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なぜ、仕事がつまらないのか

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『“未来を変える” プロジェクト』では、記事の制作段階でさまざまな方と議論し、フィードバックをいただきながら制作しています。今回は月間150万PVを超える「仕事・マネジメント」をテーマにした人気ブログ「Books&Apps」を運営する安達裕哉さんに、「仕事がつまらない理由」について寄稿していただきました。

PROFILE

ティネクト株式会社 代表取締役 安達裕哉
安達裕哉
ティネクト株式会社 代表取締役
1975年、東京都生まれ。Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。大企業、中小企業あわせて1000社以上に訪問し、8000人以上のビジネスパーソンとともに仕事をする。現在はコンサルティング活動を行う傍らで、仕事、マネジメントに関するメディア『Books&Apps』を運営し、月間PV数は150万を超える

少し前の調査だが、厚生労働省の労働白書で「仕事への満足度が非常に低い」ことが報告されていた。

特に「仕事のやりがい」について満足感を抱いている人は全体の15%程度しかおらず、1980年台に比べると約半分となっている。現在の状況では、さらにこの数字が低下していてもまったくおかしくない。

同時に、日本人の平均給与も下がっていることを考えると、「給料は安い、仕事はやりがいがない」と踏んだり蹴ったり、というのが日本人の仕事に対する考え方の大勢を占めている。統計的には「仕事が楽しいです」と言える人は、一握りの幸運な人なのだ。

それでは、なぜ仕事がつまらないのだろうか。一般的には「意味を見出せない」や「評価されない」といった、よく聞く理由が挙がる。仕事が単調で、その意味もわからず、世の中の役に立っている実感もない。本人がそう感じている仕事は「やりがいがない」とみなされる。

これは、まったくもって正しい。著名な心理学者であるミハイ・チクセントミハイ氏はその著作の中で、

人は同じことを同じ水準で長期間行うことを楽しむことはできない。われわれは退屈か不満を募らせ、再び楽しもうとする欲望が能力を進展させるか、その能力を用いる新たな挑戦の機会を見出すよう自分を駆り立てるのである(『フロー体験 喜びの現象学』世界思想社)

と述べている。したがって、仕事を面白いものにするためには、漫然と仕事を行うだけではダメなのである。

数年前に訪問したあるIT企業では、高止まりしている離職率に経営者が悩んでいた。彼は、「待遇も悪くない、安定もしているのに、優秀な人から辞めていく。なぜだろう」と言っていた。しかし、現場に話を聞いていくと、社員たちの悩みも見えてきた。社員たちは口々に、「スキルアップの機会の少なさ」を口にしていた。

ある中堅社員は、「いい会社なんですけどね、不安なんです。このままここで働き続けて、他で通用しなくなるのが」と言っていた。

辞めたリーダーの一人は、「まあ、経営者もいい人です。お客さんも悪くない。でも、安定しすぎているんです。私は入社してから7年、ずっと同じ仕事をしていました。そろそろ違う仕事がしたいというのもありますし、自分の実力がわからなくなってくるんです。挑戦の機会がほしかった。そこへちょうど声が掛かったんです。迷いはありましたが、結局は転職して正解でした」と言った。

「安定した良い仕事」を提供すれば社員は居着いてくれるだろうという経営者の目論見は、結局「もっとも有能な人物」の流出を招いただけであったのだ。

では、われわれはどのように仕事に接するべきなのだろう。前出のチクセントミハイ氏はまた、次のようにも述べる。

もっとも楽しい活動というのは、自然なものではない。それは始めのうちは気の進まない努力を要求する。しかし、人の能力にフィードバックを送り返すという相互作業が始まると、それは内発的な報酬をもたらし始めるのが普通である。

面白い仕事には、常に「挑戦」と「競争」を必要とする。そして、その見返りとして得るものは、自分自身の能力の向上と、未知の体験がもたらす高揚感である。

また、江戸時代後期の思想家であり、農村を救うべく力を尽くした実践家でもある二宮尊徳氏は、

「積小為大」、つまり小さなことを怠らないで勤めれば、やがて大きな目標に達する。小さな創造の喜びを感得すれば、勤労に命が通い、張りが出て、能率が上がり、生産の質は向上し、やがては大きな力を得る。

という思想を展開した。奇しくも場所と時代を超え、「はたらくこと」について考え抜いた人びとが同じ結論に達しているところを見ると、この考え方には真理が含まれていると考えてよいだろう。「辛く、つまらない作業に耐えること」は仕事ではない。「工夫し、挑戦し、仕事の質を高めて、自らの力をつけていく」のが仕事なのだ。

残念ながら、このような「仕事」に関する考え方は、まだ一般的ではない。仕事は辛く、つまらないものであり、耐えることが重要だと考える方が多いのは事実である。チクセントミハイ氏は、次のようにも述べている。

現在のところ、その仕事の性質を左右する権能を持つ人びとの、仕事が楽しいかどうかについての関心はきわめて低い。経営ではまず生産性を最優先に考えなければならず、組合の指導者は安全や保証の維持を最優先に心掛けねばならない。短期的にはこれらの優先事項は、フローを生み出す条件との著しい不一致を生むだろう。これは残念なことである。なぜなら、もし仕事をする人が真に仕事を楽しむならば、仕事は労働者個人を利するだけでなく、遅かれ早かれ彼らはより効率的に生産し、現在予定されている以上の目標を達成することはほぼ確実だからである。

後日、先に紹介したIT企業の経営者は一定量の「チャレンジングな仕事」「新規事業」を社内に用意し、有能な社員の流出を食い止めるべく、手を打った。希望的観測かも知れないが、これからの企業は上のような取り組みを必須とすると同時に、こういった取り組みが花開けば、社員も会社もその果実を手にすることができる。

それが、これからの「仕事」と「企業」のあるべき姿ではないかと感じる。

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