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新規事業開発を成功させる5つのコツ―任天堂「Wii」元企画開発者・玉樹真一郎

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“未来を変える” プロジェクトでは、記事の制作段階でさまざまな方と議論し、フィードバックをいただきながら、制作しています。その中で、フィードバックをいただいたWiiの元企画開発者である玉樹真一郎さんの「社内政治に頼らず新規事業開発を成功させる9つのコツ」に関するメッセージがとても示唆に溢れており、ぜひとも読者のみなさんに共有したい内容であったため、ご本人に了解を得て掲載しています。

「新規事業を成功させるコツ」で、玉樹真一郎さんが特に注目した5つのコツについて、ご覧ください。

新規事業 コツ1:「行動してから整理する」ことで日常生活での感覚を研ぎ澄ます
新規事業 コツ2:自分が「当事者」であるテーマにフォーカスする
新規事業 コツ3:誰にも邪魔されない「ヤミ実験」を行う
新規事業 コツ4:取り組みの主語を自分でなくテーマにする
新規事業 コツ5:失敗や挫折を組み込んだストーリーを共有する

PROFILE

任天堂「Wii」元企画開発者 玉樹真一郎
玉樹真一郎
任天堂「Wii」元企画開発者
全世界で1億台を出荷した「Wii」の企画担当。最も初期のコンセプトワークから、ハードウェア・ソフトウェア・ネットワークサービスの企画・開発すべてに横断的に関わり「Wiiのエバンジェリスト(伝道師)」「Wiiのプレゼンを最も数多くした男」と呼ばれる。2010年任天堂を退社。青森県八戸市にUターンして独立・起業。「わかる事務所」を設立。コンサルティングウェブサービスやアプリケーションの開発、講演やセミナー等を行いながら、人材育成・地域活性化にも取り組んでいる。2011年5月より特定非営利活動法人プラットフォームあおもり理事。2014年4月より八戸学院大学ビジネス学部・特任教授。

新規事業 コツ1:「行動してから整理する」ことで日常生活での感覚を研ぎ澄ます

まずは、日常生活での感覚を研ぎ澄ますことについて。例えば、スティービーワンダーが「The songs of key of life」というアルバムを作った時のモータウンの社長が、スティービーワンダーを「人生の中の一瞬の強い感情をキャプチャーして、その感情を曲に落としこむ」と評していました。

また、槇原敬之さんは、自分自身の創作活動について次のように述べています。

ワードではなく、こういう歌がかきたいな、ということを覚えておく。感情を覚えておく。例えば、誰かを助けるために走っている消防車のサイレンをうるさいと言うべきではないとたしなめられたときの恥ずかしさを覚えておく。

人生において時々訪れる感情の昂ぶりや深い感傷をそのまま覚え、記憶に蓄えておけるか、興奮をリプレイできるかが、クリエイティビティには重要ではないかという示唆です。

こういった感情は、時間が経過すると消えてしまいます。例えば、槇原敬之さんの例では「消えてしまいたいほどに恥ずかしい」という強い感情から「消防車はバカにすべきではない」といった客観的な一般常識へと変化してしまいます。これは、エピソード記憶+感情が、意味記憶へと変換されていく過程と似ています。

それで最近の私は日常生活で何らかの感情が沸き起こったとき、それを忘れないうちに文章にすることに腐心しています。運転中ならボイスメモを、歩いていたら立ち止まって、何とか記録・記憶しようと試みることが大切ではないでしょうか。

新規事業 コツ2:自分が「当事者」であるテーマにフォーカスする

コンセプトを見つける前にインサイトを見つける、というのは定石です。ただ、インサイトには自分の内側から得られるものと外側から得られるものがあって、個人的には内側から得られる「自分事としての感情」がより重要ではないかと考えています。

しかし、「内側が外側より重要」という考えは、私個人に対しては適用できるのですが、万人には適用できないかもしれません。理由は、私がもともと理系であるため。客観的な情報を重視する傾向があるからこそ、内側に目を向けるべきと思われるため、このような考え方になっているのかもしれません。もし客観的な情報を重視せず、常に自分のことばかり考えていられるひとがいたとしたら、そのひとはむしろ外側に気を配るべきでしょう。

個人的な印象では、新規事業開発という困難な仕事に挑戦するひとの内訳は、内側を重視すべきひと:外側を重視すべきひと、だいたい2:1ぐらいかな?という印象です。

さて、ちょっと話が変わります。内側を重視すべき私は、内向的です。ちょっと逆説的な響きがありませんか? そこで考えたのですが、内向的なひとは、自分に自信がなく、ひとの目ばかり気にしてしまい、その結果として内向的になって自分を守っているというパターンがあるかもしれません。つまり、内向的なひとは、本当は外からの自己評価のことばかり気にしていて、自分の内なる声を無視しがち、という形です。逆に外交的なひとは、外からの評価はあまり気にならないので、自分の考えに自信を持って、心の内なる声にばかり従ってしまうことが多い、ということなのかもしれません。

内向的なひとほど、内なる声を信じること。外交的なひとほど、ひとの声を聞くこと。それが結果的に自分事にできるのかもしれません。

新規事業 コツ3:誰にも邪魔されない「ヤミ実験」を行う

実験をすることは手間がかかり面倒なので、できないというひとも多いと思います。私の中にも同様の感情は常にあります。例えば、本を書くために「まず書いて、そこから何かを得よう」とアプローチしても、なぜか書けないということは、往々にしてあります。

どうして実行できないのか?続かないのか?と考えてみると、ひとつ思い当たるのが「褒められなければ、実行できない」という点です。

実験する主体としての私は、ついつい「良いプロトタイプ」「良いアイデア」を作ろうという傾向に囚われてしまいます。そんな私にやさしく「お、実験してるのか、えらいな」と、実験の質ではなく「実験していることそのもの、実験しようとする態度」を褒めてくれるひとがいれば、実験は続けることができます。これがマネージャーの役割だと思いますし、私自身は「誰かほめてくれる人を探さなきゃ」と考えるべきではないかと思います。

それと、社内の巻き込みは情熱が高まってから着手することについて。青さと腹黒いを組み合わせた「青黒さ」という言葉、面白いですね!

私の場合は、青さによる自分事のアイデアを実験によってブラッシュアップしていきながら「これがやりたいんじゃー!」と突っ走ります。その一方で、以下のようなことも考えています。

・将来的に対立するかもしれない、別なアイデアを持つひとがいないか?

  →もしいたら、そのひとのアイデアの弱点はどこか?
  →自分のアイデアを「そのひとのアイデアをフォローし、取り込むもの」として改変できれば、自分のアイデアに同意してくれるひとの頭数を増やせる

・キーパーソン(主に経営陣)の注目しているテーマに重なっているか?

  →自分のアイデアを無理やりにでもキーパーソンのテーマに関連付けられないか?
  →現状の組織の「錦の御旗」を取り込むことで、否定されにくくなる

・キーパーソンが「このひとが良いというなら」というひとは誰か?

  →大抵そういうひとは、普段は頑固で首を縦に振らないひとが多い
  →キーパーソンのような偉くて頭の良いひとも、判断はストレス。そこを助ける

・自分のアイデアをプロダクトにする際のオペレーションで「楽になる」のはどこか?

  →楽になりたいと思っているひとはたくさんいる
  →「自分はただ面白いものを作りたいんじゃなくて、組織も慮っていますよ」というポーズが、結果的にアイデアの評価につながる

新規事業 コツ4:取り組みの主語を自分でなくテーマにする

テーマを主語にすると、他人事になったり、客観的な議論になったりするように感じています。ひとを巻き込むときに大切なのは、巻き込むひとが自分事としてテーマを内に取り込んでもらえるようにすることなので、一見すると危ないようにも思えます。

ここで大切なのは、ただ「テーマを主語にする」だけではなく、その裏で「テーマを自分事として持ち続けるけど、いったん自分を隠して、相手が自分事にしやすいように、意識しておく」ということではないかと思います。

ひとはそれぞれ個人的なエピソードがあって、あるアイデアに同意するときには「そのアイデアを裏打ちする個人的なエピソード」が人それぞれに存在しているはず、と考えています。例えば、「ゲーム人口の拡大」という同じコンセプトでも、Aさんは「ばあちゃんに恩返ししたい、だからばあちゃんにも遊べるゲームをつくることで、ゲーム人口を拡大したい」と考えていますし、Bさんは「新婚当時は奥さんと夜ゲームして遊んでいたのに、最近はできていない。奥さんとゲームという楽しみを共有したいから、ゲーム人口を拡大したい」とまったく別なことを考えていたりします。

つまり、アイデアを誰かに伝えるとき、アイデアは相手によって改変される、ということです。この「改変」は実は伝える側にとっては大きなストレスになります。

そのストレスを避ける方法を残念ながら、私は知りません。しかし、ストレスがかかることを予見して、クッションとすることはできます。自分事の「自分はこのアイデアをやりたい、伝えたい!」という状態をいったん隠して、テーマを主語とした話し方に切り替えて伝え、相手が個人的なエピソードと結びつけて「こういうことですよね!」と勝手に解釈しだしたときにグッとこらえて「そうそう、その通り、exactly!」と破顔しなくてはいけません。

個人的には、このコミュニケーションのときにはいつも心のなかで「肉を切らせて骨を断つ」という言葉を唱えています。大切なことが伝われば、枝葉はどうでもいいのだ、と。

新規事業 コツ5:失敗や挫折を組み込んだストーリーを共有する

プレゼンテーションで最も重要なことに「初手は100%肯定されることからはじめる」「文脈があるかどうか」ということが挙げられます。

プレゼンテーションの骨子をまとめる際には、メモ帳で以下を書こう、という提案です。

  • 絶対に肯定される主張
  • 接続詞
  • 内容
  • 接続詞
  • 内容
  • 接続詞

冒頭の絶対に肯定される主張には、組織の理念もしくは誰しもが感じたことのある思いしか入れられません。そこから「だから」「しかし」「いくつかある、ひとつめは」「なお」といった接続詞的なものが入りながら、話を構成していきます。大切なポイントは、

  • 内容
  • 接続詞
  • 内容

の1セットが文脈として通っていること、あわよくば接続詞の後に来る内容が聞き手に予言できるほどシンプルになっていることが求められます。

「話の流れがわかること>話が良い・正しいこと」という観点から、話を組み立てなければいけません。コミュニケーションにおいては、話しかけられる側が王様で話しかける側は奴隷である、ということを糸井重里さんが言っていたように記憶しています(定かではないのですが…)。まさにその通りで、相手がわかるように努力というストレスを支払うのは、話しかけるほうです。

この中に、指摘されている「失敗や挫折」が入ってくることで、物語に必然性が生まれます。必然性とは、言い換えれば「誰の心の中でも成立する予言」です。相手が自分の脳みそで考えて、同じ結論にたどり着いたとき、それは同意とみなされます。さらには、失敗や挫折には感情を動かす作用もあるので、エピソードがより記憶されやすくなります。

私の経験が少しでも新規事業に挑戦される方のお役に立てたら、嬉しいです。

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[構成]  三石原士

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