【イベント企画者に贈る】パネルディスカッションを面白くするための7つのポイント

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doda X キャリアコンパス(旧“未来を変える”プロジェクト)では、記事の制作段階でさまざまな方と議論し、フィードバックをいただきながら、制作しています。今回は、人材開発系コンサルティングに従事し、現在は独立してベンチャーの立ち上げ・成長を支援するインクルージョン・ジャパン株式会社の吉沢康弘さんに、「パネルディスカッションを面白くするポイント」について寄稿いただきました。イベント企画や運営をされる方は必見の内容です。

PROFILE
インクルージョン・ジャパン株式会社 取締役 吉沢康弘
吉沢康弘
インクルージョン・ジャパン株式会社 取締役

P&G、組織開発コンサルティングHumanValue社、および同社でのWebベンチャー創業プロジェクトを経て、ネットライフ企画(ライフネット生命保険の前身)に参画。ライフネット生命保険にてマーケティング・事業開発を担当後、ベンチャーの創業・成長を支援するインクルージョン・ジャパン株式会社を創業し、現在に至る

こんにちは、インクルージョン・ジャパンの吉沢です。

さて、大小合わせて年間30ほどのイベントやセッションを、十数〜数百人規模まで企画・運営しており、参加満足度スコア(Net Promoter Score)平均で+50%以上をキープすべく日々試行錯誤している中、今回の記事では、鬼門とも言える「パネルディスカッション」の企画・運営についてご紹介いたします。

今回のアウトラインです。

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それでは、本文です。

誰しもがアンハッピーになってしまう「パネルディスカッション」

おそらく、多くの方は「つまらないパネルディスカッション」を、イヤというほどご覧になってきたのではないでしょうか?

  • パネラーに対して司会者・会場が質問を投げ、それをパネラー全員が一方通行で順々に回答していく
  • 「事前に答えを用意してたよね」という内容をパネラーが喋り続ける
  • パネラー側が無茶な質問、会場からの質問に対して困惑しながら、渋々回答していく
  • 特定のパネラーが、白ける会場を盛り上げようとして長々と自説を述べ、さらに会場が白けていく

観覧する参加者はどんどん眠くなり、パネラー同士もなんだか険悪になり、司会者は切羽詰まり・・・そんな悲劇を招きがちなのが「パネルディスカッション」ではないでしょうか。

つまらないパネルディスカッションが生まれる構造

では、なぜ「つまらないパネルディスカッション」が、生まれてしまうのか? それには、以下のイベントの企画上の構造・手順が関係しています。

【ありがちなイベント企画・運営の手順】

  1. イベントの企画が固まり、趣旨・参加者・集客目標が固まる
  2. 集客を強化するために、著名登壇者をネームバリュー・集客力を考慮して依頼する
  3. 「せっかく登壇者を複数名集めたので、単独で話をしてもらうだけでは意味がなさそう。じゃあ一緒に会場で同時に喋ってもらおう。そうだ、パネルディスカッションにしよう」となる
  4. 企画趣旨説明、当日の概要などの説明のため、運営者が登壇者を訪問。登壇内容の依頼を行う
  5. 当日の事前打合せなどで、登壇者同士が顔合わせをし、どのような話をするのか、どのような流れになるのかなどをおおよそすり合わせする

この流れは一つひとつを見ていくと、イベントの企画・実施側からするとごくごくありがちなものかと思います。実際、上記のような流れの中で登壇をご依頼いただくことも多く、これはさもありなん、というものかと感じます。

ところが、この流れの中に、「悲惨なパネルディスカッション」を生み出す構造的な問題が3つ潜んでいるのです。

【問題1:個別に話を聞くだけではもったいないから同時に登壇させようと安直に内容構成をしてしまう】

集客をベースに考え、そこから複数の登壇者を集めると、まず必然的にパネルディスカッションに帰着してしまいます。登壇者は一人ひとりの個性が強く、面白いことがほとんどなので、この選定直後の気持ちで「登壇者が複数で話していただければ、もっと盛り上がるだろう」というノリで決めてしまう部分に、最初の地雷が潜んでいます。

【問題2:登壇者への訪問時に登壇者の出来合いコンテンツを容認してしまう】

たいていの場合、登壇者は多忙です。そのため、個別に事前訪問したときに、「基本はいつもの◯◯さんがお話される内容をお願いします」などと安易に企画・運営側が譲歩してしまい、イベントそのもののテーマについて、登壇者があまり事前に考えずにその場に臨んでしまうケースが第二の地雷になります。これによって登壇者は、その場がどんなものであり、どのような人が聴衆なのか、どのような新たな思考を提供すべきか、そのために何を準備すべきか、といった点を深く理解・把握することなく、当日を迎えることとなってしまいます。

【問題3:直前の登壇者同士の打合せで面白い話が出てしまう】

当日直前の登壇者同士の顔合わせ。ここで当日のテーマについて、「軽く話をしましょう。こんなのってありますよね」と登壇者同士が事前に話が始めます。そして、登壇者同士の脳みそが急に回転を始め、相互刺激により、ポンポンと面白い内容が出てきます。ここに3つ目の地雷があります。「楽屋で出た面白い話」というのは、どうしてもパネルディスカッションのその場で、観客の方々に紹介したくなってしまいます。

実際、私も何回もこれを経験しているのですが、この「楽屋で出た面白い話」というのは、どうしてもパネルディスカッションの場で、観客の方に紹介したくなってしまいます。そうすると、登壇者も司会者も「◯◯さん、あの話、どうでしたっけ?」と大根役者のような芝居をしながら話題のフリを行い、それに応じて登壇者は、すでに覚えている内容をもう一度語る、という流れになってしまいます。

ですが、登壇者同士はすでにその話を知っており、お互いに驚きや刺激がないため、表情の変化であったり、相互作用といったものは、すっかり低下してしまいます。

活発で面白いパネルディスカッションを実現するための7つのポイント

以上の問題点と、つまらないパネルディスカッションが生み出される企画段階からの構造を回避するために、下記の7つのポイントを、ご紹介します。

ポイント1:少なくとも登壇者の過半数を手玉に取れる人をモデレータにする

モデレータとは、そのパネルディスカッションをリードする役割。このモデレータに、かならず登壇者の過半数(3人なら2人以上、2人なら両方)を手玉にとって、友人のような距離感でツッコミや質問、率直な投げかけができる人物を選びます。

こうすることにより、パネルディスカッション全体の進行について主人公を置くことができ、全体的なリズムを刻みやすく、間延びしない状況を作れるようになります。

同時に、当日のテーマから話が逸れそうになっても、このモデレータが常に軌道修正を、強権も発動しながら行うことができるようになります。

準備段階の具体論でいえば、登壇者を3人ピックアップしておき、自前の司会者がモデレータにあてはまらないなら、登壇者のうちの1人を、モデレータとして依頼するのがオススメです。

ポイント2:登壇者同士で事前の会話は行わない

2つ目のポイントは、当日のテーマに関して、事前に登壇者同士での雑談を行わない、ということです。

顔合わせのときには、当日の進行や手順などは運営側から話をしつつ、パネルトークのテーマ・内容については、「こういうスライドを出しますので、ぜひその場にて即興でお願いいたします」というふうにします。

テーマの雑談をしないことで、登壇者同士の組み合わせで引き起こされる会話の化学反応はパネル場面まで持ち越され、「出来レース」「大根役者的なフリ」を防ぐことができます。

ポイント3:登壇者個別に「そのテーマで語りたいこと」だけを聞いておく

3つ目のポイントは、登壇者個別に、パネルトークのテーマについて、「自分がそのテーマについて語りたいこと」を、キーワードだけで聞いておくという点です。

例えば、著者が企画した下記のイベントでは、200人以上の参加者がいる中で、3人の個性溢れる登壇者と「楽しい仕事にありつくにはどうすればよいか?」というテーマで、1時間以上に渡りパネルトークを行い、実施後アンケートで平均9点以上(10点満点)の、高い満足度をいただきました。

このとき、イベントの運営側は、3人の登壇者に対して事前に「楽しい仕事にありつくにはどうすればよいか?という観点で、キーワードを2つ、3つ教えてください」と依頼をし、その回答だけを受け取っておきました。

そして、そのキーワードをアトランダムに並べ、当日はそれを一つずつスクリーンに写し、そのキーワードのオーナーに簡単に説明をしてもらい、他の登壇者と会場が質問したり、ツッコミをいれたりするという流れで運営を行いました。

この流れを使うと、登壇者それぞれの思っていることをパネルディスカッションに折り込みつつ、即興性を失わずに進行することが可能になります。

ポイント4:観客側に振る舞い方を依頼し、ウォーミングアップを行う

4つ目のポイントは、観客側に対して「パネルディスカッション中に、こんなふうに絡んでくださいね」という依頼を行う点です。具体的には、

  • 質問だけでなく、意見表明も歓迎なので、いずれも挙手OK
  • 質問するときは「◯◯さんに」などと相手を指名し「全員に」は禁止
  • 一方的に受け取る側ではなく、意見表明し、議論に貢献してほしい

といった点を、行動様式として観客側に依頼します。

そして、そのウォーミングアップと称して、「近くで知らない人同士で2人1組になり、1人1分、両方で2分の自己紹介をし、活発な議論参加の準備をしてください」と振ります。

これによって、会場全体に活気が溢れ、「この勢いで、質問とか意見表明してもいいかも」と、空気が温まります。

ポイント5:登壇者には1人1本のマイクを準備し、いつでも発言OKとする

以上の準備が整い、パネルディスカッションがスタートしたら、登壇者には全員、1本づつマイクを配布しておき「質問したくなったり、突っ込んだりしたくなったら、いつでも発言してもらってOKです」とします。

これにより、登壇者一人ひとりのイニシアチブが発揮されやすくなり、モデレータだけが仕切るのではなく、登壇側全体が議論を活発にリードできるようになってきます。

そして、「登壇者と観客の皆さんは、ともに議論に積極的に参加するという点では、期待することは一緒です」「ただし、登壇者の特権として、いつでも発言と質問ができる、というのだけは与えておきます」などとします。

ポイント6:質問事項に関しては終了後アンケートで拾いますと予防線を張る

6つ目のポイントは、登壇者と観客側とのやりとりを「教える先生側と、教えられる生徒側」のような関係なってしまうことを防ぐため、「多くの質問、ここで回答できないことは、終了後アンケートで拾います」ということを、最初に明言してしまう点です。

これにより、パネルディスカッションのテーマとはあまり関係ない、特定の一人の登壇者への専門的な質問などが会場から出てきて、全体の議論の流れが阻害されてしまう、といったことを防げるようになります。

ポイント7:パネルディスカッションの残り時間を会場全体に明示する

最後のポイントは、「このパネルディスカッションで使える時間を、正面のスクリーンなどにカウントダウン形式で明示する」という方法です。

人間とは賢いもので、この時間が明示されていると、登壇者はもとより、観客側全員も、「この残り時間の中で、こういうことを聞きたい」「そろそろ終わりだな」などの集合知が働き、グッと流れが良くなります。

モデレータだけが「えー、そろそろお時間ですので・・・」というふうに、終わりの時間を気にしながらそわそわして進行し、最後は強制的に打ち切るよりも、はるかに納得感があり、参加感の高い場が実現できます。

そして最後に、これらのポイントを押さえながら毎回運営し、イベントの最後にかならずスコアつきのアンケートを回収し、次に備えた知見を積むことが、最終的には最も成果につながります。

いかがでしたか? ソーシャルでのバーチャルなつながりの幅が拡がるに連れて、対面の場でお互いに相まみえることができるリアルイベントの重要性が飛躍的に高まっています。

ぜひともイベントを企画・運営される方は、新しいカタチの「パネルディスカッション」にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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