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会社は「やめる」ということがとても苦手

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『“未来を変える” プロジェクト』では、記事の制作段階でさまざまな方と議論し、フィードバックをいただきながら制作しています。今回は月間150万PVを超える「仕事・マネジメント」をテーマにした人気ブログ「Books&Apps」を運営する安達裕哉さんに、「会社は『やめる』ということがとても苦手」について寄稿していただきました。

PROFILE

ティネクト株式会社 代表取締役 安達裕哉
安達裕哉
ティネクト株式会社 代表取締役
1975年、東京都生まれ。Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。大企業、中小企業あわせて1000社以上に訪問し、8000人以上のビジネスパーソンとともに仕事をする。現在はコンサルティング活動を行う傍らで、仕事、マネジメントに関するメディア『Books&Apps』を運営し、月間PV数は150万を超える

タイトルが誤解を招きそうなのだが、会社「を」やめるという話ではなく、会社「が」やめるという話だ。

一般的に、会社は昔から続けていることを「やめる」ことにかなりの拒否反応を示すことが多い。例えば、こんな話があった。

ある会社で、創業メンバーの価値観を保持するためという目的で、20個程度の行動指針を作った。中身は仕事上の習慣に関するネタが多く、「こちらの伝えたいことを話す前に、相手の言い分を聴く」とか、「会議には議事録を用意して臨む」とかそういったTipsのようなものを集めた指針であった。

内容としては「まあ、そうだよね」と同意できるものがほとんどであったので、多くの人がこれに賛同し、実用性も高いということで受け入れられた。

だが、会社の人数が増え、さまざまな職種が現れると、この指針は徐々に現状に合わなくなっていった。

例えば、開発の人間には当てはまるが、バックオフィス部門にはまるで当てはまらないといったように、徐々に20個の指針では全員の業務をカバーできなくなってきた。

本来であれば、この指針は「Tipsとしての役割を終えた」とみなしても良いはずである。ところが、この会社は「せっかく良くできているのだから」と指針を細分化する方向に進んだ。

新しい職種が増えるたび、新しい事業が増えるたびにこの指針は増殖を続け、ついには150個近くまで条文が膨れ上がったのである。

もはや多すぎ、複雑すぎて誰も全体を理解していないルールが会社の中心にあるという奇妙な状態が続き、またルール同士の矛盾も検証されずじまい。この指針は有名無実化した。

だが、誰もこの指針を「廃棄しよう」という人はいなかった。「なぜこれを作ったのか」分からないようなルールが、なんとなく残り続けた。

———-

一方、別の開発会社ではエンジニアが「事務仕事」に悩まされていた。

開発の途上にあるソフトウェアに関する残さなければならない記録が大量に定められており、エンジニアはプログラムに割く時間を事務仕事に削られていた。

「なぜこの記録を残さなければならないのですか?」と聞くと、エンジニアたちは「品質管理のため」という。

しかし、「この記録をつけると、なぜ品質が向上するのですか?」と聞いても、誰もが「いや、実はよく知らないんです」と言った。

品質管理担当の役員の一人に聞くと、「昔うちに来ていたコンサルタントが『品質管理のため』と記録をつけることを要求したから」だと言う。

「そのコンサルタントの意図はどこにあるのか?」と聞くと、その役員も「当時は納得したけど、今はなぜか覚えていない」と言う。

残念ながら、その会社のソフトウェアの品質はさほど高いわけではなかった。だから、心あるマネジャーが「品質を向上させるため」と新しい施策を導入しようと努力しても、現場は「今やっていることで手一杯だから」と、新しいことをやろうとしない。

———-

実は「新しいことを始める」ことよりも、「古いものを捨てる」ことのほうがはるかに難しい。新しいことは皆の注目を集めるし、中心人物も意欲に燃えているからだ。

だが、「古いものを捨てる」ことは名誉も得られないし、中心になる人物は「やる気が無いのか」と誤解を受ける可能性もある。

しかし、本質的には「何かを始める」ためには「何かを捨てる」ことが絶対に重要である。時間は有限だからだ。

ピーター・ドラッカーは、次のように警告している。

古いものの計画的な廃棄こそ、新しいものを強力に進める唯一の方法である。私の知るかぎり、アイデアが不足している組織はない。創造力が問題ではない。そうではなく、せっかくの良いアイデアを実現すべく仕事をしている組織が少ないことが問題である。皆が、昨日の仕事に忙しすぎる。(中略)実は、本当に行うべきことは優先順位の決定ではない。優先順位の決定は比較的容易である。集中できる者が少ないのは、劣後順位の決定、すなわち取り組むべきでない仕事の決定と、その決定の遵守が至難だからである。

翻って、タイトルに戻ろう。結局のところ、会社は「やめる」ということがとても苦手である。従って、いつまでも「新しいこと」を始めることができない。

今までの「なんとなく従っている」ルール通りに行っていれば、仕事をした気になるし、誰からも文句を言われることはない。だが、それこそが衰退への道なのだ。

結局のところ、企業の競争力を決める大きな一つの要因は、「やめる」力なのである。

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