ジェネレーションギャップをイノベーションにつなげる3つのアプローチ

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「ジェネレーションギャップ」というと、どのようなことを思い浮かべるでしょうか?

スマートフォンの急激な普及や、Twitter、Facebook、Line、Instagram・・・と次々に変化するコミュニケーション手段の変遷など、10年程前よりも技術面/環境面の変化が激しい世の中にあっては、若い世代の持つ感覚や市場への理解などが、多くのビジネスシーンにおいてこれまでよりも加速度的に重要なものとなってきています。

以前は、特定の領域で経験と専門知識を積み重ねたベテランが正解を知っており、若手はそれに従うことで業績を上げるといったパターンが、どんどん通用しなくなってきていることは、多くの方々が実感していることでしょう。

ある腕利きのエンジニアは、こんな指摘をしています。

ソフトウェアの世界ではテクノロジーの発展がすさまじいので、ベテランより若手の方が生産性が高いなんてことも起こりやすい仕事だと思っています。よくこの業界でも過去の知識や体験を根拠に、若手に対して見当違いな押し付けをしてしまうケースが見受けられます(老害とか言われてしまう)。

では、速い変化の流れの中にあって、この「ベテランと若手」といったジェネレーションギャップの良さは、どのようにすれば引き出すことができるのでしょうか?

今回の記事では、このテーマに関して、相対的に若い面々(20代前半〜30代前半)と、経験を積んだ面々(30代後半〜60代)の2つの属性のビジネスパーソン約50名により、議論を行った内容についてご紹介します。

そこから見えてくる「ジェネレーションギャップの活かし方」に関するさまざまな知見を、ぜひともご一読ください。

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それでは、本文です。

若手・ベテランの踏み込みによって3段階に分類できる「活かし方」

ジェネレーションギャップの3タイプの活かし方

今回の議論で出てきた、さまざまなジェネレーションギャップの活かし方は、要約すると上記のような3つのタイプに分類できます。左から順番に、徐々に若手とベテラン相互の干渉度合いが高まるにつれて、3つに区分されます。

その概略を、簡単にご紹介しましょう。

まず、「長寿の知恵型」というのは、ベテラン層からのアドバイスや経験が一方的に提供され、若手はそれを参考にして、自らの行動を修正したり、これまで起きたことに対する反省を行ったりするという「活かし方」です。

次に「スポンサー型」とは、主に企業の内部などで、若手主体で新しいトレンドを捉えたり、自由に新しい企画を考えるなどし、ベテラン層はその検討の手助けのための環境を用意したり、企画を実施するための承認などを積極的に行い、若手の活力が引き出されることに注力するという「活かし方」です。

そして3つ目が「相互作用型」。これは、ベテラン層、若手層ともに異なる観点や考え方を持ち寄り、それを1つの目的・目標達成のためにぶつけあい、新たな知見や企画、プロジェクトを生み出すという「活かし方」となります。

これら一つひとつについて、その具体的な内容と効能についてご紹介します。

ジェネレーションギャップを活かす「長寿の知恵型」

私、小学生の頃からお琴を習っていて、まわりは若手でも60歳以上という、大ベテランに囲まれて育ってきたんですよね。そこで聞かされてきたことを踏まえると、同世代同士の悩みの大半とかは解決できてしまったりして・・・。

そう切り出したのは、今回の議論に参加したある40代の女性。実業でも高いパフォーマンスを挙げ続けている彼女のこの言葉に、周囲の参加者も大きく頷きました。

この例は極端にしても、特定の業界の内容や短期的なトレンドから離れ、より普遍的な要素(例えば、部下のマネジメント、職場内コミュニケーション問題への対応方法など)について、多くの場合、ベテランの考え方やインプットは、役立つことがあります。

こうした内容が、直接若手の行動に対する命令であったり、業務上のプランに深く組み込まれてしまっていたりすると、若手としても反発したり、その内容と時代感との齟齬などが気になってしまい、受け入れるか迷ったり、そもそも心理的な障壁を感じてしまいます。

ですが、あくまでこうしたインプットが、1つの観点や抽象的な格言レベルのものである場合は、大いに若手が自らの行動に反映したり、振り返りを行う際に活用したりすることに役立ちます。

若手が参考にする際のポイントとして、「強制されない」「自らの捉え方によってアレンジしたり、反映する度合いを調整したりできる」ことが大切になりますので、このタイプの「ジェネレーションギャップ」については、直接の利害関係者でない方がうまく機能することが多いとの指摘がありました。

企業内で、直接の上下関係でないベテラン社員が「メンター」として配置される理由も、こうした利害関係を抜きにしたアドバイスの有用性を活かしたものと言えるかもしれません。

このテーマでは、「相手の世代を認める」という価値観が良いことだといかに伝えていくか、実践の仕方が大事ですね。 メンターなどの制度は強制的ながらも、かなりの確率でこの価値観の植え付けに成功しているのかも(40代 男性 流通大手)

ただし、こんな指摘にも注意したいものです。

長寿の知恵は、昔はひとが少なかったので希少価値のある情報ソースとして意味もあったのですが、多数派を占めるようになってしまうと岩盤になってしまいますよね(30代 男性 経営コンサルティング)

自分の中に軸があれば、それが基準となっていろいろな側面から与えられる意見に対して「これは聞く」「これは聞かない」という取捨選択ができます。ですが、軸が無い、ある意味無防備な状態で多くの意見に身をさらしてしまうと、取捨選択ができずに全部取り入れて失敗するという結果につながりかねないと思っています(20代 男性 大手ベンチャー創業メンバー)

ジェネレーションギャップを活かす「スポンサー型」

基本的に若手の感覚やセンス、そして活力を信じ、その面々が活躍できるような環境や物量的な支援を提供するのが、この「スポンサー型」というアプローチです。

この場合重要になってくるのは、若手が行う判断について、ベテランが最終決定権を持たない点にあります。DeNA創業者の南場智子氏は、講演の中で以下のようなことを語っています。

(自分自身が却下した、若手提案による事業に関して)別の会社が始めた全く同じ概念のサービスを始めて、むちゃくちゃ伸び始めたということがありました。あの若手のメンバーには、私が見えていなかったものが見えていたんだということですね。50歳を過ぎた私が、ダメ出ししていたらこうなるんだなと。会社の将来を一つ狭めてしまったなと反省しました。(DeNA南場智子氏が語った「経営会議より、UI/UXが大事。なぜ今デザインなのか?」 | CodeIQより引用)

特に、BtoCでマーケットを相手にするビジネスの多くの場合、消費者行動そのものが若手によって牽引されており、その動向を把握したり、もうすぐ大きなうねりになりそうなトレンドを掴む企画を創り出せるのは、同じ業界であってもベテランより若手であることが少なくありません。

一方で、多くの大組織・大企業では、ひと・モノ・金を動かす最終決定権はベテラン層に委ねられており、せっかく波に乗っているものを古い判断尺度でストップしたり、遅滞させてしまったりしては、チャンスをふいにしてしまいます。

こうした状況を捉えた上で、基本的な判断軸は若手にまかせ、その後方支援、若手がその感覚を活かすための快適な環境を創り出すのが、この「活かし方」におけるベテランの役割となります。

この「スポンサー型」は、多くの参加者が実感値をもって日々実践しているアプローチでもあり、下記のようなコメントが寄せられました。

決定権がないパターンが若手としてはつらいですね。 権限のあるひとがそれを委譲するのは簡単ではなさそうですし、僕らは「うん」と言ってもらう提案をすべき。ですが、案件によってはベテランの意見を踏まえて若手が決めるパターンが増えたら、もっと良い社会にできる気がしています(30代 男性 大手広告代理店)

最終的に自分が責任を負うのであれば決定権(権限)はなかなか手放せない実情もあるのではないかと思います。良い・悪いというよりは、決定権は権威・権限の源泉でもありますし、大組織に置かれたシニアミドル層の現状ではないかと思います。ただ、そこは思い切って委譲するということでしょうか。それは腹が据わったようなひとたちであり、大企業であってもリスクを張って成長してきたオーナー経営者的なひとがうまく活用できる型かと思いました(40代 男性 金融関係)

ジェネレーションギャップを活かす「相互作用型」

もっとも「若手」と「ベテラン」が密に接し合い、お互いに高い負荷感で行う「活かし方」がこの相互作用型となります。

相互作用、英語で言えばインタラクションの定義は、

自分の影響によって変化することを相手が受け入れ、相手の影響によって自分自身が変化することを自分が受け入れている状態。

となっており、この相互作用に関わることは、お互いがどんどん変化していくことを前提としています。

例えば、銀行業務や生命保険業務の世界に、新しくインターネットやスマートフォンによるソリューションを持ち込もうとするときをイメージしてみましょう。この業界に長年勤務してきたベテラン層は、金融サービスとしての堅牢性・信頼性といったものを重視し、そのために必要な複雑な手続きを尊重します。

一方で、スマートフォンによる快適なサービスに慣れ親しんだ若手層は、振り込みや決済、保険加入といったことが簡便にできることを尊重します。

このとき、新しいサービスを創るからといって、上記の「スポンサー型」のような形態はとりづらくなります。簡便性だけを重視した結果、金融機関として詐欺を始めとした不正に直面しやすくなってしまったり、結果的にサービスの信頼性が落ちることになったりしてしまえば、金融機関の存在意義そのものが問われることになります。

結果的に、「簡便性か」「信頼性か」といったトレードオフに代表されるようなさまざまな議論が発生することになります。

こうした議論が実りあるものになるためには、それぞれの分野に精通した人材が必要となり、この場合であれば「サービスの簡便性などを深く解っている若手」と「どういう手続き・防御施策が、信頼性の向上に寄与しているかを理解しているベテラン」の両者が不可欠となります。

ジェネレーションギャップはアイデアの多様性という意味で、本来は企業の競争力の源泉なはず(30代 男性)

そもそもなぜジェネレーションギャップの活かし方を考える必要があるのか?それは、既存の社内リソースを最大限に有効活用しないと成果を出しにくい環境変化のせいかと思われます。30年前の上下関係・相互作用のままだと ”成果につながり難い環境” のせいでしょう(30代 男性 組織コンサルティング)

との指摘ももっともです。一方で、下記の指摘にあるような取り組む上での難しさも存在します。

若年層は「成長」という推進剤があるので、建設的なジェネレーションギャップに触れると変化することができますが、ベテランは成長余地が限られることから、きわめて意識的に変わろうとしないと変われないという構図があると思います。若手とベテランとの間で、変化に対する努力ギャップがあると思います(30代 男性 大手デベロッパー)

相互作用型を実践するためのポイント

議論が進むにつれ、この「相互作用型」が新しい知見を生み出し、「ジェネレーションギャップの活かし方」として効能が高いとの指摘が増える一方で、その実現に向けて超えるべきポイントがいくつか提示されました。

リスペクト

お互いの壁を壊す、ジェネレーションギャップを「Wrong(間違い)」として捉えるのか「Difference(違い)」として捉えるのかは、リスペクト(相手への尊敬)によって変わると感じました(30代 男性)

どの類型でも、うまくいくパターンはリスペクトがないと始まらないかなと。というのも、不快感をもっとも感じやすいであろう長寿の知恵型も、リスペクトがあれば受容可能性は高まると思うので、どの類型もまずは相手を認め、リスペクトするということが肝要かと。リスペクトの範囲は人間全体でもなく、いわゆる一芸でもそのひとを認めているところがあれば、ある程度その受容する前提としての閾値は下がるのかな?(30代 男性 技術関連コンサルタント)

参加者の多くからは、原体験などに起因するジェネレーションギャップは、そのギャップそのものを認識することが困難であり、お互いに自分の自然な感覚・捉え方との違いに直面したとき、相手に対するリスペクトがなければ、拒否や否定につながってしまい、新たな視点に到達することが難しいとの指摘がありました。

リスペクトがお互いに低い場合は、相手の話の一挙手一投足についていちいち「それは正しい、それは間違っている」と反応する善悪判断モードに常に陥ってしまい、自分との違いが批判や対立の原因となってしまいます。

逆に、リスペクトがあれば、「このひとは、なぜこの点に関して自分と違う捉え方をするのだろう?」と捉え、そこから追加的な質問が生じ、それまで理解されていなかった背景や新たな情報が共有されていきます。

柔軟性

何か新しいものを生み出すための議論や協働では、お互いに相手の知識や経験を共有するだけではなく、そのインプット、新たに見えてきた景色に応じて、積み上げてきた考え方やロジック、あるいは前提そのものを刷新しなければならなくなることがあります。こうしたとき、自分のそれまで提示した内容が誤りであったことを認めたり、それまでの自分のアクションの前提となってきた考え方すら、訂正・修正・更新を迫られることとなります。

こうしたとき、実際にこのような誤り、あるいは認識の刷新を自ら受け入れ、そのことを周囲に共有し、場合によっては謝罪もしながら新しい方向に取り組むことには、かなりの柔軟性が要求されます。

思考の柔軟性は、身体的な柔軟性と同様に、普段から多くの場面でこうした変更を受け入れることをしてきていないと失われてしまいがちであり、大きな方向転換などに抵抗してしまう恐れがあります。

共通目標

お互いに十分リスペクトし、高い柔軟性を有しているチームの場合、新しいものに取り組むための高い目標、共通理念といったものが必要となります。もしこれが存在していなければ、何もお互いに高い負荷を背負ってまで新たなことに取り組む必要もなければ、あえて衝突につながるリスクをはらむ状況に取り組むこともありません。

結果的に、もっとも必要となるのは、若手はベテランの、ベテランは若手の観点を理解し、受け入れ、それを統合した新たな考え方や観点を創りだすという所作となります。

今回の議論でも、

交流・需要・共生(1つの目標に向かって同じ向きで歩んでゆくこと)ができたら、世代にかぎらず異なる価値観の人はともに活躍できるはず(20代 女性)

自分は吸収して変化するために、何よりも柔軟であることをこれまでずっと心掛けてきたのですが、世代間で価値をやりとりするときに、上記の3つのフレームで「いま何をやりとりしているのか」を必要に応じて確認し合うことができれば、不必要な誤謬が起きないかと思いました(30代 男性 著名データサイエンティスト)

いろいろと新しいものを企画する中で、どうしてもスポンサー型だけでは相手(多くの場合、若手)の足らない部分を補えず、結局かなり手を突っ込んでしまうことが多かったです。しかし最近、ビジョンや世界観をまず共有していくことを大事にしています。その上で、お互いの強みを活かした形でのパートナリング(プロジェクトにおいては、あまり部下・上司の関係を意識しない)を図る方法がうまくいく気がしています(40代 男性 大手SIerプロジェクトマネジャー)

といった、あえて労力を割いてでも相互作用型を推す原動力として、共通の目標の存在を挙げる参加者が多数を占めました。この点については、参加者からさまざまな観点が提示されていました。

「相互作用型」をやるためには、やっぱり共通目標に行き着きますね。そして、そのビジョンやコンセプトは、実はトップ・リーダーから出ているのでは?と思ったりしました(30代 男性 経営コンサルティング)

いかがでしたか?

普段、ジェネレーションギャップを活かす機会がある場合、自分自身が発揮している、あるいは相手が自分に対して発揮しているモードは、

  • 長寿の知恵型
  • スポンサー型
  • 相互作用型

のいずれであるか、一度チェックしてみてはどうでしょうか。

[編集・構成]doda X編集部

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