って話を聞いてみると、その部門内部で業務分担が明確に伝わっておらず、Aさんの相手方は該当業務を自部門の仕事と認識していなかったことが問題の原因であることが分かりました。

同部門の上司も話し合いに同席していたので、その後の動きはスムーズになり、顧客へ迷惑を掛けることもありませんでした。その後、Aさんは当該業務に自信を持ち、さらに積極的に業務を進めて多くの改善を実行しました。

2. 忙しいのは自分(上席)ではなく部下であると自戒する

組織の大小に関わらず、忙しいのは組織の長ではなく担当に近いレベルの組織メンバーであると、常に意図的に意識して執務する必要があります。

上位職にあるものは相応の権限と人脈を持っているので、業務上のアウトプットタイミングやアポイントメントに関しては調整能力や調整範囲が大きい。一方で、組織で担当レベルに近くなればなるほど、これらの能力や調整範囲はかぎられます。

昼休みであろうと自分が帰り支度中であろうと、組織メンバーが話を持ってきたら最優先で聴くことに徹する必要があるからです。例えば、こんなことが過去にありました。

昼休みに、若手社員で全社で使えるデータベースの作成・運用もこなせるソフトにもハードにも強いBさんが、悩ましい顔をしながら相談に来てくれました。データベースの要求仕様を満たすべき検索条件などに迷いがあり、私のところに来たということでした。

ソフト開発能力ではBさんは私より格段に上。しかし、どこか考えすぎているところがあったのだと思います。私もかなり頭を捻った挙げ句に、「例えば、こういう組み合わせを試みたらどう?」と間接的な回答を提供しました。

Bさんにはその程度のヒントで十分だったようで、「この考え方でやってみます。」と席へ戻っていきました。

数日経過した時点で、Bさんは問題点を乗り越え、やがてデータベースを完成させて試用を始めました。あとは一気呵成、社内に順次公開されたデータベースは国内外の多数拠点で歓迎され、該当データベースを使う人は急増しました。

おそらく、私へ相談せずともBさんは大した遅延もなくデータベースを完成させられたとは思います。私の役割はBさんの話を肯定的に聴いた上で、大して役に立たないヒントを提供しただけかもしれません。

とはいえ、ソフト開発的な業務は孤独を感じやすい。そのような心境になりかけたときに、私が自分の業務を止めて時間を割き、相談相手になったことがよかったのでしょう。Bさんはその後、次々と業務上のクリーンヒットを飛ばし、1を指示すると10の成果を持ってくるという大成長を遂げました。

3. メールのみに依存せず自らのフットワークも活かす

同じフロアにいる組織のメンバーに重要な案件依頼メールを送ったら、そのメンバーが着席しているときをねらって席まで自ら出向き、「先ほどメールを送ったけど今、開いて」と切り出します。

依頼した案件についてメールと重複する旨を断った上で、自らの思いと組織メンバーへの期待値、アウトプットの形式と納期を説明します。極力、話しながら要点やイメージ図を描きながら説明を行います。

パソコンの画面だけでの情報授受と、「話し言葉(聴覚)、目の前でストーリー性のあるメモを描く上司(視覚)」とでは、組織メンバーの理解の早さと深みがケタ違いに異なるからです。

後者が有効であるのは論を待たないはず。このときにできあがったメモはかならず組織メンバーに渡します。聴覚、視覚に加えて、リマインダーの役割も果たしてくれるからです。

そのエピソードとして、Cさんのケースを挙げておきます。Cさんはもともと行動力がある上に、周囲の人たちへの気配りも十分にできる組織メンバーでした。

Cさんへ数回、このようなアプローチを繰り返したところ、私からのメモを求めるようになり、同時にミーティングでも積極的にホワイトボードにキーワードやイメージ図を描くようになりました。文字情報だけのメールや書類では解決の糸口が見いだせないような案件でも、Cさんから会議でイメージ図を示されると、部門内外のメンバーが積極的に案出しをするようになりました。

既述ではありますが、ストーリー性のあるイメージ図が効果を発揮することがお分かりいただけるでしょう。このように周囲を巻き込むことができるCさんは、メンバーと自律的に次々と問題を解決して成果を出していきました。

自分が育てたと自信が持てる組織(仲間)と一緒に仕事ができるということは幸せで、心強いことです。

少し古い話ですが、国内最大手の自動車メーカーのトップが、米国の公聴会へ呼ばれて4時間も厳しい質問を浴びたあと、自社の米国工場を訪問したことがありました。そこで出迎えてくれた工場関係者の暖かい言葉と対応に、トップは男泣き。

このトップの例は、読者の皆さんにもあてはまります。組織の大小を問わず、組織を引っ張っているはずの上席が、実際には組織メンバーに背中を押してもらっている証です。自らの価値はその組織価値と等価なのです。

人と人の間、組織の中、組織の間などには、意識するかしないかは別として、無数の壁があります。壁があるかぎりは、組織は在籍する人数と等しいか、それ以下の能力しか発揮できません。そのような状態では、ルーティンワークはできても劇的に仕事の仕方を変えることはできません。

その壁を取り払うには、ここまで述べたような上席の取り組みが有効です。「人」「モノ」「金」が潤沢に使える時代は終わりました。これからは在籍する組織メンバーだけで最大の効果を上げる時代であり、マネジメントとは組織リーダーのコミュニケーション力なのです。

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