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自発的に動き、成果を出す現場力を育むポイント

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現場でしかわからないこと、現場でしか見つからないビジネスの種があります。こうした現場の気づきをビジネスに昇華させることが変化の激しい時代において、ますます大事になってきます。では、現場の気づきを放置せず、自発的にビジネスの改善や新し起案につなげるような自律した現場はどうすれば構築できるのか。数々の成果を挙げてきた三宅久利さんに「現場力の向上と強化」をテーマに寄稿していただきました。

PROFILE

三宅久利
三宅久利
パーソルキャリア i-common登録
大手電気会社で複写機、プリンター事業の化成品部門で生産、開発に携わった後、i-commonの立ち上げ初期から企業の生産改善に関わる顧問活動を行っている

1:「現状」を正しく把握できているか?

ある工場の生産改善を依頼されたときのお話です。現場を見たところ、部品倉庫・工程仕掛品・完成製品の在庫量が異常で、その合計は年間生産高の約35%。棚卸し資産回転率は約3回、回転日数で125日。この状態が3年前から続いていました。

ただし、最も大きな問題は別のところにありました。工場の大半の社員が、この異常過多在庫に危機感を感じていなかったのです。縦割組織ではよくありがちなことで、工場の全体像(部品・工程仕掛り・完成品)を「誰が/どの部署が」正確に把握するべきなのかが曖昧な状態であることも判明しました。

一般的に、在庫回転率が高く、回転日数が短いほど効率的な経営となります。しかし、同業種である製造業の平均(20~55日)と比べても、この会社の状況は明らかに異常値でした。その後、工場長以下主だった人と部品倉庫に行き、現状の在庫期間を調査したところ、約7割が該当。毎月末の棚卸時に「処置検討会議」を設け、6カ月を超過する物の取り扱い方法を決定する仕組みづくりを実施しました(会議体の名前づけは重要です)。

長期在庫部品の一番の問題は、品質経時劣化、品質変化です。ところが、開発設計部門の設計図面には一点一点の精密部品の保管方法、環境保管期限、期限超過時の品質確認などの規定が曖昧な表現であったり、記載言及がなかったりするものが散見されました。保管期限が過ぎた部品を再使用する場合、品質保証に明快な回答を出すことは困難となります。検討の結果、着荷後2年半を過ぎた精密機能部品は廃却、社長の決裁後、廃棄減損処理。その結果、在庫金額・倉庫スペースは約半減しました。

社内ルールや規定などは、決まっているようで決まっていないもの、項目はあるが空白記載になったものが散見されることがあります。大事なことはそのまま放置せず、現状を正しく理解すること。今まで当たり前と思っていたことを疑い、現状を認識することが重要です。

2:正しく「ルールや仕組み」が実行されているか?

上記の会社では新製品発売に向けて試作品の検討が行われていましたが、以下の問題が浮上しました。

  1. 開発部門で設計した組立時間が量産試作で再現せず計画数量が未達の恐れ
  2. 開発設計部門の想定通りの性能が工場の量産試作で再現しない

1と2の対策として、「量産移行ゲート」という仕組みが形骸化し、機能不全状態にあったため、「目標品質」「目標コスト」「目標生産性」のターゲットを明確にし、各々のテーマに責任者と検討チームを決め、各チームで毎月の進捗会議を開催し対策を行い、PDCAが回るようにチェックしました。こういった当たり前の仕組みが実行できていない会社は実は多いのです。

指示を出して4カ月後、設定目標の約8割が達成でき、残り2割は各チームの宿題として、量産開始までに達成するよう再度計画と実行プランの見直しを実施。一方、開発設計部門の最新図面が工場にわたっていなかった問題は全チームで再検討し、最新版の管理確認・文書の授受管理の見直しを行ってもらいました。

決めたルールや仕組みを正しく実行していくことは、当たり前のことでとても重要です。こういった問題は、私が関わった会社固有の問題ではなく、どこの会社でもよく起こります。開発期間の短縮要請、開発コストの削減要請など、「流れ」を阻害する事象は普通に起こります。

また、「量産移行ゲート審議」というのは単なる儀式ではありません。次のステップに移行するための「厳然としたゲート」です。掲げた目標値がクリアできなければ、「ゲート」は通過できない。通過するためには残課題を明確にして再検討し、目標を達成に努力する。このことに尽きます。しかし、この当たり前のことがなかなか実行できないのです。

3:ルールや仕組みを他部門とも共有し、浸透させる

次に起きた問題は、販売営業部門から矢継ぎ早に来る追加仕様の搭載要求で現場が混乱したことです。

どこの企業でも他部門との連携が上手くできておらず、壁ができてしまうケースは存在します。しかし、そのようなときこそ、販売営業部門の声が大きいことを理由にせずに、決めたルールや仕組みを正しく実行させることの意義や意味を、自部門だけではなく、他部門とも共有し、理解させ、実行してもらうかが重要です。

当事者間はもちろんのこと、全社としてもその状況をバックアップすることが大切です。

経営人材を目指す方へのメッセージ

机上では分からないことが現場に行くとたくさん見えてきます。支援する会社に行くとたいていの会社が年度方針を掲げてあります。ただし、実態は単なるスローガンになって飾っているだけ。経営トップの方針と部門長~担当者までの実行タスクが、ツリー構造でつながっている会社は稀です。

PDCAが重要であることは、みなさんお分かりのはず。しかし、多くの現場では気がついたら時間だけが経って計画通りに進捗していなかったということがよく見受けられます。PDCAを確実に回すためにご自分ならどうしますか?

モノ作りの現場でいろいろな「仕組み」「ルール」「会議体」が本来の姿で機能しているか? そのような眼で見てみると、現実の現場では必ずしもそうなっていない姿が見えてきます。あるべき姿と照らし合わせて現実(現場・現物・現実)にアプローチすることで改善の端緒を開くことができます。一足飛びに成果のみを求めることはできません。 

日本の名だたる会社が失敗の山を築いています。2017年8月6日付け日経新聞朝刊の一面には、官民ファンドとして産業革新機構のVB育成23社の苦い戦歴が掲載されていましたが、私はその中の3社で仕事をする機会に恵まれました。結果は、2勝1敗。その理由も自分なりに総括が必要だと思っています。

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