会社は見えない所で、社員たちの教育投資に大きく差をつけている

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給与が同じだからといって、同期達の待遇が同じとは限らない。

以前は「全員一律」ということにこだわっていた会社も、最近は「社員同士の差をつける」ことに臆さない。

そして、それは給与という不満の出やすい領域ではなく、不満の出にくい、しかも長期的にはかなりの差がつく領域で顕著になっている。

それは、「教育投資」の分野だ。教育に避けるリソースに余裕がなくなった会社は、少しでも効果的な教育をするため、見えない所で、社員同士に大きな差をつけている。

例えば、私が以前「社員研修」を営業して歩いていた頃、こんな話があった。

「そろそろまた、研修をやりたいんだけど」
「わかりました。対象者と、テーマについて何か考えていらっしゃることはありますか?」
「テーマは、ロジカルシンキング。合理的で、バイアスの少ない思考を実践できる人を育成したい」
「わかりました。そうすると、若手社員たちが対象ですかね。」
「そうなんだけど、今回参加させるメンバーは、前回のように「全員一律」ではなく、選抜形式にしたいんだよね」
「ほう?」
「前回は若手社員全員を対象にしたんだけど、社員のレベルによって、研修の受け止め方がかなり違っていた。」
「そうでしたね。レポートの結果もまちまちでしたね。」
「全員一律はやめたほうがいい、と言われてたのは憶えているけど、公平を期すためにまずはやってみようと思ってたんだけどね……。」
「そうでしたか。」
「そう。でもやっぱりダメな人は、いくら研修をしてもダメな気がした。レポートを見ても、「おもしろかった」とか、ほとんど小学生のような感想の人もいたからね……。」
「まあ、習熟度別に研修を設定するのは基本ですからね。」
「そうなんだよ。だから、今回研修に参加させるのは、一部の優秀な社員だけにしたい」
「わかりました」

果たして、その会社は「評価が上位3分の1」の社員だけを、研修に参加させたのだった。

その結果、社員からのレポートにおいては、

「ハイレベルな議論ができた」
「ヤル気のない人がいなかったので、気持よく研修を受けることが出来た」
「またこのメンバーでやりたい」

との声が多数得られた。
研修は対象者を絞り込んだほうが適切な話ができるのだから、これは当然の結果だ。

私が昔在籍していた会社にも、少なからず同じような事象があった。
社員の間で、同一の階層ではそれほど給与に差はつかない。だが、大きく差がついていたのは、「教育投資」だった。

具体的に言えば、「できる人間」とみなされた人物は会社から「合宿」に招待される。

合宿の内容は多岐にわたり、コンサルティングツールの開発、書籍の執筆、テキストの作成、新規商品の開発などであった。

そして、その合宿の場では経営者や役員たちと同じテーブルに付き、議論に参加できる。

これは給与の差などを遥かに超えた、大きなアドバンテージだった。経営者から直に会社の内情や方向性などを聞くことができるし、新商品の開発に携わることができれば、面白い仕事も回ってくる。

また、テキスト作成に携われば、自分が講師をやるときにもやりやすい。
合宿の裏の目的は、社員を鍛えるための大きな投資でもあると私は感じた。

一方で、合宿にほとんど呼ばれない人物もいた。彼らは会社についての情報も少なく、ツールや新商品も上から与えられるだけ。

トップがどのように認識していたかはよくわからないが、明らかに触れることのできる情報の量、挑戦の機会などに大きな差があった。そして、のんきな人はそれに気づきようもなかった。

つい先日、人材について議論する場があり、そこである事業会社の方がこのように述べた。

「今は、見込みのある社員にはとことん機会を与えて、能力を徹底的に伸ばします。逆にそうでない人には全く投資しないですね。

例えば、社内のコンテストに参加して勝ち残った人物には、MBAプログラムに参加させたり、ある程度の裁量を与えて外で活躍させたりします」

「そんなこともあるんですね。恵まれてますね」
「そうなんですが、自分がどれだけ会社から投資されているか」を冷静に見れば、かなりの社内格差ができていることに気づく人もいると思います」
「ほう。」
「この格差に気づいている人は少ないですね。こういう「教育投資」は、すぐに給与の差になって出てくるわけではないですが、5年、10年と経つうちに、大きな差になってくると思います

「どこもそうなるのでしょうか?」

「どこの会社でも、同じような傾向だと思います。社内で安穏と仕事していたら、いつの間にか同期に置いて行かれた、なんて話はたくさんありますよ」

人が企業の競争力を生み出す現在、できる人を育てる「教育」には莫大なコストと時間がかかる。中には、新規事業や投資事業に関与させ、意図的に多くの失敗を経験させて、さらなる成長を期待する、といった手間のかかる育成をする会社も数多くある。

だが、教育のための資源は限られている以上、必然的に、一人あたりのコストが増えれば、その恩恵を享受できる人は企業内で減っていく。

「社内格差」は見えない所で進行しつつある。

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