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アスリートに学ぶ、ビジネスでメンターを選ぶための5つの観点

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UCLAのバスケットチームを率い、その後世界的な選手となる幾多のプレイヤーを育てた伝説のコーチ、ジョン・ウーデン氏は、選手を育てるために最も重要なのは、

目先の目標を達成させて勝ち負けにこだわるのではなく、自分自身をよく理解し、自分の理想を掲げ、そこに少しでも近づくための努力を、毎日欠かさず続ける。

ことだと語っています(出所:TED動画『勝利と成功の違い』より)。

実際に、今回のリオ五輪でのコーチたちの談話を見ていると、これを想起させるコメントが目白押しです。

(ドーピング違反のライバルの摘発を受けて)身体に影響のあるドーピングを故意にやっているとしたら、命を懸けているということ。おまえは命懸けの努力をしてきている。命懸けのレベルで負けるな(女子200メートル平泳ぎ金メダリスト金藤理絵選手のコーチ、加藤健志氏)
ロンドンから重量級が低迷してると言われることが悔しく、自分の手で変えたいという思いで突っ走ってきました。原沢選手に託すことになりましたが、全階級金を獲れる力を持っています。日本柔道の応援、よろしくお願いします(柔道重量級のコーチ鈴木桂治氏がターニングポイントとして掲げた2014/15年の世界選手権銀メダリスト七戸選手からの激励)

こうした世界トップレベルのスポーツ領域では欠かせない存在である「コーチ・メンター」という存在は、ビジネスの領域で本当に必要なのでしょうか? そして、もし「コーチ・メンター」が必要であるならば、どんな人にこうした役割をお願いすべきなのでしょうか?

今回は、約40名の現役ビジネスパーソンとこのテーマについて深く議論した内容について紹介します。

今回のアウトラインです。

INDEX読了時間:8

それでは、本文です。

コーチ・メンターが果たすべき3つの役割

選手育成のプロセス

前出のウーデン氏をはじめとして、多くの著名なコーチ・メンターが掲げる3つの役割は、次の通りです。

A.本人が自分の強みと本質を理解する手助けをする
B.中長期的にどのような高みに到達し、周囲に貢献するかを鮮明にする
C.そのために行うべき目の前の努力に没頭させる

A.の本人の強み、本質の理解というのは、本人ではなかなか分かりません。例えば、極めて高い闘争心を持っている選手は、その心理状態が自分にとって当たり前のため、他の選手と比べて高いということに自分では気づきにくくなります。その点に気づかないと、いつも競争相手や周囲を意識しすぎて、自分本来の状態よりも、周囲に現れる選手の強さやコンディションによって精神状態が左右されてしまいます。

B.の中長期的に狙う高み、本来自分が果たすべき役割についても、他の選手、将来出会うであろう周囲の力量や、今後のプレイスタイルのトレンドなどを鑑みて、何を磨くべきか、どんなふうにプレイし、活躍することができたら、自分は幸せに感じるかを見極めることが必要になります。

仲間同士でプレイすると、野球選手であれば打つのも、守るのも、投げるのも、走るのもすべて得意というふうに感じるかもしれません。ですが、技能の水準が上がっていったときに、実は打つ部分だけはさらに伸びる余地があり、また技術的には「遠くまでボールを飛ばす」「正確にボールを打ち分ける」といった中の、どの部分を磨くべきかなどが違ってきます。

C.の、そのために行うべき努力については、自分の本質と自分が将来目指す姿の両方を考えながら、そのために何をすべきか、毎日の行動、取り組める形に落としこむことが必要です。

トップレベルのアスリートであれば、コーチをはじめとした周囲からの支援によって実現しているこれらの要素ですが、果たしてビジネスパーソンの現実はどのようになっているでしょうか?

職場の上司・上長にすべてを期待するのは難しい

職場の上司と自分との関係では、多くの場合、自分自身の成長よりもチームや会社としての業績を達成することにフォーカスが当たります。さらに、その成果が求められる時間軸は1年以内、半年以内、あるいは1カ月以内の営業成績であったりと短い傾向にあります。

スポーツコーチが、特に個人競技の選手に対して行うような、その選手の強みや本質、あるいは内面にある性格的な部分を把握するよりも前に、ビジネスの場面では「今月の成果を挙げるために、何をすべきか」という点に会話の中心が偏っていきます。

同様に目指すべきゴールや目標は、本人が数年から十数年かけて到達する目標ではなく、短期的に達成すべき、部署やチームとしての売上・成果がメインとなっていきます。

その結果、毎日、本人が取り組むべき仕事、努力すべき内容は、当人の本質とも関係性が薄く、当人が数年掛けて目指すべき姿とも乖離し、自分のための努力とはかけ離れていってしまうおそれがあります。

マネジメントの世界では、長期的に人材を育て、安定的な業績を挙げるためには、「本人の強みを理解し、その長期的成長をイメージし、そのために必要な努力を本人に考えさせ、そのための支援を惜しみなく行うべきである」という指摘が、マーカス・バッキンガム氏をはじめ、多くの専門家からも指摘されています(出所:『最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと』)。その実現は多くの場合、ビジネスの短期的な時間軸の影響で難しいのではないでしょうか?

メンターについては、できれば社外に持った方がいいかなというのが個人的感想です。本当に利害なく、平場で話ができることが大事だと思いますね(30代・男性・戦略コンサルティングファーム)

ビジネス上のメンターが果たす役割

こうした、長期的な本人の成長や努力と、短期的なビジネス上のフォーカスの間で起きてしまうギャップを埋める役割を果たすのが、ビジネスメンターという存在です。

その特徴を、先に挙げた3つのポイントと照らし合わせると、以下のようになります。

ビジネスメンターの役割

これらの項目について、実際にビジネスメンターを持っているビジネスパーソンは、以下のようなコメントを寄せています。

基本3点(自分の理解、果たすべき役割認識、そこへの努力認識)がポイントで、そこへの支援が大事だと思います(30代・男性・組織コンサルティング)

ビジネスメンターを選ぶときに重視すべき観点

具体的に、ビジネスメンターとしてどんな要件を満たす人にこの役割を依頼すべきか、先ほどの「ビジネスメンターの役割」と照らし合わせると、以下のような要素が浮かび上がってきます。

条件1:個人として満たされている人

「A. 自分の本質」や「B. 本当に目指したい姿」を明らかにする会話の中では、自分自身の内面的な話、先ほど挙げた「好き」「嫌い」といった感情的に素直な気持ちを吐き出すことが重要になってきます。

ある意味、自分の弱みをさらけ出す営みをするためには、相手がこれらの情報を悪用したり、その弱みにつけ込んで何かをしてくるといった不安があっては、本音を吐露することができず、AやBを深掘りできなくなります。

特に注意したいのは、自分自身が社会的・心理的に満たされていなかったり、弱っていたりする人が他人をアドバイスによって支援することで、自分自身を満たしたり、見返り・賞賛を求めている場合です。

人は直感的に賢いので、こうした人にアドバイスを求めたり、メンタリングに付き合ってもらったりすると、「ああ、この人は自分の賞賛を求めているな」ということに本能的に気づき、せっかくの吐露やオープンな話し合いを進めることができなくなってしまいます。

こうした意味では、本人が十分に満たされていて、社会的・精神的に安定した相手を選ぶべきです。

条件2:自分の世界観を持っている人

2つ目のポイントは、その人自身が先ほどのA〜Cの要素を持っており、自分自身で実践し続けている存在かどうかという点です。

自分が現在所属している組織や仕事、日々の努力や一つひとつの所作を含め、実際に「B. 中長期的に目指す状態・世界観」を持ちつつこれらを実践している人であればこそ、他の人に対してもそれを支援することが可能となります。

僕が新たにビジネスメンターを探すなら、特にこの項目、言い換えると『倫理観が高い』ことを求めます。倫理観が低いと、発言がぶれると思うのです。世界観がある=価値観や軸がぶれないってことですよね(40代・男性・介護サービス)

なので、誰かにビジネスメンターを依頼するときは、

「失礼ですが、あなたが中長期的に目指している世界観、世の中がどんなふうになったらいいなと思っていて、そのために自分がどんなふうに貢献していけるようになりたいと思っていらっしゃいますか?」

といった投げかけをしてみましょう。そこで語られる世界観が、どれだけ考えこまれていて、どれだけその当人が日々取り組んでいるかの深さが、その人のビジネスメンターとしての深さにつながります。

条件3:自分という個人に興味を持ってくれる人

3つ目の要素は、自分自身に対する興味を持ってくれる相手かどうかという点です。先ほど提示したA〜Cのプロセスは、いずれも自分自身に深くカスタマイズされた内容であり、万人に対して同じ回答ややりとりになるのではなく、本人に関する深掘りが不可欠となります。ということは、会話ややりとりの大半も、あなた自身に関する細かい話、あなた特有の話となってきます。

こうした内容にしっかりと興味を持ち、耳を傾け、興味を持ってくれる存在であるかどうかは、メンタリングの中身を大きく左右することとなります。

あなた個人への興味がなく、あくまで一般論としてのやりとりに終始してしまう場合、それはメンタリングではなく、先人からの一般的な示唆、アドバイスといったものになり、内面での深掘りを欠く内容となってしまうリスクがあります。

さらには、その相手が偉大な存在であった場合、あなたは自分の本質的な強みや性質や価値観を忘れ、本当に自分が目指したい姿とは違ったものに強い魅力を感じ、引っ張られてしまうおそれすらあります。

とはいえ気をつけたいのは、「自分はたいした人間でないから、きっと興味は持ってもらえない」というふうに、勝手に諦めてしまうこと。

多くの優れた人物は、自分の成長の過程で多くのメンターに手助けを受け、その恩を後輩・若い世代・次の人へと受け継ぎたいと考えており、相手の現時点での状況をあまり気にしません。

さらには、相手とのこうした深いやり取りを通して、自分自身が刺激を受け、そこからさらに努力を重ねることをよしとしています。

条件4:直接的な利害関係・短期的な成果をともに求めていない相手

4つ目のポイントは、相手が自分に短期的な成果や成長を求める必要のない存在であるという点です。どれほど優れた上司・リーダーであっても、自分自身との間で、短期的な成果を挙げる必要がある場合、業務面、自分の成長よりもチーム・会社としての成果を目指さざるを得ない場合が大半です。

その場合、メンタリングとしての会話をしようとしても、お互いの話題の中心がどうしても目先の仕事の内容、短期的な興味・関心に寄ってしまいがち。メンターを依頼する相手には、基本的に自分との利害関係が薄く、直接的な関係でない人に依頼することも重要です。

条件5:自分自身でCの努力を現在でも続けている人

最後に重要となるのは、ここで掲げられているA〜Cの取り組みを、今でも毎日続けていて、自分自身で努力を怠っていない人であるという点です。

この努力を怠っている人、自分はすでに何かに到達してしまっているという人は、心のどこかにその努力を怠っていることへの正当化があります。

吉田松陰は若くして志が遂げられなくても、獄中でさらに若者に学びの機会を作り成長させている。「メンターはなにも『あがり』の人ではない」ということは、大いに意識したほうがいいかもしれませんね(50代・男性・流通グループ)

メンタリングを行っているときに、条件1の “満たされていない人” と同様の傾向が起きてしまい、こちら側が心をオープンにしづらくなっていきます。

また、Cの努力の部分についても、現役で自分自身が努力をしなくなっているため、努力することの難しさ、日々行っていく中での挫折や苦しさといったものに鈍感になっており、極端な説教や説得力のないやりとりに陥るリスクがあります。

ビジネスメンターを社外で探すことから始めよう

最後に、今回の議論の中でも、

やっぱりメンターになる方と、どう出会うかが悩ましいですね。仕事に直結しない方々とは、そんなに頻繁にお会いできないですし。また、メンターをお願いできるような方となるとさらに深いコミュニケーションが必要になりそうなので、一度お会いしただけでお願いしてもよいものか(相手にとっても自分にとっても)と考えてしまいました(30代・男性・玩具業界)

というコメントに代表されるように、どのようにビジネスメンターを探せばよいかという声が多く挙がりました。これに対して、実際にビジネスメンターを持っている面々からは、次のようなコメントが寄せられました。

若いころは人に頼るのが嫌いでしたが、私の場合、40歳前後から意識的にメンターを求めるようになりました。ビジネスメンターは絶対に必要。意識して探さないとなかなか出会いはないし、そのためにいろいろな人に積極的に出会うのがよいと思います。そうすれば、出会えます(50代・男性・商社)
メンターは、引き受ける側にも学びが多いし、自分もかつて「やってもらった」という気持ちがあるので、利害関係なく、よいビジネスパーソンなら、快く引き受けてくれる可能性が高い(40代・男性・コンサルティング)

いかがでしたか? こうしたビジネスメンターを引き受けてくれる存在を一度検討し、そして実際に思い切って依頼をしてみるのもいいかもしれません。

[編集・構成] “未来を変える”プロジェクト 編集部

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