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いま、求められる「深い学習」の実践法 〜自分の殻を破る4つのコツ〜

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“未来を変える”プロジェクトでは、イベントに参加いただいた方にご自身の経験を踏まえた記事を“社外編集長”として執筆いただいています。今回は証券取引所でCSRを担当している飯田さんに、自分とまったく異なる価値観と向き合うことによって自らの価値観に変容をもたらす「深い学習」について、前編と後編の2回に渡って執筆いただきました。前編では深い学習の実態について、今回の後編では特有の難点を乗り越えて実践する方法についてご紹介いただきました。

PROFILE

証券取引所CSR担当 飯田一弘
飯田一弘
証券取引所CSR担当
証券取引所のCSR担当として、投資と起業に関する教育プログラムの企画と運営に従事。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。2014年までNPO法人Living in Peaceで児童養護施設の支援に従事。家族は、妻と二歳の男の子。 http://mydeskteam.com/casefile/887/

前編の記事(「いま、求められる「深い学習」とは 〜自分の殻を破る学び方〜」)では、自分とまったく異なる価値観と向き合うことによって自らの価値観に変容をもたらす「深い学習」には、日々の積み上げ型の学習とは異なるきっかけ・楽しさ、そして「難点」があるとお伝えしました。

その難点とは、1. 学習のきっかけと出会う機会の少なさ、2. 生理的な拒絶反応です。そこで後編では、それぞれの難点を克服するために私が心掛けていることや、“未来を変える”プロジェクトのイベントで出会った方々と議論した深い学習の実践法をご紹介したいと思います。

本記事の構成です。

INDEX読了時間:5

それでは、本文です。

1-1. 偶発性をスケジュールに組み込む

深い学びとの出会いは、多くの場合は偶然によるものです。この偶然の出会いの確率を高める鍵は、時間の使い方です。自分の仕事やテーマに関係のないことをする時間や、あえてまったく何もしない空白の時間を確保することが効果的です。

例えば、私の場合、今こうして原稿の執筆に取り組んでいるのも、深い学びの貴重な機会です。執筆が思うようにいかない苦しさや自分の未熟さへの苛立ちはありつつも、自分の考えが文字になっていくプロセスはとても楽しく感じます。

また、効率的でも生産的でもない時間をわずかながらでもあえて持つように心がけています。異なる値動きをする複数の証券に分散して投資をする、つまりポートフォリオを組むイメージです。上手に分散投資をすることで、高いリターンを目指しています。

くわえて、高い目標にあえて挑戦することも効果的だと考えています。成功の見通しが立っている仕事や取り組みばかりしていては、自分の価値観を超えるような体験はなかなか得られません。成功するか失敗するか五分五分といったような、見通しが立ちづらい挑戦に取り組むことにより、自分が無意識に避けてきた深い学習の機会を呼び込むことができるのです。

1-2. 当事者になる(頭で考えるのでなく、全身で感じる)

深い学習のきっかけは、異なる価値観を持つひとなど「異物」との出会いです。

もし異物と出会えても、従前のメンタルモデルでそれを捉えてしまうと、違和感や葛藤をうまくやりすごそうとしてしまい、深い学習にはたどり着けません。しかし、その異物と正面から向き合わざるを得ない状況に立たされると深い学習に進むことができます。ミテモ株式会社代表取締役の澤田哲也さんはこう語ります。

私は、ビジネスマンを気仙沼の被災地に送って、現地のビジネスへの改善提案を考えさせる研修プログラムをしています。しかし、単に考えて提案するだけでは価値のあるものを生み出せるわけではありません。そこで、現地のひとたちと顔の見えるコミュニケーションを密にとってもらい、"その顔が思い浮かぶひとたちをどうしたら幸せにできるだろう”“彼らの問題をどうしたら解決できるだろう”という問いかけを与えています。現地の方との交流が濃く、彼らに強く共感しているひとほど、抽象的な課題解決に終始していた議論から抜け出し、課題を自分ごとと捉えることができるようになり、一気にブレークスルーが起こるのです。

私たちは普段、既存の価値観に基づいた見栄やプライドが邪魔をして、深い学習の契機をつかむことができません。しかし、先ほどの例のように、異なる価値観の人々と交流して彼らに共感するようになると、その見栄やプライドを超えた目的を持ち、深い学習に進めるのです。

私が深い学習をしたのは、児童養護施設の支援に参加したときのころですが、そのきっかけはある施設に見学でお邪魔したことでした。何の予備知識も心の準備もなく、ちょうど大学院の卒業が決まって、特に気がかりなことがないタイミングでした。日が暮れるまで子どもたちと遊んで、その場の空気をたっぷり吸い込んで帰りました。

その日に特に印象に残ったのは、初めて出会ったばかりの私に、子どもたちがしがみつくようにして甘えてきたことでした。その温もりの心地よさとともに、小さな疑問を持ちました。「私は初対面の大人なのに、なぜまったく警戒しないのだろう?」、この疑問がその後の活動の足がかりになりました。

何も準備しないで臨んだことが、かえってよかったのです。そこでただ一日を過ごしたからこそ感じたこと、見えてきたものがありました。

Don't Think. FEEL.

ここまで読み進めていただいた方の中には、インドや被災地にまで足を運ばなくては深い学習を得られないと感じた方もいるかもしれません。しかし、それではお金と手間と時間がかかりすぎますし、深い学習の機会も限られてしまいます。実は深い学習は、今この瞬間、あなたがいるその場で始められるものなのです。

ある学生からOB訪問を受けたときに、なぜかその学生にとてもイラっとしました。話をすぐに打ち切ることもできなかったので、彼の行動をよく観察して動きを真似してみました。すると、自分が嫌な気持ちになった原因は、彼の姿勢がとても悪いことだと気づきました。そこで、それを指摘して姿勢を直してあげたところ、それをきっかけに話が噛み合いだして、彼の生い立ちや物事の考え方など深いところまで理解することができました(子どもの貧困問題に取り組むNPO「Living in Peace」のリーダーを務める倉中翔太朗さん)

この例では、異なる価値観と向き合うためにそのひとになりきるという行動をしています。単に頭で理解したり想像したりするだけでなく、実際に体を動かすことを通じて、深い洞察を引き出すことに成功しています。

このように、深い学習の機会は実は身のまわりに常にあるもので、私たちはそれを見逃してしまっているのではないでしょうか。

2-1. 変化にオープンな心と体の状態を作る

自己肯定と学習する能力とが相関関係にあることは広く知られています。自己肯定する傾向がが強いと、自分が否定されるかもしれない機会に対してもオープンな態度を維持できるのだそうです。逆に自己肯定する傾向が弱いと、些細なことで自信を失ってしまい新たな学習の機会を逃してしまいます。

日々の生活における取り組みも有効です。よく食べてよく眠る。プライベートを充実させて家族や恋人との良好な関係を保つ。そうして心と体の健全な状態を保ち、試練に立ち向かうときに必要な精神力と体力を確保しておくと、チャレンジのエネルギーがわきます。

私の場合、目の前のことに気を取られやすい性格なので、忙しくなると他のことを考える余裕を失ってしまいます。また「私は頑張っている、よくやっている」とある種の達成感を感じてしまい、現状に安住してしまいがちでした。働き始めて5年目の頃は、仕事がもっとも忙しく、ほぼ毎日タクシーで帰宅する生活をしていました。とても充実していたはずなのですが、当時を振り返るとその頃に自分の引き出しが増えたという実感はありません。

2-2. 不安をやわらげる工夫をする

深い学習の邪魔をするのは、不安やおそれといった感情です。それを上手になだめて、オープンな心の状態を作りだすことも効果的です。苦い薬に甘いシロップを混ぜることで飲みやすくするのと同じように、好きなことや好きなひとをうまく組み合わせると、不安を克服することができるかもしれません。

例えば、バックパッカーの初心者は、慣れない旅先でこわい思いや不快な思いをして、旅をあまり楽しめず、そこでの深い学習の機会を逃してしまうかもしれません。しかし、もし仲の良い友人が一緒であれば、不快なことも前向きに捉えられ、そこでの経験に対してオープンでいられるかもしれません。

大学時代のサークルでフリーペーパーを作るプロジェクトをやっていました。3日間連続徹夜することもしばしばといった環境で、死ぬ気になってやっていました。そのときは苦しくてしょうがなかったけれど、今振り返るとすごく楽しい思い出です。あんなに苦しかったのになぜ取り組めたのかというと、仲間の存在が大きかったです。力強いつながりを感じられる仲間の存在が、つらい仕事に立ち向かうためのエネルギーになってくれました(グロービス経営大学院で新規プロジェクトに取り組む大野将輝さん)

私の場合、関わっていたNPOが、企業などで働いている普通のビジネスパーソンが週末などの空き時間に活動する団体でした。よく似た問題意識や関心を持つ同じ年代の仲間との横のつながりがあるおかげで、本業とはまったく異なる活動領域にもかかわらず、楽しく参加することができました。

Living in Peaceで議論している筆者
Living in Peaceで議論している筆者

身近な友人や知人、好きな作家、よく聴く音楽などから興味関心を徐々に広げていくのは、不安をやわらげる意味で効果的です。心の底から面白いと思える本に出会えたら、そこから関連書籍へ対象を広げていくとよいでしょう。コツは、芋づる式に対象を広げていき、きっかけとなった友人や知人からあえて遠ざかっていくことです。これによって、新しい気づきの機会を増やすことができるのです。

くわえて、その領域においてロールモデルになるようなひとが身近にいると、深い学習に進みやすくなります。バックパッカーの例で言えば、一緒に行く友人のバックパッカー歴が長いほど、安心して冒険に飛び込むことができますし、友人の振る舞いを真似ることにより、その世界に入ることが容易になるからです。

いかがでしたか。深い学習の実践方法をまとめると、以下の通りです。

深い学習の実践方法

深い学習は痛みを伴います。リスクをとる行為でもあります。異質なものに出会ったときに、それに向き合うか拒否するかは大きな分かれ目です。私たちの心は、異質なものを拒否しがちです。変化に対する本能的なおそれはとても強力です。異質なものに日常的に触れているのに、それに向き合うのを無意識に避けているのかもしれません。

深い学習の第一歩は、そうした変化をおそれる自分自身をきちんと理解することです。そうして小さな一歩から学習の成功体験を少しずつ積み重ねていくことで、自然と深い学習がしやすくなり、柔軟に自分を変えていけるようになるでしょう。

【 本記事の読者にはこちらもお薦めです 】
変化の時代の必須スキル 〜「5分で分かる学習好きの作り方」
変化の激しい時代に「学習」の目的やプロセスはどのように設計すればよいのでしょうか。
https://mirai.doda.jp/theme/learning/how-to-like-learning/

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