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自分の殻を破る学び方―いま、求められる「深い学習」とは

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“未来を変える”プロジェクトでは、イベントに参加いただいた方にご自身の経験を踏まえた記事を“社外編集長”として執筆いただいています。本記事では、証券取引所でCSRを担当している飯田さんに、自分と全く異なる価値観と向き合うことによって自らの価値観に変容をもたらす「深い学習」の実態について2回に分けて執筆いただきました。殻を破るキッカケになるかもしれません。

PROFILE

証券取引所CSR担当 飯田一弘
飯田一弘
証券取引所CSR担当
証券取引所のCSR担当として、投資と起業に関する教育プログラムの企画と運営に従事。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。2014年までNPO法人Living in Peaceで児童養護施設の支援に従事。家族は、妻と二歳の男の子。 http://mydeskteam.com/casefile/887/

あなたが経験した、人生を変えるような出会いは何でしょうか。私にとってそれは、児童養護施設の子どもたちを支援するNPO活動に関わったことです。

「人はそれぞれ機会を持っており、それをどう生かすかが人生というものだ」

それまで私はそう考えていました。しかし、この活動を通じて与えられる機会次第で人生は大きく変わってしまうことを学びました。それ以来「すべてのひとに機会が提供されるような世の中の実現に貢献したい」というのが私の指針となりました。
今では、教育が私の仕事になっています。

児童養護施設との出会いは、異なるものと向き合うことによって自らの価値観に変容をもたらす経験、すなわち「深い学習」でした。

深い学習は、自分の心がより震える対象を見つけ、人生を主体的に生きて行くために重要なものです。また、現代の激しい環境変化に適応していくために必要なものでもあります。世界への理解を深め、物事をシンプルに見えるようにしてくれる効果もあります。

本記事では、そんな「深い学習」の実態について、私や他のビジネスパーソンの実体験を踏まえながらお届けします。

本記事の構成です。

INDEX読了時間:3

それでは、本文です。

破壊と再構築を繰り返す 〜日々の学習と「深い学習」との違い〜

私たちは、日々「学習」しています。会社で仕事のやり方を学んだり、週末に英語を学んだりしながら、知識・物事の見方・好き嫌い・信念など、さまざまなものを獲得しています。それらの蓄積が自分を形作っていて、自分と分かちがたく結びついています。

「深い学習」は、こうした日常的な学習とは異質なものです。培ってきたものが否定されたり、現実との矛盾に直面したりする出来事が契機になります。自分の変化を受け入れ、取り込むことを通じて自分をバージョンアップさせる、それが深い学習です。

学習は「積み上げ型」と「破壊・再構築型」に分かれます。多くの場面では積み上げ型で事足りますが、それだけではどうにもならないことが人生には起こります。自分の殻を破って変化するときに発揮される学習が「破壊・再構築型」の学習(=「深い学習」)なのです。

「積み上げ型」学習と「破壊・再構築型」学習

外界から「異物」を取り込む 〜「深い学習」の契機〜

破壊・再構築型の学習は、生き物が外界から異物を取り込むプロセスにも似ています。

「異物」を取り込む学習
  1. 生き物は外界との境界によって異物の侵入を防いでいる。
  2. 体内に病原菌が侵入すると、組織が破壊され体は弱くなる。
  3. 体内で病原菌に対応する抗体がつくられ、病原菌が無毒化される。
  4. 抗体という新しい要素が生まれ、より強い体にバージョンアップすることができる。

自分にとってまさに異物と呼べるような強烈な刺激から深い学習は始まります。総合商社に勤務しながら、子どもの貧困問題に取り組むNPO「Living in Peace」のリーダーを務める倉中翔太朗さんは、ご自身が体験した深い学習についてこう語ります。

私は地方の出身です。その地方が自分にとっての世界のすべてでした。広い世界を見てみようと思い立ち、大学生のときにインドに行きました。そこで、貧困にあえぐひとたちや、まもなく死を迎える人ひとたちを間近で見て強い衝撃を受けました。それまでは、自分は田舎で育ったごく平凡な人間だと思っていました。しかし、実は色々なチャンスが与えられてきたこと、自分の与えられている立場には責任があることを初めて自覚し、ちゃんと生きようと決意しました。今振り返ると、その経験が“自分はどう生きるか”という大きな指針になっています(倉中翔太朗さん)

このように、外界から異物を取り込むことにより深い学習は始まります。容易には受け入れられない現実、まったく異なる価値観や考え方などに出会うと、もやもやした気持ちや違和感を感じます。この違和感と向き合うことが深い学習のきっかけになるのです。

異物を取り込み深い学習に進むと、どのようなことが起きるのか。次節では、深い学習の楽しさについてお話します。

世界への理解が深まり物事がシンプルに見える 〜「深い学習」の楽しさ〜

あなたは「学習」という言葉から、どんな感情を連想しますか。

面白い? つまらない? 楽しい? つらい? わくわくする? 退屈?

“未来を変える”プロジェクトのイベントで学習について語り合ったとき、学習とは「楽しくないもの」で「必要に迫られて嫌々ながら取り組むもの」という見方を多くのひとがしていることに、私は少なからず驚きました。

私の場合、児童養護施設を知って深い学習が始まったとき、自分の視野が広がって世界が新しく見えることにワクワクし、そのプロセスを楽しんでいました。

「自分には、自分が見たいものしか見えない」ということが、もっとも大きな気づきでした。児童養護施設は前から存在していたけど、関心を持たないとその情報は自分には入ってきません。

Living in Peaceで議論している筆者
Living in Peaceで議論している筆者

見たいようにしか見えない。それが今も昔も変わらないひとの基本的な有り様です。それでも、自分の目が節穴だと理解していれば、対処することはできます。賢くなるごとに、世界への理解が深まり物事がシンプルに見えるようになることを、とても面白いと感じました。

培ってきたものが否定されたり、現実との矛盾に直面したりと、深い学習は産みの苦しみをともないます。しかし、その苦しみを乗り越えてバージョンアップした自分を得ることの喜びは、その苦労を補って余りあるものなのです。

イベントでは、深い学習の瞬間は苦しくて仕方がなくても、後から振り返るとなぜか楽しい記憶になっているという意見がありました。

「フロー理論」の提唱者であるミハイ・チクセントミハイ教授によれば、自分の限界に挑戦しているような状況では、脳の処理能力は限界に近づくそうです。そうすると、本当は楽しんでいてもそれを認識できない。このような場合に、後から振り返ったときには楽しかったと感じるそうです。

学習のプロセスから「楽しみ」という報酬を得ることができると、それを推進力にして学習を進めることができます。目に見えた成果がすぐには出ないからこそ、これはとても貴重な燃料です。目的達成のための手段としてだけではなく、純粋にそのプロセスを楽しみながら学習に臨めるひとは「学習の達人」と呼んでよいでしょう。「好きこそものの上手なれ」ということわざがぴったりとあてはまります。

出会いの機会の少なさと生理的な拒絶反応 〜「深い学習」の難しさ〜

深い学習に取り組むのは容易なことではありません。その難しさの1つは、積み上げ型の学習とは異なり、きっかけが偶然によること。つまり、自分ではなかなかコントロールできないことにあります。私が児童養護施設の支援に参加したのも、たまたま大学院で出会った友人の活動に参加したことがきっかけ。深い学習がしたいという意識はまったくありませんでした。

また、自分にとっての「毒」を取り込まなければいけないことも、深い学習特有の難しさの1つです。深い学習には苦痛がともないます。自分が信じてきたもの、大事にしているもの、自分自身を投影しているものが、実は間違っているかもしれないと、アイデンティティを壊されたり傷つけられたりするためです。この苦痛をおそれるあまり、深い学習の機会を素直に受け入れられないかもしれません。

私は「起業体験プログラム」という中高生向けの教育プログラムを運営しています。参加者は「起業家」としてゼロからビジネスを立ち上げる経験をします。このプログラムにおける最大の学びの機会は「失敗」の中にあります。会社の経営はとても難しいので、成績優秀な生徒でも当たり前に失敗します。

そこで自分のちっぽけさや未熟さを直視することが「深い学習」の契機になるのですが、他のメンバーのせいにしてしまうなど、自分の小さなプライドを守ろうとしてしまいがちなのです。このようなことは、私たちの誰しもが、日常行ってしまっていることではないでしょうか。

「起業体験プログラム」では、参加者が最大限の学びを得られるように、振り返りの時間を設ける、メンター役を用意するなどの工夫をしています。このように、深い学習に取り組むためには、1. 出会う機会の少なさ、2.生理的な拒絶反応という、2つの難しさを乗り越えなければならないのです。

いかがでしたか。「深い学習」には、積み上げ型の学習とは異なるきっかけ・楽しさ・難点があるということがお分かりいただけたでしょうか。

後編では、深い学習を行なっていくために、深い学習ならではの難点をどのように乗り越えればよいのか。その方法をご紹介します。
後編はこちら 「いま、求められる「深い学習」の実践法 〜自分の殻を破る4つのコツ〜」
https://mirai.doda.jp/theme/learning/deep-learning-2/  )

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