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変化の時代の必須スキル 〜「5分で分かる学習好きの作り方」

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Googleの共同創業者であるラリー・ペイジ氏を始め、多くの識者が提示するように、テクノロジーの進化や新興国の台頭、世界的なエネルギーの不測やグローバル化の進展により、現在の職業の数十パーセントは20年以内に消滅し、多くのひとは80歳まで職業人生を歩み、その人生の中で3回ほど、まったく異なる専門性や領域で働く必要が出てくると言われています。

今回の記事では、この変化が激しい時代にあって、30歳、40歳、はたまた80歳になるまで、一生の間、変化を受け入れ、楽しむために重要な「学習」というテーマについて、約50名のビジネスパーソンと議論した内容、そこから得られた知見をとりまとめています。

先に結論を提示すると、下記の3点です:

  1. 80歳まで継続する学習の意欲は「学習娯楽モード」によって生み出される
  2. 他のモードを強いる環境が「学習娯楽モード」の成長機会を奪いがちである
  3. 「学習娯楽モード」を育むには周囲から「安全地帯」が提供されることが鍵になる

今回のアウトラインです。

INDEX読了時間:5

それでは本文です。

学習には「3つのモード」がある

学習の設計は、大きく分けると「何のために学習するか」という【目的の設定】と、「どのようなプロセス・手段で学習するか」という【プロセスの設定】という2つの要素で構成されます。

この2つの要素を、それぞれ自分で行うのか、与えられたものに従うかによって、主に3つの学習モードがあることが、今回の議論の出発点となりました。学習を好きになるためのポイントとして、まずこの3つのモードについて解説します。

3つの学習モード

A : 完全従属モード(学習目的も学習プロセスも他人が決める)

まず、今回の議論に多く登場したのは、この「学習目的」も「学習プロセス」も、両者を他人に決めてもらって、それに沿って学習するというモードです。

特に、社員研修の多くは、このモードを前提に設計されていることが多く指摘されました。会社からパフォーマンス、業績を上げることが目的に設定され、その目的が各部署、各レベルの社員に対して細分化・特化され、その達成のために必要な研修の設計といったプロセスも、会社から与えられます。

インセンティブをどのように与えるか、社員研修をどのように提供するかなど、ひとの学習に対する第三者の関わり方について議論が盛り上がったが、供給者目線が強すぎるように感じた(30代 男性)

多くのひとが、受験を経験することで実際にこのモードを体験しているかもしれません。

よりよい学校に入るという分かりやすい「学習目的」の設定が、偏差値やランキングなどの仕組みに埋め込まれる。そして、そのための勉強をどのように完遂すべきかという「学習プロセス」も、学校で行われる学習に従う、あるいは通っている塾や最近浸透しつつあるオンライン教育の方法に従うというふうになり、本人は「学習の実行者」に専念するという状況が作り出されます。

自分が“学習する”ことを楽しんでいたのは小学校3年生までで、例えばバッタとカマキリを戦わせたらどうなるか?みたいなことを楽しんでいました。それが、小学校4年生になり中学受験の勉強を始めたときから、“合格する”という目的のために学習することになり、学習は楽しむものではなくなってしまいました(30代 女性)

このコメントに思い当たる節のある方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。

もしも、ある人物が子供の頃は受験勉強を主体として「学習」を経験し、大人になったら所属する企業から提供される「学習」をベースとしていたならば、その人はほとんどの「学習」について「完全従属モード」で取り組み「何が学習の目的か」「目的達成のためにはどのような手段や方法を選べばよいのか」という2点について深掘りする機会が限られてしまうかもしれません。

B : プロセス追求モード(学習プロセスを自分で試行錯誤する)

「組織の価値を高める、会社の業績を改善する、そのために個人として高いパフォーマンスを発揮する」ということを暗黙裡に前提とし、そのための具体的なHow、プロセスについて熱く語る方の多くは、このモードで学習していることが多いかもしれません。

このモードの特徴は、取り組む分野やテーマに「業績を高める」というあらゆる企業に当てはまる共通項があるため、お互いの学習プロセスや方法に関する試行錯誤が、企業の壁を超えて参考になるケースが増えること。そして「集合知」が働き、高いパフォーマンスにつながりやすいことが挙げられます。

例えば、個人技としてのセールスの技術には会社に関係なく普遍的なポイントが数多く存在し、社内同士はもとより、社外のひととでも書籍や研修などを参考に学び合うことができます。あるいは、部下の育成においても、どのくらいの頻度でレビューを行うか、どの程度の裁量で任せるか、どのような場面で叱責し褒めるかなど、多くの点がお互いに参考になります。

さらに、世の中に数多く存在するさまざまな方法の中からどれがいいかを模索するなど「プロセス」の設計において試行錯誤し、その選択によって、良い結果になったり、悪い結果になったりする「自己効力感」を得ることで、学習に対する本人のモチベーションが高まるのもこの学習モードの特徴です。

一方で、このモードで普段学習している人は「設定された目的」に対してどの方法が有効か、有効でないかという検証に特にフォーカスしているため、「目的がはっきりしていない学習」や「アウトプットが出ない学習」に対しては批判的であったり、懐疑的になる傾向にあるかもしれません。

C : 学習娯楽モード(学習目的も学習プロセスも自分で設計する)

この学習モードを実践しているひとたちの特徴は「何のために学習するか」についていつも考えている点が挙げられます。他人の学習に関する質問や探求も「どのようにそれを行うか」というプロセスよりも「なぜそのような学習をしているのですが」といった具合に目標や目的に対する興味や関心が強くなります。

このモードを発動するひとの特徴は「学習」と捉えていることの範囲が幅広く、何気ないひととの会話やわざと新しい経路を選んで帰宅してみるなど、さまざまな行動や要素を「学習」と見なします。

そして、プロセスそのものが目的になっていることも多いため「どういう結果になるか分からない」学習や「まだ誰も取り組んだことのない」学習についても、積極的に取り組んだり、試してみる傾向にあります。

なにより「学習とは、楽しいものである」という大前提が、このモードを発動する人たちの間では共通認識として存在するようです。目的やプロセスの設計も含む学習に関わるすべてのことを楽しむという意味で、このモードを「学習娯楽モード」と名づけています。

 

変化の激しい時代には学習娯楽モードこそ有効に機能する

3つのモードには、明らかに向き、不向きがあります。その中で変化の激しい時代、新しいテーマをどんどん学ぶ必要のある時代にあっては「C:学習娯楽モード」に切り替える能力が圧倒的に必須となってくることが、今回の議論のテーマになりました。

Aの「完全従属モード」は、主に大企業などでビジネスでの勝ちパターンがある程度見えて、各人が行うべき役割が明確になっているときに、最大の効率と効果を発揮します。一方でこのモードの弱点は、外部環境の変化が激しくなったとき、現場が直面している課題に組織が用意するトレーニングのプロセスが時代遅れになってしまうことです。

例えば、仕事上でFacebookやLINEなどでやりとりする慣習が広がっているにも関わらず、会社が用意するビジネスコミュニケーションの研修は、相変わらず電子メールが中心といった状況などがこれにあたります。

Bの「プロセス追求モード」はいかがでしょう。このモードの弱点は、目的を提供してくれる所属企業・組織そのものが変化を迫られたり、あるいは所属する組織を自ら変えたりすると、目的そのものが変化してしまい、それまで積み上げてきたプロセスをそのまま適用しても意味を成さなくなってしまうことです。

例えば、それまでハードウェアの販売主体にしてきた企業が全社的な戦略大転換をし、サービスの販売にシフトしたとしましょう。それまでハードウェアを売るためのプロセスやノウハウを磨き続けてきた社員は、そのスキルの大部分を入れ替えサービス販売を伸ばすためのノウハウを学習しなければならなくなります。

モードBで学習に取り組んできた社員にとってこの状況は、外的影響によって過去の積み上げを捨て去り新しい取り組みを強いられることで大きな喪失感を味わい、また同時に、新しい目的を自分で解釈するという不得手なことを強いられモチベーションが低下してしまいます。

これに対してCモードを発動することができれば、変化の多くを新しく目的を設定するための楽しい機会と捉えることができ、変化すればするほどモチベーションも向上するという連鎖を生み出すことができるようになります。

例えば、先ほどのハードウェアの販売を主体にしてきた企業の場合、

「これからはサービスの販売が主体になるなら、自分が果たすべき役割は製品の納品だけでない。自分やチームの日々の行動が価値の源泉になる」

「ならば、顧客にどのような行動が喜ばれ、どのような行動が喜ばれないかを感じ取る力を身につける必要がある」

「そのためには、いつもその状況に直面しているコンサルティング会社や、接客業のノウハウが参考になるかもしれない」

といった発想が、変化をきっかけにして次から次へと生まれ、それに自ら取り組むことで本人のモチベーションがさらに上がっていくということが起きるでしょう。

変化が少なく勝ちパターンが見えているときに役立つモードA、所属企業や組織の目的がブレないときに威力を発揮するモードB。それらに対して、変化が激しく、多くの前提や状況が変わってしまう時代には、変化してもモチベーションが高く保たれる「C : 学習娯楽モード」が最も適しているのではないかということが、今回の議論で指摘されました。

学習娯楽モードを育みづらい「ジレンマ」

このモードC、実は現在の受験を主体とした環境下では、なかなか育みづらいというジレンマがあります。

一般的に偏差値の高い高校や大学に進学しようとすると、基本的には塾や私立の中高一貫校に通うことになりますがが、それは学習設計を子ども本人ではなく、他者(家庭でもなく第三者)に委ねることになります。そのため、自分で考える思考が育たない。だから、偏差値の高い大学に行っても、将来どのようなことがやりたいか、そのためにはどのように自発的に行動すればよいか思考ができなくなるという弊害があると思います(50代 男性 産学連携関係)

この指摘が端的に示すように、子どもの頃からよりよい学習環境、学校を目指そうとすると、効率性の観点から、どうしてもモードAやモードBになりがちです。

これは、企業における社員教育も同様で、集団としての効率を求めると、どうしても集合研修を始めとした学習の「手段」を提供することが多くなり、結果的にモードCの「そもそも何を目的にするか」といったことについても考える学習の機会が相対的に減ってしまいます。

「こんな考え方をすれば、素早く解決できるよ」とアドバイスしたり「このあたりとこのあたりに集中して時間を使えばいいんじゃないかな」と、子どもや社員に口出ししたりしたくなるのは、そのひとの効率と成功を願えばこそ生まれる誘惑なのかもしれません。

学習娯楽モードを育むための仕組み

今回の議論に参加したビジネスパーソンの中で、特にモードCを得意としている面々の話をまとめると、このモードを自らに定着させるメカニズムは、下記の3点に集約されました。

1 : 邪魔されずに好きなことをとことん探求する機会

2 : 大きなチャレンジをし、失敗し、克服する経験

3 : 好きなことの探求と大きなチャレンジを促進する「安全地帯」の存在

1 : 邪魔されずに好きなことをとことん探求する機会

「学習の目的」を設定するとき、他人からは分からず、自分でしか探求できない最大のポイントは「自分は何が得意で何が好きか」ということです。

学習に取り組む姿勢として自分の好きなことや得意なことの中で、まだ着手できておらず、周囲の環境の変化など刺激を受けてやってみたいと感じたこと、興味を惹かれたことに着手するのがよいのでは。脳の生理的性質や心理学の観点からして、好きであったり得意な分野の方が学習が促進されますし、何より直観的にその方が楽しいからです(50代 男性 経営コンサルティング)

この姿勢は、親も含めて自分の強みや得意分野を理解していない他人からすれば理解不能に見えてしまい、途中でストップをかけたくなってしまうものです。

例えば、本当は音楽を通してひととコミュニケーションを取るのが好きなひとが友人の前で演奏を続けて楽しんでいるところに「音楽はクラシックを座学で学ぶべき」という意見を押し付けてしまうと、その本来の強みや好みをつぶしてしまうことになります。

自らの強みや好みを発見することや、発見した特性を自分が定める学習の目的にマッチさせる行為には長い年月が必要となるため「好きなことをとことん探求する」時間をどれだけ確保できるかが、モードCを定着させるための1つめのポイントです。

2 : 大きなチャレンジをし、失敗し、克服する経験

学習の目的を自ら設定するとき、そこには「結果がどうなるのか分からない」「何を得られるのか分からない」といった学習成果を想定できない状況が潜んでいます。

先ほど指摘したように、モードBを中心とした学習では、この「何を得られるかが不明確」となってしまうと、モチベーションが湧かなくなってしまいます。しかし、モードCの重要な要素は「不確実な取り組みに対して、意欲的に取り組み続ける」ことです。

モードCを得意としている面々が指摘するのは「想定と違った結果、一般的な基準からすると“失敗”とも捉えられるところから、なにかを学び取る成功体験」でした。

 

例えば、米国大学に在学しつつ国境なき医師団のインターンに参加し、夏季休暇は大阪大学で研究する女子大生のような突き抜けた学生たちにインタビューしたところ、小学校高学年から高校にかけて、なにかしらの外部環境に因る失敗や挫折経験があり、それを克服して成長したというエピソードを皆さん多く持っていました。何度もこの経験を何度も積むことによって「どんな場所でも生きていける」といった考えや「機会=学び」という捉え方をするようになったと言っていました(30代 男性 シンクタンク出身)

学習の目的を自分で設定するとき、そこに立ちはだかる「思っていたこと、目指していたものは得られなかった」という状況について、恐れるのではなく、むしろ好ましいものとして捉えられる素地が、2つめのポイントです。

3 : 好きなことの探求と大きなチャレンジを促進する「安全地帯」の存在

上記の2つのポイントの下支えとなるのが、これらの取り組みの素地となる「安全地帯」という概念です。これは米国の著名な心理学者 ミハエル・チクセントミハイ氏が指摘する、

「ひとは、絶対的に自分が認められ、守られる環境を持っていればいるほど、とことん何かに没頭したり、大きなリスクを取ってチャレンジしたりする」

という心理学的な構造となります。もう少し噛み砕いて言えば、子どもに対しては両親の仲がよく、子供に向けられる愛情が安定しているほど、この「安全地帯」効果が高まることが知られています。

好きなことをとことん探求する場面でいえば、子どもが何かに没頭しているときに「この子が没頭していることは、きっと本人が好きなことに違いない。しばらくそれを見守ろう」という姿勢が、この安全地帯を提供するための具体策です。

同様に、失敗や挫折をしたときにその失敗点を指摘したり、改善すべきポイントを指示するのではなく、その経験をじっくりと振り返ることができるだけの落ち着きが取り戻せるように、本人の話をじっくりと聞くといった行動も、これにあたります。

そういう意味で、ある参加者からのこの指摘は、まさに的を射ているかもしれません。

こういってしまっては元も子もありませんが、やっぱり「愛」「愛情」こそが次世代に対してできること、後輩に対してできることかもしれませんね(30代 男性)

ここまで、子育てにおける両親を始めとする周囲のひとによる「学習娯楽モード」の育み方を紹介しましたが、参加者の多くは、これは成人してからでも十分に当てはまることであると指摘します。具体的にとりまとめてみると、下の表の通りとなりました。

表:仕事で「C : 学習娯楽モード」を育む具体的なアプローチ
表:仕事で「C : 学習娯楽モード」を育む具体的なアプローチ

 

いかがでしたでしょうか。

変化の激しい時代に有効と思われる「学習娯楽モード」について、普段の学習の設計や取り組みを振り返りながら一度考えてみるのも有意義ではないでしょうか。

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[編集・構成] “未来を変える”プロジェクト 編集部

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