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海外経験者50人が教えるグローバルの働き方3つの観点

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全世界の貿易総額の推移
出所:IMFデータ・ソース(DOTS)を基に編集部にて制作

この図は、全世界の貿易金額の総量推移を表しています。リーマン・ショックによる2008年の落ちこみを除くと、過去10年でその総額は約3倍に成長。直截的な経済という側面だけを捉えても、世界は強烈につながり始めています。

米国の国別輸入金額推移

次の図は、アメリカの国別輸入金額の推移。2000年頃までは、日本が最大の輸入国として米国経済に大きなインパクトを持っていたのが、現在では赤線の中国が、圧倒的な存在感を示します。日本は「中国以外」の貿易国という位置づけと言っていいでしょう。

貿易金額だけとってみても、この10年で激変してしまっている世界の関係。世界はこれだけにとどまらず、さまざまな観点や局面で激変し続けています。

一方で、私たちビジネスパーソン個人を取り巻く働く環境は、どれほど変化してきたでしょうか。そして、この変化し続ける「グローバルの働き方」に対して、私たちはどのようなことをしておくべきか、何を知っておくべきかーー。

そんな課題意識をもとに、本記事では海外での勤務経験があるビジネスパーソンを中心として50名の参加者が集い「日本とグローバルの働き方」について徹底議論した内容を取りまとめています。

今回の記事のアウトラインです。

INDEX読了時間:5

それでは、本文です。

「グローバル」の思い込みから解放されるための観点を持つ

日本を起点に世界を考えると、以下の3つの「とらわれ」があるのではないか。これが、まず参加者の間でヒートアップした観点でした。

1:「日本と世界」≒「日本と米国」と捉えがち

2:「日本」「世界」と一括りにして考えがち

3:優劣が前提に立ち、特に「日本」のデメリットについてフォーカスしがち

この3つを組み合わせた典型的な話が、

 

「日本人は外国人と比べて自己主張が弱く、例えばセミナーなどが終わった後にほとんど誰も挙手をして意見を述べることができない。世界に立ち向かっていくためには、もっと個人として自己主張する強さを磨くべきだ。そのためには、英語も当然のようにできなくては話にならない」

というものです。

実際に海外での勤務経験が豊富な参加者、外資系企業で働く参加者、海外で働いた経験のある参加者などが議論をすると、まったく違った側面が見えてきました。

結論から言えば「世界の中で自分たちの位置を客観的に見定める“観点”を持つことが働く上で重要だ」ということです。

「自分たちが世界の中で現在どのような位置に立っており、他の国、地域で生きる人たちと相対的にどのような関係を築くべきか?」

この自分たちの位置を捉えるための具体的な観点を持つことによって、そこから何を仕掛けるべきなのか、どのようなことにこれから取り組むべきなのかが見えてくるかもしれません。

グローバル観点 1:数字化された文化的価値観を活用する

IBMの人材開発部長を歴任し、世界各国のIBM社員のデータを仔細に調査したヘールト・ホフステード氏は、その膨大な調査データを背景にこのような指摘をします。

「日本人がセミナーの後に誰も手を挙げないのを見て、アメリカ人は“もっと自己主張をするようにしなさい”とたしなめる。しかし、それは日本人に自己主張の力がないからではなく、単純に日本人の持つ“集団主義”という文化的価値観が彼らに“全員にとって役立つ質問をしなければ”というプレッシャーを与えるからだ」

「だから、日本人にはあらかじめ質問したい内容を数名で相談し、それから手を挙げるということをすると、驚くほど質問の数が増える。これは、この現象が個人の能力差に起因するのではなく、文化的背景の違いに起因することを示している」

集団主義とは、一言でいえば「集団全体に対して一人ひとりが貢献することで、全体が幸福になる」という文化的な考え方。その対局にあるのが「個人一人ひとりが、まずは自分の幸福を追求しなければ、全体への貢献などできない」という個人主義の考え方です。

この「集団主義↔個人主義」という軸の上に、世界中の国々がさまざまに分布することを発見したのが、ホフステード氏の有名な研究結果です。これらの特性は以下の図のように数値化されており、数値が高い国ほど個人主義が強く、低いほど集団主義が強いことを示します。

50カ国と3つの地域における個人主義指標の値
スコアによる順位 国または地域 個人主義スコア スコアによる順位 国または地域 個人主義スコア
1位 アメリカ 91 28 トルコ 37
2位 オーストラリア 90 29 ウルグアイ 36
3 イギリス 89 30 ギリシア 35
4 カナダ 80 31 フィリピン 32
4 オランダ 80 32 メキシコ 30
6 ニュージーランド 79 33 東アフリカ諸国 27
7 イタリア 76 33 旧ユーゴスラビア 27
8 ベルギー 75 33 ポルトガル 27
9 デンマーク 74 36 マレーシア 26
10 スウェーデン 71 37 香港 25
10 フランス 71 38 チリ 23
12 アイルランド共和国 70 39 西アフリカ諸国 20
13 ノルウェー 69 39 シンガポール 20
14 スイス 68 39 タイ 20
15 旧西ドイツ 67 42 エルサルバドル 19
16 南アフリカ共和国 65 43 韓国 18
17 フィンランド 63 44 台湾 17
18 オーストリア 55 45 ペルー 16
19 イスラエル 54 46 コスタリカ 15
20 スペイン 51 47 パキスタン 14
21 インド 48 47 インドネシア 14
22 日本 46 49 コロンビア 13
22 アルゼンチン 46 50 ベネズエラ 12
24 イラン 41 51 パナマ 11
25 ジャマイカ 39 52 エクアドル 8
26 ブラジル 38 53 グアテマラ 6
26 アラブ諸国 38  

出所:『多文化世界 — 違いを学び未来への道を探る』ヘールト・ホフステードら著(有斐閣)

この図で世界を比較すると、日本は米国に比べると集団主義的であるものの、シンガポール、タイ、韓国などのアジア各国、さらに南米の国々などは日本よりもはるかに集団主義が強いことが分かります。

ホフステード氏は、この「集団主義↔個人主義」以外に下記の6つの軸で世界各国の文化が異なることを明らかにしており、それらを数値化しています。

ホフステード氏の6つの次元

1. 権力格差(小さい 対 大きい)

2. 集団主義 対 個人主義

3. 女性性(やさしい)対 男性性(タフ)

4. 不確実性の回避(低い 対 高い)

5. 実用主義(規範的 対 実用的)

6. 人生の楽しみ方(抑制的 対 充足的)

これらの軸に沿って世界各国をプロットすると、必ずしも日本とアメリカが対局に位置することばかりではないことにも気づかされます。

例えば「権力格差」という軸では、権力格差が大きい文化では「権力とは善悪ではなく、社会的な事実である」という捉え方をするのに対して、権力格差の小さい文化では「権力は、正当な理由のもとに、善悪の判断に従って行使されなければならない」という強い感情が支配します。

この指標については、下図のように日本とアメリカは近い位置に存在しており、例えば「高い地位の人物が、その権力によって裕福になるのは許されるべきことではない」といった感覚を、両国ともに持っています。

50カ国と3つの地域における権力格差指標の値
スコアによる順位 国または地域 権力格差スコア スコアによる順位 国または地域 権力格差スコア
1 マレーシア 104 27 韓国 60
2 グアテマラ 95 29 イラン 58
2 パナマ 95 29 台湾 57
4 フィリピン 94 31 スペイン 57
5 メキシコ 81 32 パキスタン 55
5 ベネズエラ 81 33 日本 54
7 アラブ諸国 80 34 イタリア 50
8 エクアドル 78 35 アルゼンチン 49
8 インドネシア 78 35 南アフリカ共和国 49
10 インド 77 37 ジャマイカ 45
10 西アフリカ諸国 77 38 アメリカ 40
12 旧ユーゴスラビア 76 39 カナダ 39
13 シンガポール 74 40 オランダ 38
14 ブラジル 69 41 オーストラリア 36
15 フランス 68 42 コスタリカ 35
15 香港 68 42 旧西ドイツ 35
17 コロンビア 67 42 イギリス 35
18 エルサルバドル 66 45 スイス 34
18 トルコ 66 46 フィンランド 33
20 ベルギー 65 47 ノルウェー 31
21 東アフリカ諸国 64 47 スウェーデン 31
21 ペルー 64 49 アイルランド共和国 28
21 タイ 64 50 ニュージーランド 22
24 チリ 63 51 デンマーク 18
24 ポルトガル 63 52 イスラエル 13
26 ウルグアイ 61 53 オーストリア 11
27 ギリシア 60  

出所:『多文化世界 — 違いを学び未来への道を探る』ヘールト・ホフステードら著(有斐閣)

一方で、この軸で世界各国を捉えると、マレーシアやインドネシアなどを始めとした権力格差スコアの高い国々では、権力の行使や社会格差は必要なものと認識され、権力の偏りが存在することで社会が安定することを肯定する傾向があります。逆に権力格差の小さな北欧の国々の人びとにとっては、こうした権力の行使は嫌悪と非難の対象となり、相容れることが難しくなります。

このホフステード氏の「文化的価値観」の尺度を筆頭とした、数値的な各国の文化プロットを把握すると、決して日本と米国という対抗軸だけで世界を語ることはできず、その他の多くの国々が、さまざまな軸で散らばっていることを感覚的に把握できるようになります。

グローバル観点 2:海外の目線で日本を評価する

日本だけがグローバルに対応できていないわけでもなく、すべての国にローカルというもの、グローバルにどのように対応すべきかという課題はあります。

第1の観点として紹介した数字的な世界の分布を踏まえ、参加者からはこのような声が聞こえてきました。

どうしても「グローバルの働き方」という話になると、日本人は「英語が苦手」「個人の意見を表明できない」「新しいことへのリスクを取りづらい」など、デメリットを挙げ、その部分に関するギャップを埋めようという議論になりがちです。

しかし、海外経験の豊富な参加者、海外からの参加者からは、以下のような指摘がありました。

「日本の一括新卒採用は、私が仕事をしている国のものと比較するととてもいいシステム。自分の国では、一流企業に就職するために社会人浪人も当たり前だし、就労をするのが後ろ倒しになる。多くの学生が安定的に就労できるのは、個人の成長という観点でも羨ましい」

「イノベーションが苦手苦手とよく言われるけれども、とにかく日本の緻密で精巧な技術は、海外でとても高い評価を受ける」

このように、特に自国に関する事実は自分たち自身で把握することは難しいです。むしろ、海外の各国からの評価を知ることで、自分たちのことを深く理解することが可能になってくるのかもしれません。

海外留学の経験があるので(この点は)うんうん、と思うところが多いですね。自分のポジショニングを客観的に測定することは、正直国内にいたら難しいと思います。自分がどれだけのバイアスを持っているかに気づくと、いろいろなことが表層的なところよりもう少し深く見えるようになる気がします(30代 男性 ベンチャーキャピタリスト)

グローバル観点 3:時間軸を意識した検討をする

グローバルの働き方について議論をしていると、参加者の多くは、現時点での課題感や困難よりも、近い将来に対する不確実性や不安に対して多くの意識を払っていることに気付かされます。今回の議論でも、

・世界的に成長した海外のサービスが、その豊富な資金量を元に日本市場に入ってきたら、既存プレイヤー(である自分)はひとたまりもない

・iPhoneのように全世界にあまねく受け入れられるサービスを日本は作るのが難しく、いずれ淘汰される側に回ってしまいそう

・中国やインドといった新興国が急成長することで、日本の存在感は薄れてしまいそう

など、10〜30年先の未来に対する漠然とした不安が、話題の多くを占めました。

こうした状況に対処するための3つ目の観点が、時間軸を意識して「すでに確定した未来」に関する情報を集めるというアプローチです。

例えば、上記のコメントでもあった近い将来の各国のGDPについては、多くの国々、研究機関から予測が出されており、その標準的なシナリオはおおむね同じような各国の推移を示しています。

世界のGDP推移予測
出所:Dreaming with BRICs:The Path to 2050(Goldman Sachs)

同様に、これらのシナリオのベースともなっている各国の人口動態(人口構成の推移)については、より高い確度でその予測値が示されています。

これらの未来に関しては、すでにほぼ確定してしまっている要素です。これらについてあらかじめ把握し、理解するだけで、今後の検討を行う上で不確実性はかなり絞り込むことができ、将来への予測が行いやすくなります。

こうした予測を行うことで、世界の動向を踏まえた未来への打ち手を検討することが可能となり、ただ受け身で漠然と不安を感じるのではなく、自ら先手を打ち、主体的に未来に挑むことが可能になってくるのかもしれません。

3つの観点を「日本」から「個人」へと転換する

さて、ここまでご紹介した3つの観点ですが、今回の議論でフォーカスされたのは、こうした観点について「日本」というくくりで捉えるのではなく「個人」として捉えることの重要性でした。

「海外と日本という問題をかなり大きく取り扱うのが、むしろ日本の特徴なのかもしれません。集団主義がこの問題の原因であるのかもしれませんし、1人で海外を体験することが大事なのではないかとも思います」

「日本や日本人についても同様で、年代、どのような社会に生き、どんな人たちに囲まれて生きているかによって、同じ日本人でもかなりの差異があります」

といったコメントが、参加者から多く寄せられました。そこで、ここまでご紹介した3つの観点を、どのように「個人」へと転化できるのか、そのヒントをご紹介します。

個人への観点転化 1:自分自身の文化的尺度を意識する

最初の「数値化した文化的尺度」と「個人」との掛け合わせで言えば、同じ日本の中でも「個人主義↔集団主義」の傾向は、ひとによってかなりの違いがあることが知られています。

ホフステード氏はその研究の中で「例えば、アカデミックな世界の中などでは集団主義の高い国であっても、その集団だけは個人主義が強いことが観察される」など、1つの国の中でもさまざまな偏りがあることを指摘しています。

個人としてグローバルに挑むのであれば、ホフステード氏の6次元に代表されるような特性を自分個人も持っていることを認識する。その上で、ビジネス上で相対する相手に対しても、この尺度を用いて特質を把握し、その上でコミュニケーションを模索する必要があるかもしれません。

そして、この尺度は、海外だけでなく国内であっても有効です。日々相対する相手についてあらためて把握をし、その違いを知った上でやりとりを行うことで、結果的に海外の人材、海外の企業とのやりとりに応用することが容易になるかもしれません。例えば、個人主義が強い国の人を相手するときには、自己主張を強めにするなどの応用ができます。

個人への観点転化 2:英会話サービスを利用して情報を集める

第2の観点「海外から見たフィードバック」については、日本に滞在するさまざまな国出身の外国人と接点を持ち、自分のビジネスや仕事上の課題などに関してざっくばらんに議論をすることで、多くの観点を得ることができます。

具体的な方法としては、例えばカジュアルな英会話の授業を、さまざまな国出身の講師と設定する方法があります。

これらの講師の多くは日本語もかなりのレベルで習得しているため、込み入った内容については英語だけでなく日本語でやりとりをすることも可能です。こうした機会をつくり、自分が日々手がけているビジネスについてざっくばらんに議論をすることで、意外な一面、意外な海外での評価を得ることが可能となります。

実際、今回のやりとりでもある参加者が、

「ラーメン店は国内の起業が最も多い反面,倒産件数も多いと聞いたことがある。この業態は国内で切磋琢磨しているので世界的にクオリティが高いのではないか?」

と質問すると、米国在住の別の参加者が、

「ラーメンは現在、サンフランシスコなどで大変な人気を博してメジャーフードになりつつある」

などのフィードバックがありました。自分たちが確信を持てない仮説や世界との相対感覚は、こうした海外にいるひとたちとのやりとりによって、実感できるレベルにまでシャープにすることが可能かもしれません。

個人への観点転化 3:シナリオ・プランニングで未来を予測する

3つ目の観点「時間軸で捉える」に関しては、まず個人として今後10年〜30年の世界がどのように推移するか、そして自分が直截的に関わる分野については、どのようなことが起こりうるかを調査し、議論することが有効だと考えられます。

この未来予測は、自分たちとは無関係の大枠での議論をしようとすると、膨大なデータと要素に振り回されてしまうこととなります。

そこでお薦めなのが、ロイヤル・ダッチ・シェルなどで活用されている、「シナリオ・プランニング」というアプローチです。

このアプローチですが、以下の図に示すような8つのステップを経て、その中で自分の将来に関係する要素や必要なデータのみを集めるという手順をとります。ですから、自分が関わる領域についてのみグローバルなデータや観点を集めることができます。

シナリオ・プランニングの全体像
詳細は『シナリオ・プランニングの技法』ピーター・シュワルツ著(東洋経済新報社)

いかがでしたでしょうか。

最後にこの内容について、老練な海外在住経験のあるコンサルタントが次のようなコメントを送ってくれました。

日本の多くの人は「日本人vsグローバル」論が好きすぎる&自虐思考(⇒「やっぱり日本人はダメなんだ!」思考)が強すぎます。それに乗じて、マスコミや“知識人・学者”が「日本はダメだ」産業で金儲けしつつ、多くの日本人をさらなる自虐に追い込んでいることに強い憤りを感じています

今回ご紹介したグローバルの働き方における3つの観点を参考にしつつ、日本とグローバルの捉え方、海外と自分個人との関係をレビューしてみるのもよいかもしれません。

[編集・構成] “未来を変える”プロジェクト 編集部

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